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仕事と介護の両立コラム 働く介護者の今と未来|「介護離職ゼロ」から6年がたって

2022.04.27


2022年5月24日(火)に、私が代表理事を務める一般社団法人 介護離職防止対策促進機構による「第6回介護離職防止対策シンポジウム」を開催する予定です。
2部構成のシンポジウムで、1部は企業向けのセミナーを、2部は4名の登壇者によるトークセッションを予定しています。
今回はシンポジウム開催に先駆けて、私が6年間で感じたことをお話します。

「介護離職ゼロ」が国策になって6年

2016年6月2日、「介護離職ゼロ」は閣議決定されました。
介護を事由に今までお勤めしていた会社を辞めて、介護に専念することに対し、数々の社会リスクがあることに気づいたことで正式に国策となったのです。

国策になる前から活動を始めていた私にとっては大変感慨深い日でした。

閣議決定を受けて、厚労省をはじめ、経団連や連合などの経済団体も含めて「仕事と介護の両立」の推進を計画。
新聞やテレビ、雑誌にラジオなど、あらゆる媒体で「介護離職ゼロ」を取り上げてくださいました。

しかしながら、「介護離職ゼロ」キャンペーンは約10カ月で終わり、働き方改革へとスライドしていきました。
そんな尻すぼみになりつつある「介護離職ゼロ」ですが、政権が変わっても政策の一つとしてはしぶとく生き残っています。

そして、あの日から約6年がたちました。現在の40歳前後の方で「介護離職ゼロ」という言葉を知っている方はほとんどいません。
ただ、「介護離職ゼロ」の言葉は知らなくても、「親の介護」への興味関心は6年前より高くなっている気がします。

もしかしたら、この変化の表れが「介護離職ゼロ」の効果なのかもしれません。

「介護と言えば地域包括支援センター」のご唱和をはじめて7年

私が介護離職ゼロの声を上げ始めた当初は、「介護になったら地域包括支援センター」とご唱和していました。

ある時、某企業の部長研修でご唱和をしていた時に「介護になる前から(地域包括センターは)使えるのですよね?」という質問をいただきました。
ほかの参加者してくださった方々からも「介護と言えば、の方がよい」とご提案を頂き、今に至ります。その節はお世話になりました!

なぜご唱和をするのか。
それは「ワードを覚えてもらいたいから」です。

いまの時代、何かわからないことがあればインターネットで検索することがほとんどでしょう。
しかし、介護においては「わからないことが、わからないので検索のしようもない」という厳しい現実があります。
情報化社会になっても、介護の問題はインターネットだけで解決はできないのです。

介護に直面した時に、最も頼りになるのが「相談先」と「情報源」です。
そのために、両方の特徴を持っている「地域包括支援センター」というワードを覚えてもらいたいと思い、ご唱和をはじめました。

もちろん、地域包括支援センターの役割や活用事例、活用ルールもお伝えします。
覚えることが多いので、どうしても細かいことは忘れがちです。
しかし、「地域包括支援センター」というワードを覚えていてくれれば、少なくとも場所や問い合わせ先などの検索ができます。

ご唱和を初めて7年たちますが、いまだに、「地域包括支援センターを初めて知りました!」「地域包括支援センターを知れて安心しました!」「実家のすぐそばにありました!気づいてなかったです。」という声がセミナーのたびに届きます。

地域包括支援センターを日本人の介護におけるスタンダードにするには、もう少し時間がかかりそうです。
でも、諦めずにとにかく続ける。それしか広める方法はないと思っています。

介護離職ゼロの裏にいる「働く介護者の隠れ介護」

隠れ介護とは『介護をしていることを公表していない状態』を言いますが、これには2つのパターンがあります。

一つは「隠している」ケアラー(介護者)、そしてもう一つは「隠れてしまう」ケアラーです。

前者は意図して職場に言わない、という意味です。

後者は、介護をしていることを言う必要性を感じてない、言うきっかけがない、目の前の状況が介護と気づいていない(看護と思っている場合や、入院中だから介護ではない、と思っている場合など)などがあります。

