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仕事と介護の両立コラム 研修を実施すれば仕事と介護の両立はできるのか|仕事と介護の両立の本質

2024.05.01


「研修を実施すれば仕事と介護の両立はできるようになるのですか?」という、単刀直入な質問を受けました。
仕事と介護の両立支援をするにあたり、何から取り組むべきなのかわからないと「とりあえず研修を実施すればいいのかな?」と思いがちです。

もちろん、研修を実施しないよりはした方がいいですが、当然ながら「研修実施=介護離職ゼロ」ではありません。
今回は、仕事と介護の両立支援における研修の活用法についてお話いたします。

仕事と介護の両立を考える

仕事と介護の両立とは「労働の義務を極力全うしながら、必要に応じて介護に係ること」です。
一方で、家族の介護に直面している人にとっては、仕事と介護の両立をしている生活を送っています。
どんな生活なのかといえば、自分の生活拠点や趣味・交友関係、家族親族との関りです。
他にも、お仕事の取組み方や日々の生活リズムなどにおいて、ここ1年ぐらい過ごしてきた生活を続けるには、または思い描く未来を生きるには、いままでとは違う工夫や考え方が必要な生活です。

そんな生活を「突然」やることになったら、あなたは、パパっと切り替えることができますか?

介護は突然やってきます。同時に、いままで送ってきた生活が半強制的に、一時的にでもできなくなるのです。この事態の困難は何だと思いますか?それは「時間」と「気持ち」なのです。わかりやすくいえば、突然はじまる介護で仕事に影響が出る理由は、介護に直面した従業員の「時間」と「気持ち」が原因なのです。

仕事と介護の両立と「時間」の関係

結論からいえば、仕事と介護の両立に関する最低限の知識を持っているか、持っていないかでスタートダッシュが変わります。
さらには、時間をコントロールする術が変わります。結果、課題解決までの時間が変わるのです。

例えば、「介護と言えば地域包括支援センター」を知っていれば、突然の介護や親族の認知症などへの心配があった場合、迷わず「地域包括支援センター」に連絡することができます。知らなければ、多少なりとも右往左往するでしょう。

その時間が「ロス」になり、積もり積もって、生活時間(=仕事時間)に影響が出るのです。
夜な夜なネットで調べたり勉強したりしていれば、生活時間=睡眠時間にも影響が出て、それが間接的に仕事に影響を及ぼすことになる場合もあります。

仕事と介護の両立と「気持ち」の関係

仕事と介護の両立に影響の出る原因のひとつである「気持ち」とは、就業継続意思の有無のことです。
会社が好き、仲間が好き、仕事が好きであれば、仕事と介護の両立のある生活の糧になるので、とてもいいことです。

好きゆえに、今まで通りうまく仕事に取り組めないことにストレスを感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、それも加味してしっかり会社が評価をしてくれるのであれば、乗り越えられることもあります。

仕事と介護の両立は就業継続意思があることが前提。
就業継続意思がなくなること、つまり、それは介護離職の瞬間です。就業継続意思の醸成、それもまた仕事と介護の両立支援なのです。

では、仕事と介護の両立において困難を引き起こす原因である「時間」と「気持ち」に対して、できる対策は何でしょうか。
「時間」に対しては、知識や知恵の習得機会提供であり、「気持ち」に対しては、キャリア支援と言えます。

仕事と介護の両立を困難を引き起こす「気持ち」のため対策

先にも述べたように、会社が好き、仲間が好き、仕事が好きであれば、仕事と介護の両立のある生活の糧になります。
介護に直面している・していないに関わらず、モチベーション高く、仕事に取り組めるようになってもらう支援は、労働力不足の現在には必要な対策です。
つまりキャリア支援です。

介護に直面したら、就業継続意思がそがれることもあります。気持ちのアップダウンもあるし価値観や人生観が変わることもあります。
それを傾聴しながら、どんな働き方ができるのかを一緒に考えてくれるキャリア支援があるといいでしょう。

キャリア支援を使いやすくするためにも、社員全員が普段からキャリア支援を活用していることが大事です。
キャリア支援の手段として面談や研修があります。例えば「あなたは、今の会社や仕事、職務の魅力を語れますか?」というワークもキャリア支援のひとつです。

誰かに理解してもらうために語るのではなく、自分の人生を輝かせるために語ります。面談でも研修でもできるワークです。
仕事と介護の両立支援には思えないかもしれませんが、こういったキャリア支援もまた仕事と介護の両立に繋がっていることは確かです。

