仕事と介護の両立コラム 人事部はどこまで介入すればいいですか?
両立支援と言われるのが
仕事と育児の両立、仕事と治療の両立、仕事と介護の両立があります。
仕事と育児の両立と仕事と治療の両立においては、その言葉の対象と仕事をする従業員が同一なので、
会社としても従業員の事だから、とある意味取り組みやすいかもしれないです。
一方、仕事と介護の両立となると、その「介護」の対象者は従業員ではなく、従業員の家族・親族・大事な人です。当然ながら、人事部は従業員の家族・親族・大事な人に直接的な支援を施すわけでないため、仕事と介護の両立支援となると、何をどこまで介入したらいいのか、迷いが生じる方が少なくありません。
介護離職をしない事と、仕事と介護の両立の心理的違い
介護離職をしない、というのは、つまりは会社を辞めない、辞めていない状態を保つ事であり、介護離職をしたくない、介護離職は出来ない、そんな想が感じ取れます。
一方、仕事と介護の両立を頑張ろう!というのは、会社を辞めたくない、キャリアを諦めたくない、そういう想いが感じ取れます。また、要介護者と己(ケアラー)をしっかりキリ分けて考えられていることも感じます。
仕事と介護の両立は楽なものではありません。それでも頑張る事が出来るその根底には、仕事やキャリアや職場への、愛情や同僚への想い、やりがいや夢やいい意味での執着が必要と考えます。
つまり、人事部の仕事がまさにこれです。
介護に直面した人のキャリア支援であり、管理職支援、代替要員の手配や、支え手への評価等で働きやすい職場作り、働く介護者への理解醸成を図ることです。
人事部の方からこんな質問を頂きました
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24時間365日、3時間置きの看護が必要な家族を抱えてしまった従業員がいます。
どのように働けるか当事者も人事も想像がつかず、どう解決をしていけるのかわからずにいます。どうしたらいのでしょうか。
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仕事と介護の両立とは、仕事と介護を両方等しく取り組むことではありません。他を妨げない様のことで、仕事が介護を、介護が仕事を妨げない様のことをいいます。労働者にとってその基準は原則「仕事=労働」です。理由は、労働契約を結んでいるため、労働の義務があるからです。
従って働く介護者の役割としては「要介護者の事を極力意識しないで働ける状態を作る・維持する」ことです。これを仕事と介護の両立のための介護環境の整備と言います。
仕事と介護の両立のための介護環境とは物理的環境と精神的環境があります。
仕事と介護の両立のための物理的環境は労働の義務を遂行するために、労働時間並びに労働場所を介護が妨げない状態を作ることです。
仕事と介護の両立のための精神的環境整備は、労働の義務を遂行するために、介護による精神的な負担が労働を妨げない状態を作ることです。
ひとは皆24時間365日しかありません。その中で、ご自身の生活を守るための「睡眠」「食事」「労働」を行い、それに伴う移動や買い物、家事などに時間が費やされます。となると、働く介護者が介護に直接関わる時間というのは、ほとんど確保できないのです。
ましてや『24時間365日3時間置きの看護』などは、要介護者のそばにいる者が一人であれば、寝る時間さえも確保できないわけで、ご相談対象の従業員は労働はおろか、ご自身の生活も破綻することが目に見えています。
つまり、働く介護者が『24時間365日3時間置きの看護』を担うということは、働く介護者の役割を逸脱した行為であり、仕事と介護の両立の前提が違うのです。働き方の工夫や社内制度の利用以前の問題であり、逆にその前提から一緒に何かを考えたときに、その労働者の心身を壊す可能性さえもあります。
身体介護は生命維持に直結した行為です。働く介護者という身体介護の素人がそれを行うには覚悟と技術が必要であり、企業人事がそれに対しアドバイスを出すのはリスクが高すぎるのではないかと考えます。
では、人事部としてできることは何もないのか
決してそんなことは有りません。
「仕事と介護の両立」って、働く介護者の強い意思がなければ成り立たないのです。
わたしを含め、人事部や同僚が出来ることは、その本人の強い意思があっての支援です。
上記の例でいえば
「24時間365日、3時間置きの看護が必要な家族を抱えてしまった従業員」
ここまでは何の問題もないわけです。
その看護を従業員自らの時間を費やすことに問題があるのです。
