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仕事と介護の両立コラム どうする?どうなる?介護離職者10万6000人~2025年に向けて企業ができること

2023.07.30

2023年7月21日に総務省統計局から令和4年就業構造基本調査が公表されました。
2022年に介護・看護のために過去1年間に前職を離職した者の数、いわゆる「介護離職者」は10万6000人です。

介護離職とは、介護を理由に仕事を辞めてしまう労働者のことです。
従業員が介護離職しないためには、介護離職者の現状を理解しておく必要があるでしょう。

介護離職者の推移


(平成29年および令和4年就業構造基本調査をもとに作図)
平成29年就労構造基本調査で明らかになったことが、2014年に介護離職した人数が10万人を超えたことです。
この事態を受け止めてか、2015年9月24日に自民党は「介護離職ゼロ」という政策を発信。瞬く間に世に出回りました。
そして、2016年6月2日に「ニッポン一億総活躍プラン」で「介護離職ゼロ」は国策として閣議決定。
その政策報道のおかげで2015年10月以降の介護離職者は激減しました。
しかし、介護離職ゼロキャンペーンは約10カ月で終わり、翌年の介護離職者は99,100人でストップ。ここまでが平成29年の就業構造基本調査でした。

令和4年の就業構造基本調査の結果は2017年から始まります。
2017年1月1日から「改正育児介護休業法」が施行されました。
介護休業は通算93日で3分割の利用が可能になり、短時間勤務等の措置は介護休業の通算93日とは別で利用期間の設定がされました。
これもまた各方面での報道のおかげで、介護離職者が減ったのだと推測されます。
その後、介護離職者は増えるものの10万人を超えることはありませんでした。
しかしながら、2021年10月以降(仮に2022年9月まで)には、10万6000人の介護離職者が出てしまいました。
この結果には少なからずコロナの影響があったと想像できます。

介護離職者の推移を見ると、メディア報道の影響力は大きいことがわかるでしょう。
つまり「介護離職はしない方がいい」「仕事と介護の両立を頑張ろう!」という周知活動は、介護離職を防止すると私は確信しています。

働きながら介護をしている有業者

総務省統計局 2023年4月12日公表の人口推計(2022年10月1日現在)によると、15歳から64歳までの生産年齢人口のピークは1973年生まれです。彼らは今年2023年に順次50歳になります。

(人口推計より引用)

有業者の年代別割合

初めに、令和4年就業構造基本調査から有業者の年代別割合を見てみましょう。

(令和4年就業構造基本調査より作図)

50歳から64歳までが30.1%、40代が22.6%、30代が17.5%と、若くなるほど、有業者が減っているのがわかります。
人口構造から考えても当然の結果です。

一方で50歳から64歳までの有業者のうち、働きながら介護をしている人は32.7%。
つまり、50歳から64歳までの有業者の3人に1人は働く介護者なのです。
そして、働く介護者の中でも50代が41.8%と、その割合が著しく高いことがわかります。

年代別の介護離職者割合

次に令和4年就業構造基本調査から年代別の介護離職者割合を調べてみました。

(令和4年就業構造基本調査より作図)

2017年10月から2021年10月以降までのどの時期においても、50代と60代がその6割を占めていることがわかります。

これらの調査結果から言えることは、有業者の50代と60代の人たちは介護離職のリスクが著しく高く、万が一彼らが介護離職したら、減少の一途をたどる労働力にさらなる拍車がかかるということです。

2025年問題から介護離職を考える

1947年~1949年生まれぐらいまでの、いわゆる団塊世代が後期高齢者(75歳)以上になり、人口の約2割が75歳以上になると言われているのが2025年です。
75歳以上の方が爆増するとそれに付随して、社会にはさまざまな影響を及ぼします。これを2025年問題と呼んでいます。

