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仕事と介護の両立コラム 新型コロナウィルスと仕事と介護の両立

2020.05.08

この度の新型コロナウィルスによって、私たちの人生観や家族観や生活スタイルは大きく変わりました。変えざるを得なかったこともたくさんあります。
そして、かつてのものに二度と戻ることはないと思います。時は戻せないし、培われた経験は、同じ景色も似て非なる物に変えました。
そんな昨今、緊急事態宣言も延長され、医療崩壊の報道以上に介護崩壊の報道が目に付くようになりました。
そこで、新型コロナウィルスと仕事と介護の両立において喫緊の課題として皆さまに考えていただきたいことが2つあります。

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(1)在宅勤務と在宅介護
(2)入所介護から在宅介護への切り替え
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(1)在宅勤務と在宅介護

介護業界においては利用者の命と生活を守るために、日夜努力していただいております。
少し前にも触れましたが、介護業界は平時から感染症対策は実施しています。
しかしながら、この度の新型コロナウィルスにおいては、日々変化する感染症予防対策と物資不足で現場は大混乱です。
そんな中でも笑顔を絶やさず真摯に業務に向き合ってくださる介護スタッフの皆さまには、感謝しかございません。ありがとうございます。

介護は3密

本当にご尽力いただいていますが、やっぱり利用者も職員も感染リスクが高いのは否めません。そして、一人の感染が一気に広がり、クラスター化しやすいことも否めません。
なぜなら、そもそも介護って3密なんですね。3密の仕事なんです。

・換気の悪い密閉空間:窓は開けるけど、ドアは締めているところが多いですね。開け放ししている事業所はほとんどありません。
・間近で会話や発生をする密接場面:食事介助、排泄介助、入浴介助など、介助行為はそもそも密接です。
・多数が集まる密集場所:通所介護は密集空間です。

それゆえに、利用者も職員も守るための苦肉の策として利用制限をしている介護事業所は有ります。
これは要介護者には大変不便を強いることになるけど、致し方ないことだと思います。
問題は「どの利用者に、利用制限を求めるか」です。

利用制限

利用制限というのは、例えば通常は通所介護に週3回通っているところを週2回の利用になったり、複数の通所介護を利用している場合は1か所のみにしてほしいというお願いをされることです。
介護事業者は苦渋の決断だということはご理解ください。
その上で要介護者の生活を考えます。
そもそも生活支援等が必要だから「週3回の通所介護」を利用しているのです。それが週2回になるということは、生活に多少なりとも支障が出ます。
支障が出ている部分を支援する人は誰なのか、ということが問題なのです。

多くの場合、利用制限の打診は「同居人がいる利用者」ならびに、「自立度が比較的高い利用者」からだといわれています。

前者について考えます。「同居人がいる利用者」とは、つまり私のような同居介護の事を言います。
利用制限の打診に対して安易に「OK」を出してはいけません。
打診を拒否しろと言っているのではありません。安易な判断が不幸を招くことにつながりかねません。
特に、私のような「働く介護者」はなおさらです。

在宅勤務は「お仕事タイム」です

介護事業者の皆さまにお願いしたいのは、在宅勤務は「家で仕事をしている」ということです。
いままで会社で働いていた時間と同様に、家にいる時間が勤務時間なのです。働く時間です。要介護者の見守りや介助の時間ではないということをご理解ください。

そうは言っても、緊急事態です。休業ではなく、利用制限という判断だけでもありがたいのです。それは十分にわかっています。
ですから、ケアマネジャー、介護事業者、働く介護者、要介護者で
以下の点を重点的にしっかり状況を確認してください。
場合によっては介護者は介護技術のレクチャーを受けてください。
そして、在宅勤務中の働く介護者においては、必ず上司に報告してください。多かれ少なかれ、在宅勤務に支障は出ます。

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□勤務時間は確保できますか
□睡眠時間は確保できますか
□勤務時間が確保できない場合は、上司または人事と相談できていますか
短時間勤務になるのか、半日程度の介護休暇になるのか、会社の制度を利用しましょう。
□必要な介護技術はありますか
□ストレスの吐き出し口を持っていますか
□概ね、いつまでの暫定措置ですか
□やってみて難しかった場合は、元の利用状況に戻してもらえますか
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新型コロナウィルス感染防止対策で、ただでさえストレス満載な自粛生活をしている上に、なれない在宅勤務で四苦八苦しているところに、要介護者の支援が加わる生活です。
どうぞ慎重な判断をお願いいたします。

(2)入所介護から在宅介護への切り替え

先日以下のニュースタイトルを見て、胸が張り裂ける想いでした。
新型コロナ 特養退所させ、無理心中か 面会中止、折れた心 91歳母が死にたい「糸切れた」 (毎日新聞 2020年4月23日 大阪朝刊)

新型コロナウィルスの感染拡大防止のために面会禁止となっていた特養から「親孝行がしたい」と母親を自宅に戻した翌日の事件です。
とても悔しくて悲しくていたたまれない事件です。
介護事業所のスタッフに至っては、おそらく相当苦しんでいることと想像します。こんな結末になるなんて、思ってもいなかったはずです。