『なぜ、従業員自らの時間を費やさなければいけないのか』を深堀することは人事部でもできる事です。なぜなら、この深堀行為は、ただのキャリアカウンセリングだからです。
・そうは言っても、家族の事だし・・・
・仕事も大事だけど、家族の事だし・・・
・このまま続けても、職場に迷惑が掛かるから辞めようかな・・・
・働きやすい職場に転職しようかなとも思っています・・
などと従業員の仕事に対するモチベーションが落ちているのであれば、人事部がしっかりケア並びに職場フォローをする必要があるでしょう。
・要介護者の生活と自身の生活を同一化してしまっている
・何らかの圧力により同一化せざるを得ない状況にある
・自分がやるものだと思っていた
・自分がやらなくてもいい、ということを知らなかった
・自分がやらなくていい方法を知らない
など、仕事と介護の両立をしたい!働きたい!労働の義務は遂行したい、だけど、物理的な仕事と介護の両立のための環境整備の方法がわからない、という事であれば、人事部としてできることは「地域包括支援センターに相談に行って、働ける環境を整えてきてください」で十分です。
仕事と介護の両立のための物理的な環境整備は本人または家族が行う事であり、人事部が物理的な介護環境整備に直接介入する必要はありません。地域包括支援センターに行ってくるように促し、その場合、介護休暇が利用できることを伝える、これが人事部の役割です。
なお、仕事と介護の両立のための精神的環境整備は、労働の義務を遂行するために、介護による精神的な負担が労働を妨げない状態を作ることであり、そのために人事部がキャリアカウンセリングという名目で話を聞いてくれる機会を作ることは、仕事と介護の両立のための精神的環境整備に非常に有効です。
「介護」に遠慮しない~セルフキャリアドックのススメ~
誰にとっても働きやすい職場の合言葉は
話しやすい職場
帰りやすい職場
休みやすい職場
です。
働く介護者にとって、日々の何気ない会話の中で、介護の話をポロっといえる、そんな環境は大変ありがたいものです。ポロっとこぼれた介護の話にアドバイスが欲しいわけではありません。
聞いてもらいたい、話したい、むしろ吐き出したい、そんな想いがある場合があります。
職業能力開発促進法による「セルフキャリアドック」は企業の努力義務として位置づけられています。企業側にとっては賛否はあるものの、つまりは人事部との話のきっかけづくりとして仰々しい名目があると従業員も利用してみようかな、と思ってくれる人もいるかもしれません。
そういった、働く介護者との会話の機会を積極的に作っていただくことで「話しやすい」職場作りに繋がっていきます。話しやすい職場は情報も流通します。いいことしかありません。
キャリアカウンセリングでもセルフキャリアドックでも、人事面談でも、立ち話でもいいのですが、とにかく「介護」に遠慮しない事です。
ダイバーシティインクルージョンは、相手を理解したうえでの多様性を認め合うことだと思います。なのに「介護」となると、遠慮がちになるようです。
興味本位で深堀するのと、従業員に関心をもって深堀をするのでは、意味も目的も態度も変わります。
良好なコミュニケーションが働く介護者の意欲を向上させ、結果それは介護離職防止に繋がります。
とはいえ、現場は一筋縄ではいきません
とはいえ、実際問題として、働く介護者と話をしたら「介護」の話は出てくるわけで、訪問と通所の違いが判らなかったり、ケアマネジャーが何者か知らなかったりと、話を聞く側も不安は大きいと思います。
また、地域包括支援センターに行ったところで何と相談したらいいのかわからないとか、行ったけど何も変わらないとか、現場レベルではいろいろな困難もあります。
なので、このコラムをご一読いただいている皆さんの会社の働く介護者が働くことに集中出来る環境整備が出来ないようであれば、我々のような介護者支援団体があることを紹介していただけるといいと思います。
餅屋はもち屋!これが一番です。
弊社は従業員300名以下の中規模事業者、100名以下の小規模事業者にはコストを極限まで抑えた両立支援プランをご用意してございます。
また、個人支援のシステム「情報とコミュニケーションのサブスクサービス ケアラーズコンシェル」もあります。
こちらでは、月額550円で人事部のコンサルティングも可能です。
ぜひ、ご活用いただければ幸いです。
まずは
ケアラーズコンシェルのTOPページで、その概要をご理解いただければ幸いです。
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