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仕事と介護の両立コラム 介護は情報戦

2021.07.02

「介護は情報戦」とはよく言ったものだと、介護が身近にある生活をしているとつくづくそう思います。
介護が身近にある生活を18年も続けていると「ベテラン」なんて言われることもありますが、決してベテランではありません。
私にとっては全てが初めての介護です。介護の終りを迎えてもいません。明日は何が起きるかわかりません。そのための情報収集は怠れません。
今日の不安は情報収集による選択肢の発見によって明日は安心に変わることもあります。

都市伝説が多い介護の情報

介護をしていると理不尽なことや不都合なことがたくさんあります。
「自分を納得させるには、正しい情報が一番!」と私は、そう思って情報収集をしています。
そうすると「正しい情報はどこにあるのか」という迷宮に入ることがあります。
介護に関わる情報はあふれかえっています。
同じように検索しても、違う情報が出てくることは良くあります。
とかく「介護」は情報がねじ曲がりやすいと感じています。
見聞きした情報をそれぞれがそれぞれの立場で都合よく解釈し、発信します。
へたくそな伝言ゲームのようです。
明らかに間違った情報もありますが、ほとんどの場合、言葉が足りないのだと感じます。
「わからない事が、わからない」相手に届ける情報だということを、発信者側が認識をしないといけないと思います。
介護には「愛」が必要です。愛をもって情報を届ける努力は必要かなと感じております。

明らかに間違っている情報

「要介護認定の申請には医師の診断書が必要です」というのは明らかに間違っています。
「介護休業等の申請には医師の診断書が必要です」というのもダメなのです。
要支援要介護認定の際に「主治医の意見書」は判定材料として必要な書類です。その請求にあたっては、自治体から申請書に記載してある主治医へ依頼します。つまり、意見書に対する報酬は自治体から支払われます。
要介護者または家族が、主治医に対して「意見書ください」とか「診断書ください」と言うと、文書作成費用を要介護者または家族が支払うことになります。要支援要介護認定の申請において要介護者ならびに家族の費用負担はありません。
というより、要介護認定の申請の際に必要なものは「要支援要介護認定申請書」だけです。添付資料は不要です。

介護休業等の申請において、「医師の診断書または介護区分のわかるもの」を根拠資料として求める企業がありますが、制度運営上、それらの根拠資料の提出が無くても、労働者からの介護休業等の申請を拒否することはできません。
もちろん、雇用期間などの条件をクリアしていることが前提ですが。
なぜならば、例えば「介護区分のわかるもの」ですが、一般的には介護保険書の事だと思われますが、介護認定がされた方には、介護保険書に区分が印字されます。
しかしながら、要支援要介護認定の未申請の方も多くいらっしゃいます。当然ながら、介護保険書に介護区分の印字はありません。それでも、2週間以上の期間にわたり、常時介護が必要な状態にある方は多いです。
しかも、介護休業等の取得に対して、対象家族が要介護状態にある場合、と規定されていますが、対象家族には子や孫も含まれます。介護区分というのは、介護保険法上のものですから、子や孫が40歳以上であることになってしまいます。
介護区分のわかるものを根拠資料にすることがナンセンスであることはご理解いただけるのではないでしょうか。
さらに「医師の診断書」を根拠資料として求めることも、介護休業等の取得の条件とはできません。
まず「医師の診断書をもらいに行く」という行動において、多くの場合「平日・日中の時間」が必要です。つまり、労働の義務を免除してもらう必要があります。「介護」が事由で労働の義務を免除してもらうための制度が介護休業等の制度なわけで、その取得のために「医師の診断書」を求めることが本末転倒であることは、本文を読みながらお気づきになったのではないでしょうか。
また、「医師の診断書」を請求するには、「要介護者が病院にいって受診をする」という行動が必須なのですが、要介護者が受診してくれなくて困っている、家族介護者も多いのです。そのためにどうしたらいいのか、地域包括支援センターに相談に行く、その時間もまた「平日・日中」の時間であり、労働の義務を免除してもらう必要があるわけです。そのための介護休業等なわけですから、医師の診断書を添付資料にすることがナンセンスであることがご理解いただけるのではないでしょうか。

介護休業等の取得申請に根拠資料を求める場合

先の通り、第三者による根拠資料を取得条件にすることはナンセンスであり、実は厚労省のホームページにもその旨の記載はあります。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/otoiawase_jigyousya.html

となると、企業としては根拠資料なしで介護休業等の申請を受理しなくてはいけないのか、と不安が残るようです。
であるならば、常時介護が必要な状態の判断基準として12のチェック項目がありますので、その資料を活用することをおススメしております。

もちろん、従業員の自己判断によるチェックです。
というと「虚偽の判断をする者がいるのではないか」と心配する企業担当者もいらっしゃいます。
虚偽の判断をする者がいるか、いないか、と言えば、「いる」でしょう。
でも、それって、もはや「仕事と介護の両立」とか関係ない次元の議論ではないでしょうか。
虚偽の理由で介護休業等の取得をする。
つまり、会社を休みたい、ということですよね。
仕事がイヤなのか、職場がイヤなのか、会社がイヤなのか、お疲れモードなのか。
とにかく、働く意欲が低下していることには間違いないと思います。

虚偽の判断かな?と感じても、その根拠がないので、介護休業等の申請に対して拒否はできないと思います。従って、「仕事と介護の両立」という大義名分で面談をするなどして、本音の部分をしっかりフォローしておく必要があると思います。