面会が出来ずに寂しい想いをしている方は少なくありません。元気がなくなっていく親を見て、在宅介護に戻すことを検討している方もいらっしゃいます。
入所介護も在宅介護も、それは手段なので、いつどんなサービスを利用しようと、要介護者に必要でかつ要介護者の生活が成り立つのであれば、問題ないと思います。

問題は介護者です。

こんなデータがありました

労働政策研究報告書 No.204 「再家族化する介護と仕事の両立 ―2016年改正育児・介護休業法とその先の課題―」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構  2020年 3月)

「第4章 働く介護者のウェルビーイングと離職意図 ―仕事と介護の両立についてどう感じているのか?― 」
以下のような要介護者との同居と仕事と介護の両立についての意識調査がありました。

同居は同居でも同居時期によって、仕事と介護の両立に対して「続けられないと思う」という方の割合が大きく異なるのです。
介護をする前から同居している方は8.1%に対して、介護を機に同居を始めた 25.0%の方がが続けられないと思う、と答えています。

同居介護の落とし穴

元気な頃から一緒に住んでいて、お互いの生活リズムや阿吽のコミュニケーションが培われていた上で、親が要介護者になった場合の同居介護は、
コミュニケーションの取り方やお互いのストレスの感じ方など、その変容を時間とともにあらゆる経験をしてきています。
時間の経過とともに、変容への順応も早くなっていることが多いでしょう。

一方、要介護者となったから、つまり要介護者とのコミュニケーションがうまくかみ合わなくなってから一緒に住み始める同居介護者には多くの試練が待っています。
一般的なコミュニケーションが多少なりとも難しくなってきた要介護者との同居生活は、ほぼ全面的に介護者が状況を受容し、それに無理に対応していく必要があります。
いままで経験したことのない、ストレスとの付き合い方もわからず、その過程において心や体がついていけなくなることがあります。
その結果が上記に表れているように思います。
あなたにも大事な人生、大事な家族、そして生活があることを忘れないでください。

在宅介護の準備をしてから、家にもどしましょう

話しは戻りますが、一時期でも入所施設に預けたのであれば、その間の要介護者の変容に対し心と体は順応しておりません。そして、その間にあなた自身も年を重ねています。
体力の低下もあったかもしれません。生活スタイルを変えるというのは、要介護者だけではなく介護者にも順応の時間が必要なのです。
もし、入所介護から在宅介護に切り替えるのであれば、順応期間として、介護休業の取得をオススメします。
そして、当たり前ですが、在宅介護の環境整備を整えたうえで、お試し期間としての介護休業です。

一方で、今の時期に入所介護から在宅介護に戻す場合、最大の懸念が「在宅介護サービスを提供してくれる事象所があるか」ということです。
新型コロナウィルスの感染拡大防止のために、いまは新規の受け入れを控えている事業所は少なくありません。
つまり、在宅介護の環境を整えられない可能性があります。結果、自分ですべての介護を担うことになりかねません。

介護は素人にはできません

介護環境を整えてからでは会えない時間がさらに増えて苦しいですか?
お願いですから、もう少しだけ長い目で見てください。
その冷静な判断ができていないのであれば、通常の精神ではないと判断します。
自宅に戻したところで何もいいことはないと考えます。当然のことながら、仕事と介護の両立は無理です。

要介護者との生活は楽じゃありません。
身体介護のみならず、精神的にも上手にコミュニケーションが取れなければイライラすることもあるでしょう。
あなたの生活ペースと要介護者の生活ペースは異なります。
スピードが遅いから、危なっかしいから、等という理由で要介護者のできることまで手を出して介護状態を進行させることもあります。
介護って簡単じゃないんです。だからプロがいるんです。

苦しいのはあなただけじゃない。一緒に考えましょう。

どうか「己を知れ」です。
限界まで頑張ろう、という試みを否定はしませんが、決して応援もしません。概して、いいことは有りません。
限界まで頑張ろう、という気持ち自体が通常の精神ではありません。
通常の精神でないと、限界を感じなくなるのです。結果、対処が後手になるだけです。場合によっては悲劇を招きます。

介護は生活です。ライフです。命です。自分の命を守る事が、要介護者の命を守ることになり、それは素敵で立派な親孝行です。

そうは言っても、新型コロナウィルスの収束が見えないいまの状況は精神衛生上、あなたにとって良くないのですよね。

では、最低限何が必要か。
要介護者にあなたがついているように、あなにも支援者が必要だということです。
ケアマネジャーやケアスタッフは要介護者越しにあなたの支援をします。
そうでは無く、あなたを直に支援し、寄り添ってくれる支援者が必要です。

私たちは働く介護者を支援します。一緒に考えます。

「相談」なんて堅苦しくなくていいです。
WEBケアラーズカフェでおしゃべりしているうちに、何かの気づきにつながることもあります。

どうかどうか、あなたの人生を大事にしてください。

文責 和氣美枝

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