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仕事と介護の両立コラム 介護休暇と介護休業の違い

2023.10.02


育児介護休業法における介護休業等の制度は、申請できる労働者の規定や制度利用のための対象家族の範囲および対象家族の状態条件はあっても、希望する休業等の時間を何に使うかを申し出る必要はありません。つまり、制度の目的はあっても、活用方法は法律で規定されていないのです。

しかし、ご家庭の状況で時間的制約を抱えている時期の労働者の離職を防ぎ、仕事との両立を推進するためのものであることには変わりありません。

今日は介護休暇と介護休業について、法の趣旨・内容の理解を進めていきましょう。

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」とは、労働者と事業主間における育児・介護休業などを規定した法律です。
本記事では、以下「育児・介護休業法」と言います。

これは、労働者と事業主の間における法律であるため、経営者や個人事業主は適用外です。また地方公務員にも原則適用されますが、細かいところで適用される条項が変わることがあります。国家公務員は人事院が作っている国家公務員用の仕事と介護の両立制度があるため注意が必要です。

育児・介護休業法は法律ですので、第1条第1項にはその「目的」が記されています。
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育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「法」といいます。)は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、育児及び家族の介護を行いやすくするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、育児又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、このような労働者が退職せずに済むようにし、その雇用の継続を図るとともに、育児又は家族の介護のために退職した労働者の再就職の促進を図ることとしています。ここで言う育児休業には、産後パパ育休(出生時育児休業)が含まれます。 育児及び家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるよう支援することによって、その福祉を増進するとともに、あわせて、我が国の経済及び社会の発展に資することを目的としているものです。
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条文には「雇用の継続を図るとともに」「再就職の促進を図ることと」「我が国の経済及び社会の発展に資することを目的」という言葉が使われています。
つまりは「介護をしながら働いてください。」ということです。「介護が始まったら休んでいいよ」という法律ではありません。

仕事と介護の両立と両立支援制度

「介護をしながら働いてください。」と言われても「介護をしながら、どうやって仕事をすればいいのか?」という疑問を抱く方は少なくありません。

そもそも、自分の身体や自分の時間を使って要介護者の日常生活のお世話や介助に勤しんでしまえば、当然仕事はできません。
つまり、少なくとも会社に指定されている所定労働時間・所定労働場所で、所定の業務に取り組むことは死守しなくてはなりません。

そのため、自分の身体や時間を使わなくても、要介護者の日常生活が成り立つような体制を作ることが必要になります。それを介護環境整備と言います。

介護環境整備の問題点

介護環境整備をするにあたり、多くの手間がかかります。人によって異なりますが、以下のような手続きや対処が必要です。

〇病院への相談
〇地域包括支援センターへの相談
〇介護保険の手続き
〇介護事業者への見学や面談
〇親御さんが暮らす地域との往復
〇家族親族での話し合い

また、介護環境整備は一度できあがればそれで完璧ということにはなりません。

仕事と介護の両立は「状態」なので、変化が伴います。要介護者も変化するし、皆さんの日常生活にも変化があるでしょう。
また、社会情勢やサービス提供事業者にだって変化はあるのです。働きながら介護をする私たちは、必要に応じて環境整備に奔走することになります。

育児・介護休業法の活用

これらの環境整備や変化に対する作業は、通常は平日の日中の時間が必要です。
つまり、みなさんの公休が土日だとしても、多かれ少なかれ皆さんの就業に影響が出ることがほとんどです。
そのため、仕事を一定期間お休みしたり、1日または時間単位でお休みしたりするケースも出てくるでしょう。

「現実的に平日の休みが難しい」と思った際に味方になってくれるのが、育児介護休業法です。
要介護者の状態に合わせて短時間勤務を利用したり、定時で帰宅するために残業の免除が必要だったりします。

このような介護環境整備のために、就業の免除を申し出ることができる制度が育児・介護休業法で規定されている「両立支援制度」です。
労働者は育児・介護休業法を活用することで介護環境整備が進めやすくなるでしょう。

両立支援制度の6つの必須制度と、そのうち1つの選択制度

育児・介護休業法で規定されている介護に関わる制度としては6つの必須制度と、そのうち1つの選択制度があります。

①介護休業
②介護休暇
③所定労働時間の制限
④時間外労働の制限
⑤深夜業の制限
⑥事業主が講ずべき措置(以下のうち1つ以上を採択しなくてはいけません)
a.短時間勤務の制度
b.フレックスタイムの制度
c.始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
d.労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度

