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仕事と介護の両立コラム 仕事と介護の両立における知識と知恵

2024.04.01

「介護は情報戦」と言われます。確かに「知っているか」「知らないか」で人生は大きく変わります。
介護者の不幸は選択肢がみえなくなることです。選択肢とは情報です。

介護に関わる情報はあふれています。しかし、残念なことに、介護者は「わからないことが、わからない」状態。ですので、欲しい情報を収集することは極めて難しい現状があります。そして、残念なことに中には間違った情報もあります。

仕事と介護の両立という生活は、情報の取捨選択と言っても過言ではありません。今回は、取捨選択の基準について考えます。

情報とは何か

三省堂国語辞典(第8版)によると、以下のように書かれています。
「情報」
ものごとについて(新しいことを)知らせるもの。「気象-・生活-・-戦・-が古い」

私たちが収集しているのは「ものごと」の部分であることがわかります。
では、この「ものごと」とは何か。それは知識と知恵だと考えます。

知識・知恵とは何か

同じく、三省堂国語辞典(第8版)によると、それぞれ以下の意味と解説されています。
「知識」
ものごとを全体的に理解するため、頭に入れておくべき情報。また、ものごとについての全体的な理解
「知恵」
ものごとを工夫したり、判断したりする頭のはたらき。考え。アイデア。

これらを理解したうえで、次の章へ進みます。

仕事と介護の両立における知識と知恵

仕事と介護の両立における知識は、制度や定義、社会課題になった背景だと考えます。
一方、仕事と介護の両立における知恵は、考え方や価値観、工夫のことでしょう。
つまり、知識はそれを身に着けた人の解釈や価値観に左右されるものではない、一方の知恵はそれを身に着けた人の解釈や価値観に左右される可能性があるもの、と考えます。

人口減少と労働力

仕事と介護の両立が社会課題となった背景には、日本の人口減少並びに少子高齢化による経済成長への影響、社会保障への影響が懸念されたことにあります。
日本は2008年をピークに2011年から人口が減少しています。
労働の担い手と言われている15歳から64歳の生産年齢人口においては、1995年をピークに減少しているのです。

一方で、総務省「労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の要約」によると
、023年平均の就業者数は6747万人と、前年に比べ24万人増加しています。就業者を男女別にみると、男性は3696万人と3万人の減少、女性は3051万人と27万人の増加がありました。また労働生産年齢である15~64歳の就業者数は5833万人と23万人と増加しています。
男女別にみると、男性は3162万人と1万人の増加、女性は2671万人と22万人の増加がありました。

これは、若者や女性、高齢者・障害者や育児中の人でも、介護中の人でも治療中の人でも働く意欲のある人たちの安定した雇用を推進した政策が功を奏したのです
。職業訓練や、働き方改革、法整備もブラッシュアップし続けています。

もちろん企業には一時的に負担になることもあるかもしれません。しかし、その努力は、結果として人材の確保や雇用の安定につながっています。

仕事と介護の両立における「知識」とは

家族の介護に直面しても、就業継続を支援する、または再就職をしやすくするためにある法律が「育児介護休業法」です。
介護休業やそのほかの介護両立支援制度がいかなるものなのかは、働く介護者になったら知識として習得しておくべきことのひとつです。

この法律の最新で正しい情報は、厚生労働省の「育児介護休業法のあらまし」というサイトに掲載されています。

企業も正しい知識を身に付けなければ損をする

先日、SNSでコメントしてくださった方で、介護休業の申請に診断書の提出を会社から求められた方がいらっしゃいました。
介護休業等の申請に診断書の提出を必須にしてはいけないのですが、企業側がそれを知らなったようです。
でも、一般社員から「それは、会社の間違いです」とは指摘しにくいのです。

会社も正しい「知識」をもって、情報発信をしないといけません。
特に、法律に関することはコンプライアンスに関わることですから、丁寧に取り扱うべきです。
企業担当者もまた、「知識を持っていないから仕方がない」ではいけません。
「知識」がない結果、困るのは介護に直面した従業員であり、その従業員がやめてしまったら、困るのは会社なのです。

社会保険についても今一度正しい知識を

また、介護保険も仕事と介護の両立において携えておくべき「知識」です。
ただし、これは、社会保険の一つとして社会人が理解しておくべき社会システムのひとつです。
単純に、仕事と介護の両立のためだけに習得する知識ではないと思います。

