仕事と介護の両立コラム 介護離職しない、させない
「介護離職はしない方がいい、と言うけど、例えば夫婦共働きとかであれば、ご主人が働いているし、無理して両立する必要もないと思いますが・・・」とのお声を頂きました。
皆さんはどう思いますか?
介護離職そして介護離職ゼロのおさらい
最近あった方に『介護離職とか介護離職ゼロってご存知ですか?』と聞くと、知らない方がちらほらいます。『新三本の矢、介護離職ゼロ』は昔の話になりつつあるのかな、と感じてしまいました。
家族の介護を事由に、いままで勤めていた会社を退職し、家族の介護に専念することを「介護離職と」言います。ちなみに「介護離職ゼロ」は、2016 年6月2日の閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」によって国策となりました。新政権ではどうなることやら・・・
政府の言うところの「介護離職ゼロ」とは
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介護をしながら仕事を続けることができる、「介護離職ゼロ」という明確な目標を掲げ、現役世代の「安心」を確保する社会保障制度へと改革を進めていく。
子育てや介護をしながら仕事を続けることができるようにすることで労働参加を拡大し、潜在成長率の底上げを図る。
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つまり、『現役世代である我々が働くことで、社会保障制度の基盤を強くしましょう』ということであり、「介護離職ゼロ」は、いうなれば経済政策なのです。
その上で、仕事と介護の両立とは、介護に集中するのではなく、仕事に集中しながら介護に関わることで、国や企業は介護に直面している従業員が仕事と介護の両立を図りやすいように支援して、望まない介護離職を防ぎましょう、と言うのが「介護離職ゼロ」の方針です。
介護離職は絶対にダメなものなのか
厳密な言い方をすれば「本人の望まない介護離職は阻止すべき」です。
介護が事由だろうが、人間関係が事由だろうが、キャリアアップが事由だろうが、今までの務め先を辞めることは悪いことでもないし、今の時代では転職はよくある事です。決して否定されるべきものではありません。
ただし、離職、つまり職を離れて仕事をしない、という状態はよほどの事由がない限りおススメはしないです。なんせ、日本国民の義務として「納税」「労働」「教育を受ける義務、受けさせる義務」がありますから。
話を戻しますが、本人が望まない介護離職とは、つまり「介護離職するしかない」という状態で、会社を辞めて無職になる状態の事です。これは断固として反対です。なぜならば、「介護離職するしかない」ということはないからです。
介護離職するとどうなる?
「三菱UFJリサーチ&コンサルティングの平成24年度厚生労働省委託調査 平成24年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」によると、介護離職した方の離職後の変化として、精神面64.9%・肉体面56.6%・経済面74.9%の方が非常に負担が増えた、または負担が増えたと答えています。
職を離れるのですから、当然ながら収入が途絶えます。従って経済的負担が増えるのはイメージがつくのではないでしょうか。
初めての介護の方も多いでしょうし、人間の生命の変化を目の当たりにする行為というのは精神的負担が大きいものです。それに加えて、収入のない不安は精神的負担を助長します。
さらに、収入がないので、出費を抑えたい、という思いから、介護サービスの利用を控え、自らの身体と時間を使って介護に勤しむ方がいらっしゃいます。その結果、肉体的負担も増えていくのです。
これだけ聞くと「介護離職はいいことないのかもしれない」と感じるのではないでしょうか。
そうは言っても、仕事と介護の両立がツラく、職場に迷惑をかけているのではないか、対象者の変化への憤りで日々イライラする、それゆえさらに仕事に集中できない、などの負のループにハマって「とりあえず仕事を手放して、ゆっくりしたい」「とりあえず、辞めてから落ち着いてこの先の事を考えたい」という思いが出てきます。その流れで離職すれば、会社を辞めたその一瞬はとても気分が楽になります。
ただし、それもつかの間です。先にもあるように、収入のない不安は精神的負担を助長しますので、仕事と介護の両立に対する不安とは違う、将来不安があなたを襲ってきます。
そんな状況ですから、それでも介護離職したくなるほど、いまの仕事がツラかったり、職場に居づらいのであれば、転職先を決めてから退職することをおススメします。
仕事と介護の両立が出来ないと感じたら
働く介護者の中には、仕事と介護の両立をしているのではなく、介護離職していないだけ、介護離職するつもりはないだけ、という気持ちの方がいます。
そもそも仕事と介護の両立とは何でしょうか。
両立という言葉を調べると「他の存立を妨げる事のない様」とありました。つまり、両方等しくとか、両方上手にとかではないのです。
仕事と介護のそれぞれがそれぞれを妨げない状態が「仕事と介護の両立」なのです。
時間で考えるとわかりやすいです。
人間は皆さん24時間しかありません。仕事をお昼休憩を入れて9時間とします。寝る時間を8時間とします。通勤時間を往復で1時間30分とします。これで18時間30分使いました。残りは5時間30分です。朝の支度に1時間、夕飯の買い物から準備、片づけで2時間30分としたら残りは2時間です。お風呂の時間や読書の時間、テレビの時間等自分の自由時間を1時間としても残り1時間です。この1時間で介護に関わることも立派な仕事と介護の両立の姿なのです。
1時間じゃ何もできない!と思いますか?電話が出来ます。近所であれば朝食や夕飯を届けに行くこともできます。ついでに団らんをして来ることもできるでしょう。
それも十分愛のある介護の形です。
あなたはどういう人生を生きたいですか
介護離職をして、介護に勤しむのも人生です。人生は長いですから、介護が終わってから、次のステップを考えるのもいいでしょう。
勤め先を探すのが困難であることは事実ですが、それもまた人生と楽しめるのであれば幸せなことなのかもしれません。
仕事と介護の両立がツラく、職場でも肩身が狭い。眉間にしわを寄せながら、常にイライラして、仕事も結果が出せず、要介護者の生活環境にも影響が出るようなことがあれば、それは非常に危険な状態です。介護はつまるところ、事件事故に発展する可能性を秘めているからです。
あえていうのであれば「介護を手放すこともできる」ということは知っておいて欲しいです。介護放棄は悪ではありません。放棄放任といって、要介護者に対して、何もしないで放置しておくのは絶対だめです。「放棄したい」という意思を地域包括支援センターにしっかり伝えて、要介護者の保護をしてもらいましょう。決して恥じる事でもないし、悪いことでもないし、むしろ大事な命を守る立派な行動だと思います。
これだけはいえますが、介護は生活です。要介護者の人生です。介護は間に入って護る事です。
自分の人生を守れない人に、大事な人の人生は守れません。
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