介護休業と介護休暇の制度上の違い

介護休業とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護するためにする休業のことです。介護休業を利用するには、事業主に対する申し出を要件としています。

申し出を行うことにより、一定期間労働者の労務提供義務を消滅させる効果のある意思表示です。
介護休業を開始しようとする日の2週間前までに申し出ることが必要です。
対象家族1人につき3回まで申し出ることのでき、休業は連続したひとまとまりの期間の休業となっています。
なお、当該対象家族について、介護休業の申し出が出来る日数の合計は93日です。

介護休暇とは、1年度において5日(その介護、世話をする対象家族が2人以上の場合にあっては、10日) を限度として取得できる休暇のことです。
介護休業と異なり、介護休暇は1日単位又は時間単位で取得することができます。ただし事業所に対して「中抜け」を認めることまでは求めていません。

口頭での申し出も可能です。介護休業では認められていませんが、介護休暇は当日の電話等の申し出でも取得を認め、書面の提出等を求める場合は事後となっても差し支えないこととすることが必要とされています。
つまり、介護休暇は「今日の今日」の申し出が可能で、口頭による申し出も認められているのです。

介護休業と介護休暇の役割の違い

介護休業は就業に集中するための介護環境整備(看取りを含む)に活用すべき休業とされています。
自分の時間や自分の身体を使った直接的な介護に勤しむために使うことは推奨されていません。

もちろん、自分の時間や自分の身体を使った直接的な介護に勤しむために活用しても問題はないでしょう。
ただし、介護の技術習得にも時間が必要であり、何と言っても気持ちの切り替えが極めて難しいという点があります。
さらには要介護者の気持ちの切り替えに影響が及ぶためおすすめはできません。

一方、介護休暇は「今日の今日」口頭での申し出ができる特性から、自分の時間や自分の身体を使った直接的な介護をせざるを得ない緊急事態にも活用することができます。

例えば、要介護者がサービス拒否をしてしまい、その日はご家族でお世話をせざるを得ない状況の時が想定されます。
この場合は1日単位の休暇を活用します。
また徘徊等で警察に保護された時等は就業を途中で切り上げて要介護者の引き受けに出向く時には、介護休暇の時間単位取得を活用できるのです。

介護休業が2週間以上前に申し出が必要な理由

介護休業も「今日の今日」使いたいと思う労働者は意外に多いです。
急に倒れて危篤状態になってしまったら、すぐに駆け付けたい気持ちは十分理解できます。

その場合は、介護休暇を3日ほど活用して、状況を見て欲しいのです。

事業主が介護休業の申し出を許可するということは「労働の義務の免除を許可」することになります。
事業主は、一度許可した期間、対象の労働者に労働をさせてはいけないのです。
つまり、「あの書類どこにある?」とか「このお客様の進捗ってどうなってる?」など、電話やメールでコンタクトが取れない状態なのです。
事業主はこのことを理解しておかなければなりません。

逆に、みなさんから同僚や上司に連絡することは問題ありませんが、事業主の側から皆さんに連絡することは原則できません。
したがって、みなさんが介護休業に入るまでに、業務の引継ぎや業務の課題解決をしておかなくてはいけないのです。
そのためには2週間というのは長いかもしれませんが、妥当であるとも考えることができるのではないでしょうか。

もちろん、あなたが介護休業期間中の事業主からの連絡を許可し、その代わりすぐに介護休業を開始したいという申し出は、協議の余地はあると思います。
このような申し出に対し、事業主も融通をきかせていただけるとありがたいです。
ただし、のちのトラブルを回避するためにも、申請者と事業主の双方で書面をもって協議内容を共有しておくことをおすすめします。

一般的な言われ方のよくある間違い

介護休業と介護休暇によく言われる間違いとして挙げられるのが「介護」という言葉の捉え方の問題です。

介護休業は自分の身体と自分の時間を使って対象家族の生活支援を直接的に行う介護に活用するために設計されている制度ではありません。
つまり「介護休業は介護をするために使う休業ではない」のです。

一方で介護休暇は、役所手続きや通院同伴、専門職との面談や緊急事態等に活用するように設計されている制度です。
言い換えれば「介護休暇は介護をするために使っていい休暇」です。

誤解のないようにお伝えいたしますが、両制度とも「直接的な介護をするために使ってはいけない」わけではありません。
法律ではそこまで規定していません。
あくまでも推奨される使い方として、大きな違いがあることをご理解のうえ、みなさんの仕事と介護の両立に役立ててほしいと思っています。

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