仕事と介護の両立に対する知識習得の機会

仕事と介護の両立に影響を及ぼす「時間」に対する知識や知恵の習得機会の提供手段として、「研修」があります。もちろん、習得機会の提供手段としてリーフレットやハンドブックでもいいとは思います。スタートダッシュの時間も考えると、事前に知識の習得をしておくに越したことはないです。

「介護保険の概要」や「地域包括支援センター」、「育児介護休業法における介護休業制度等」の「知識」においては、本来であれば常識として携えておくべき事項です。しかし、残念なことに現在の日本において、その教育はされていないも同然。そして今に至るだけの話です。誰も知識を提供していません。

知識や知恵の習得機会としての手段ですから、リーフレットやハンドブックを作ればいい、配ればいい、研修をやればいい、そう思われがちです。しかし、それだけではありません。

問題は、その内容ですよね。したがって、当初の質問である「研修を実施すれば仕事と介護の両立ができるのか」に対する答えとしては、「研修」だけでは両立はできるわけじゃないし、しかもその研修の内容にもよります、となります。

リーフレットやハンドブックはどちらかと言えば福利厚生要素が色濃いです。一方、研修は教育機会的な要素が色濃いでしょう。仕事と介護の両立における知識の習得には、研修の方が適しているとは思います。

仕事と介護の両立研修を企画するにはどうしたらいいのか

「仕事と介護の両立とは何か」を根本から理解していない担当者が、仕事と介護の両立研修を企画するには無理があります。
仕事と介護の両立支援をする立場の方は、その社会背景や原理原則、基本的な考え方などは学んでおいた方がいいでしょう。
毎月弊社が開催している、人事部・ダイバーシティ推進担当者向けの無料研修で、偶数月開催の「企業における仕事と介護の両立支援の仕組み作りのヒント」をご活用ください。

基本的な考え方や原理原則を知らないで外部に委託したところで、その研修内容が適切なのかどうなのか判断がつかないでしょう。研修と言っても、講演会のような一方的に話をする形式のものから、考える時間や意見交換する時間などのプログラムのある1日がかりのワークショップ形式のものまでさまざまです。

前回コラムの知識と知恵の違いを理解しておくと、提案頂いた研修内容が読み解きやすくなります。
https://wcb-labo.com/column/7240/
その上で、知識習得機会としての仕事と介護の両立研修であれば最低でも以下の内容が盛り込まれているかどうかは確認してください。

●仕事と介護の両立とは(就業義務があることを再確認)
●地域包括支援センター(利用方法と調べ方)
●介護休業制度等の説明(特に、介護休業制度の利用想定目的)

可能であれば、以下の内容が盛り込まれているとなお良いでしょう。
●介護保険の概要(社会保険のひとつであること)
●介護保険を使うまでの手続き(介護認定の段取りと、それに伴う介護休業制度の使う方)
●働く介護者の心構え(ケアラーファースト)

そもそも論の「仕事と介護の両立とは」を伝える研修は少ないのが現状です。
また介護保険制度においても、手続きの方法やケアプランのことばかりで、社会保険としての介護保険の概要を伝える研修は多くありません。
厚生労働省の仕事と介護の両立支援ツールには出てこない内容です。

それは知識の提供者側からしたら「当たり前」な事項だからです。
でも、従業員目線だと、それは「当たり前」ではありません。だから、しっかり共有しておくことが大事なのです。

また、余談ですが、研修前に従業員の知りたいことをヒアリングすると、その多くは「知恵」を求めます。
お金のことや介護施設の選び方、遠距離介護やダブル介護の方法などがそれです。
彼らは基本的には知識と知恵の違いも知らない。
そもそも「わからないことが、わからない」なりに出した「知りたいこと」であることを、ヒアリングした方々は理解しておかなければいけません。
もちろん、その知恵の提供機会もあるに越したことはありません。ですが、知恵であれば、それこそリーフレットやハンドブックでもいいと思います。

「時間」=知識習得、「気持ち」=就業継続意思の醸成。それぞれにたいして、どんな手段をつかうか、そのひとつの手段が「研修」である、というだけの話ですね。

なお、弊社は研修・キャリア支援・介護相談・リーフレットやハンドブック作成など、さまざまな手段で仕事と介護の両立支援を頑張る企業様をサポートできます。ぜひお問合せ下さい。

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