介護保険とは、被保険者が何らかの理由によって、日常生活動作の支援や家事支援が必要な時に使うことのできる制度です。
介護保険が使えるサービスは、この最低限の日常生活動作の支援や家事支援であることを理解しておきましょう。
そうすることで、見守りや話し相手のサービスに使える保険ではないことが分かります。

ましや保険ですから、被保険者でなければ使うことはできません。
「私の介護保険で親の介護は出来ますか?」という質問は出ない、ということです。

社会保険の仕組みと同時に、それを使うための相談先も「知識」として携えておくべきことです。
健康保険を使うことは、つまり、病気や健康のことを相談する時は病院や医師に相談するように、介護保険を使うこと。
つまり、日常生活動作の支援や家事支援のことを相談する時は、地域包括支援センターとなるのです。

定義に関することが最も大事な知識

そして最後に大事な「知識」として、仕事と介護の両立という「定義」があります。
家族の介護に対して、それぞれの想いがあるでしょう。それぞれの想いを実現するために、知識と知恵を駆使することになると思います。

大前提として、「仕事と介護の両立」においては、先に述べたように、介護の取組み方の問題ではなく労働の問題です。
事業主と労働契約のある労働者であれば、「労働契約(雇用契約)」という基準があることを忘れてはいけません。

その基準から導き出された「仕事と介護の両立」という定義が「労働の義務を極力全うしながら、必要に応じて介護に関わること」です。
これもまた「知識」として携えておかなければいけないことです。

なお、経営者やフリーランスなど、労働契約のない人は、仕事と介護の両立において自分の人生観やキャリアプランにおいて基準を作るところからスタートすることになります。

仕事と介護の両立における「知恵」とは

仕事と介護の両立のための「知恵」は、仕事と介護の両立を実践する人の家族観や人生観、キャリアデザインによって、変わるものです。

家族介護の向き合い方であったり、働きながら介護するためのスタンスであったり、遠距離での介護の関り方や、お金のやりくり、特定施設の探し方やケアプランの作り方などなど、さまざまな知恵があります。

弊社は介護者の心構えとして「ケアラーファースト」を提唱しています。具体的には、以下のような内容です。

●自分の人生を第一優先で考えてください
●自分の心身の健康が何より大事です

また、仕事と介護の両立においては、日常生活動作の生活支援や家事援助はプロに任せて、家族にしかできない「介護」をすべきだとも提唱しています。
これは、私自身の経験や多くの介護者の経験から導きだした、介護者の人生の判断基準です。これらは知識ではありません。

ただ、介護者支援として間違っていることではないので、広く伝えさせていただいています。

「介護離職ゼロ」のために

家族が介護状態になったとしても、会社を辞めることなく仕事と介護の両立という生活を続けるには、知識とそれに基づく知恵を掛け合わせた情報が、介護者の選択肢になっています。

しかし、この「知識」も「知恵」も誰も教えてくれないのです。
「わからないことが、わからない」介護者にとって、手に取った情報が「正しい知識」なのか判断がつきません。
また、知恵だけでは、時に間違った選択肢を導きだしてしまうことになりかねないでしょう。

2016年の「介護離職ゼロ」の国策スタートから、厚生労働省が自治体や企業に仕事と介護の両立支援の協力を求めていました。
しかし、「知識の教示」が「知識の提示止まり」で、知識の周知理解が思うように進んでいないことが分かりました。

そこで!改正・育児・介護休業法が令和7年4月1日施行予定です。

介護休業制度等には、「知識の周知」が企業に義務として課せられることになりそうです。
仕事と介護の両立に危機感を感じている、または直面している従業員は、知識より「知恵」を欲しがります。もちろんそのニーズに応えてあげることも必要ですが、知恵の教示だけではなく知識を合わせて周知することがとても重要です。

弊社では、知識としての介護休業等の理解促進のために経営者や人事労務・ダイバーシティ推進担当者・管理職、また地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所の介護支援専門員向けに介護休業等の解説ができるようになる、解説動画を作りました。

また、来年度から始まる予定の「40歳になるタイミングの社員向け周知義務」の前に、今年、40歳以上の社員向けの知識周知に使える教育動画(10分版・30分版)も順次公開予定です。

公開状況はホームページならびにメルマガにてお知らせいたします。
さらに毎月行っている無料研修では「40歳のための10分研修動画」を視聴いただけます。興味のある人事労務担当者様はぜひご参加下さい。

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