問題の一つが社会保障費の急増です。
現役世代にその負担を負わせないようにするためには、納税する人を増やす、または減らさない対策が必要です。

労働力の確保と離職防止それぞれの観点から、次のような取り組みが行われています。

【労働力確保に対する取り組み】
●女性活躍支援
●シニア活躍支援 など

【離職防止に対する取り組み】
●働き方改革
●介護離職防止
●健康経営 など

つまり、介護離職防止並びに仕事と介護の両立は、介護の問題ではなく、労働の問題であることがわかるのではないでしょうか。

「介護がはじまってないから」「従業員がまだ若いから」「介護は家庭の問題だから」「介護は先が見えないから」と、そのような声が聞かれるのは、介護離職防止ならびに仕事と介護の両立を労働の問題と捉えていないからです。

仕事と介護の両立を続けるのは労働者である従業員です。従業員の労働問題として考えれば、「介護がはじまってないから」「従業員がまだ若いから」ではなく「介護がはじまったら、どのように働けばいいのか」という考えになるでしょう。
「介護は家庭の問題だから」ではなく「仕事と介護の両立は従業員本人のキャリアの問題だから」となるかもしれませんし、「介護は先が見えないから」ではなく「介護に関わりながら、どのような働き方があるのか」という考え方になるのではないでしょうか。

今後の仕事と介護の両立支援の方向性

2023年6月19日、厚生労働省「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」からその報告書が公表されました。
それによると、

ライフステージに関わらず、全ての労働者にとって「残業の無い働き方」

は今後の労働環境において当たり前にしていく努力が必須のようです。

また、仕事と介護の両立支援の方向性としては以下のように記されています。

______________________________________
【具体的な対応方針】
介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の周知の強化等
(1)仕事と介護の両立支援制度の情報提供や、制度を利用しやすい雇用環境の整備の在り方
・既存の制度を利用しないまま介護離職に至るようなケースを防止するために、仕事と介護の両立支援制度の周知や雇用環境の整備が必要
・周知には企業を活用
・介護に対する不安の解消を目的とした社内セミナーの開催や、複数の相談窓口の相談体制の整備、上司向けの研修等を実施
・家族介護を申し出た者に対し、仕事と介護の両立支援制度等に関する情報を個別に周知
・両立支援制度のみならず、介護保険についての基礎的な知識の周知
(2)介護休業
・介護休業に関しては、制度の目的の理解促進が重要なので情報提供に取り組むことが必要
・「介護準備休暇」、「介護休業・介護体制準備休暇」など名称の工夫
(3)介護期の働き方(介護休暇や短時間勤務等の選択的措置義務、テレワークの在り方等)
・継続して雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定によって除外できる仕組みは廃止することが必要
・介護期の働き方として、テレワークを選択できるように努めることを事業主に求めることが必要
・テレワークにより労働者が恒常的に自ら介護を行うことは、要介護者が家族である労働者本人に過度に依存することを助長する恐れもあるので注意が必要
______________________________________
(引用:今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書より抜粋)

いろいろと書いてありますが、大事なことは次の3点です。

★周知には労働者の生活に近い距離にある企業の協力が不可欠
★周知の内容は介護休業等だけではなく、介護保険制度の基礎知識についても同様に取り組む
★周知は介護がはじまる前と介護に直面した従業員への個別周知の2方向から

この報告書を踏まえて、厚労省 労働政策審議会雇用環境・均等分科会でさらに検討をしていくようです。

既に、第59回労働政策審議会雇用環境・均等分科会では「令和5年夏策定の主な政府文書」において、仕事と介護の両立について以下のように明記されています。
______________________________________
介護は始まる時期や介護の課題がいつまで続くかを事前に予測することが困難であり、
労働者(とりわけ女性)が介護休業を取得した際に直接介護を担うと、休業期間が不足し
て離職につながるケースがある。このため、実際に家族が要介護状態になる前の段階で、
仕事と介護の両立に関する「事前の心構え」と「基礎知識」の獲得を促す観点から、仕事
と介護の両立支援制度の情報提供や、医療保険者等による介護保険制度の更なる周知について検討を進める。【厚生労働省】
______________________________________
(引用:令和5年夏策定の主な政府文書

つまり「介護離職者10万6000人を削減していくためのキーワードは【事前と直後の周知徹底】なのです!

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