もっと言えば、従業員が「虚偽の理由を使ってでも会社を休みたい」とならないように、普段からキャリア支援等のフォローアップをして、介護や育児や病気などの両立支援のみならず、誰もが働きやすい職場づくりというものを続けていく必要もあるのではないでしょうか。

正しい情報はどこにある


多くの都市伝説が飛び交うなか、正しい情報はどこにあるのか、と言えば「法律」です。
法律に戻って、理解するようにしています。
法律の条文を読むこともあれば、法律の運営元である厚労省等の機関ホームページで調べることもあります。

例えばこの前、メンバーと「グループホームの提案はケアマネジャーの仕事か」という議論をしました。
ケアマネジャーの仕事について条文では以下のように書かれています。
***************************************
介護保険法(平成九年法律第百二十三号)
第五章 介護支援専門員並びに事業者及び施設
第一節 介護支援専門員
第三款 義務等
(介護支援専門員の義務)
第六十九条の三十四 介護支援専門員は、その担当する要介護者等の人格を尊重し、常に当該要介護者等の立場に立って、当該要介護者等に提供される居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービス、介護予防サービス若しくは地域密着型介護予防サービス又は特定介護予防・日常生活支援総合事業が特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
2 介護支援専門員は、厚生労働省令で定める基準に従って、介護支援専門員の業務を行わなければならない。
3 介護支援専門員は、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。

***************************************
ポイントは2項目ですね。
2 介護支援専門員は、厚生労働省令で定める基準に従って、介護支援専門員の業務を行わなければならない。

これを深堀すると
***************************************
介護保険法施行規則(平成十一年厚生省令第三十六号)
第四章 介護支援専門員並びに事業者及び施設
第一節 介護支援専門員
第三款 義務等
第百十三条の三十九 法第六十九条の三十四第二項の厚生労働省令で定める基準は、指定居宅介護支援等基準第十二条に定めるところによる。

***************************************
と、明文化されています。
となると、次に「指定居宅介護支援等基準第十二条」を探します。
***************************************
平成十一年厚生省令第三十八号
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
第三章 運営に関する基準
(指定居宅介護支援の基本取扱方針)
第十二条 指定居宅介護支援は、要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療サービスとの連携に十分配慮して行われなければならない。
2 指定居宅介護支援事業者は、自らその提供する指定居宅介護支援の質の評価を行い、常にその改善を図らなければならない。

***************************************
とあります。
ここでわかるのは、特養等に所属する介護支援専門員については業務の明文化がありません。従って、必置資格としてのみの役割と解釈することができ、所属事業者の仕事を全うすることが業務であることが推測できます。

さらに、深堀すると
***************************************
(指定居宅介護支援の具体的取扱方針)
第十三条 指定居宅介護支援の方針は、第一条の二に規定する基本方針及び前条に規定する基本取扱方針に基づき、次に掲げるところによるものとする。

***************************************
とあり、27項あります。
注目すべきは
***************************************
十八 介護支援専門員は、介護保険施設等から退院又は退所しようとする要介護者から依頼があった場合には、居宅における生活へ円滑に移行できるよう、あらかじめ、居宅サービス計画の作成等の援助を行うものとする。
***************************************
です。
入居施設から居宅に移行するときは援助を行うが、逆については明文化されていません。つまり、しなくてもいい、という事です。

ここで、最初の議論の結論が出ます。
「グループホームの提案はケアマネジャーの仕事か」の結論がでました。

この場合のケアマネジャーは居宅介護支援事業所のケアマネジャーの事です。
結論は、「グループホームの提案は必ずしもケアマネジャーの仕事ではない」です。

もちろん、提案してくださるケアマネジャーさんもいるでしょう。それはそのケアマネジャーさんの好意です。善意です。感謝の意を表してください。

介護は情報戦と言われる所以

間違った情報や発信があいまいな情報をつかむと、それに振り回されるのが、家族です。
時には怒りになり、時には悲しみに暮れ
あいまいな情報に感情がぶんぶん振り回されてしまう事があります。
これを感情の浪費と言っておりますが、
皆さんの大事な時間と大事な心は、大事な人に対して使ってもらいたいのです。

当社では正しい情報は、先のように裏をとって発信するように心がけております。
ものすごい手間ですし、ものすごい難しい作業です。

「そんなこと言っても、ケアマネジャーさんが提案してくれなければ、教えてくれなければ知る由もない!」と憤慨する方も多いかもしれません。
お怒りはごもっともだと思いますが、現行の法律ではそうなっているのですから、仕方がありません。法律を変えるなり、ケアマネジャーの業務基準を変えるしかないです。

つまり、正しい情報によって時に厳しい事実を突きつけられることになるかもしれません。
しかし、介護はある意味カウントダウンです。
無駄な時間を使っている暇はないのです。

法律を変えることに尽力してしまうと、私がいまやりたいことはできなくなるので、
当社では、現行の法律の中で、何ができるのか、どうしたらいいのかを考え行動できるようにご支援させていただいております。

皆さまにおかれましても正しい情報源、お節介な相談先を持つことが
介護の情報戦に対して有利になることだと思います。

ぜひ個別相談対応可能のケアラーズコンシェルをご利用くださいませ。
登録月は無料ですので、月初に登録するとお得ですよ!

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