意図的に隠している隠れ介護者

「介護をしていることを言い出しにくいのでは?」という人事担当者がいます。
当事者の私からしたら、そう思っている人事担当者にはケアラー側も言い出しにくいでしょう。
事実、セミナー後のアンケートには「介護をしている」と普通に公表してくれます。

しかし、「セミナーを開催したら思いのほか多くの参加者で、人事部としても驚いています。」と驚く人事担当者も多くいる現実もまた事実です。
受け入れる準備のある場所には公表したくなるのがケアラーの心理です。
分かってほしいのです、気づいてほしいのです。
話を聞いて欲しいのです。

また、「同情されたくない」「家庭のことだから職場に持ち込むことではない」と思って隠している方も多いでしょう。
中には、「介護をしていることを言ったら、プロジェクトから外されてしまうかもしれないから言えない」という方もいます。

意図的に「隠している」ケアラーは絶対数は必ずいます。

隠していることは決して悪いことではありません。
しかし、そのまま続けることは推奨できません。しかるべきタイミングでケアラーであることを公表した方がいいでしょう。

なぜなら、介護のある生活はストレスフルだからです。

会社という、人によっては多少なりとも安全地帯となるはずの環境をケアラーが、隠しているがために自分でストレスフルな環境にしてしまっているわけです。
公私ともにストレスフルなんて、心身が壊れていくのは明確でしょう。

また、公表しないから理解されません。
周りの方々に協力を要請しなければ、周りの方々はケアラーを助けようとはしません。
なぜなら、その人がケアラーだと気づいてないわけですから。

どんなにつらい状況でも、声をあげなければ誰かが助けてくれることはありません。

自分の心身や人生は自分で守る

これがケアラーを待ち受けている厳しい現実なのです。

未来の介護者のためにできること

残念ながら、働く介護者がお勤め先のお仕事においてプロジェクトから外されることは多いです。
休みが多いことよりも、残業が出来ないことのほうが原因かもしれません。
合意のもととはいえ、介護を事由とした異動でプロジェクトから外されてしまうのは、他のメンバーからしたら明白です。

それを横目でみていた、未来の介護者はどう思うでしょうか。

「介護が始まったことは言わない方がいい」となるでしょう。
「同情されたくないから言いたくない」というご本人の強い意思の場合もあります。

前者においては、時代の流れにあった、働き方改革と業務改革が必要でしょう。

前例がない中で、前例になるには勇気が必要です。
だからこそ会社をあげて、対策を取ってほしいのです。

後者においては、会社以外でストレスのはけ口を持っておくことで心身のバランスを取ることが出来る場合もあります。

『隠れてしまうケアラー』を未来に残さないために

「介護をしていることを公表してください」
「いつでも相談にきてください」
「公表してくれなければ、会社としても支援のしようがないですよ」

公表の土壌があっても、隠れてしまうケアラーはいます。

「公表のきっかけがない」「家庭内のことだから職場に持ち込むことではない」「相談は特にない」「話すほどのことでもない」など、ケアラーの心情は様々。

あえていうのであれば「相談」はハードルが高いのは事実です。

モヤモヤしているけど、相談するほどのことではない
何か気分が晴れないけど、うまく言えないから、相談はできない
弱みを見せる様で相談はできない

など、ケアラーの気持ちは複雑なのです。

一番不幸なケアラーは「自分の状態が介護だと気づいてない」ケアラーでしょう。

会社だけではなく、社会全体としてケアラーを定義し、発掘していく必要があるのではないでしょうか。
隠れてしまうケアラーに「隠れなくてもいいですよ」「相談先はありますよ」「相談じゃなくてもお話しませんか?」と選択肢を提供するだけで希望が持てるはすです。

第6回介護離職防止対策シンポジウムのお知らせ

働く介護者の今と未来

5月24日の介護離職防止対策シンポジウムでは

元ケアラー
小規模多機能型居宅介護事業者
地域包括支援センター相談員
そして、企業の外部相談窓口として仕事と介護の両立相談を受けているカウンセラーそれぞれの立場で、働く介護者の今と未来を語るトークセッションを行います。

それぞれの立場から見える「働く介護者」をお伝えし、これからの働く介護者の在り方やケアラーの未来を話し合います。

ぜひ、ご参加ください。
詳細はこちらからご確認いただけます。

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