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仕事と介護の両立コラム 育児・介護休業法の改正を考える

2021.08.01

令和3年6月に育児・介護休業法が改正されました

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000788616.pdf
1 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
2 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
3 育児休業の分割取得
4 育児休業の取得の状況の公表の義務付け 
5 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

そもそも何のための制度なのか

労働者というだけあって、事業主と労働契約を締結しています。労働契約を締結しているということは、労働者には労働の義務があります。それに対して事業主は報酬を支払います。
この前提を忘れないでください。
労働者には労働の義務があるのです。労働契約書にはどこで働くのか、何時から何時まで働くのか、等の事が明記されています。また、10名以上の事業所には就業規則がありますし、8時間以上の労働をしてもらうためには労使協定もあるはずです。
それらの条件下において、労働者は労働の提供を行い、事業主は報酬を払います。
しかしながら、育児や介護に直面すると、契約した労働の義務を遂行できない時があります。
育児にはそもそも出産があるし、介護においても、役所手続きや通院同伴、家事など、労働者自らが物理的な時間を割くことで労働の義務に支障をきたすのです。
となると、義務を果たせないわけですから、休業したり有給休暇を使ったり、または退職するしかないのでしょうか、ということになってしまいます。もちろんそれも一つの選択肢ではありますが、少子化を助長させることになったり、高額所得者を減らしていくことに直結しますので、国としては非常に宜しくないわけです。
そこで、休業や有給休暇とは別に育児や介護において労働の免除を申請できる制度を設けることで、雇用を継続しつつ、育児に専念したり、介護に関わる事が出来るようにしました。
つまり、育児介護休業法は労働者が休める権利の制度ではなく、労働の義務を免除してもらう権利の制度であるということを理解する必要があります。

労働の免除を申し出る事が出来る権利

育児休業も介護休業も「この法律の育児休業(介護休業)は、労働者の事業主に対する申出を要件としています。」と明文化されています。そして、条件を満たしていれば事業主は申出を拒むことはできません。
逆を返せば「制度を知らなければ申し出る余地もない」という事ですし、事業主としても制度の告知義務はありませんでした。
この度の法改正において「育児休業」については、事業主に「制度周知および取得意向を確認する義務」を課せました。
これは、男性が育児休業を取得しやすくするための対策で「妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置を講ずることを事業主に義務付ける」とあります。
介護休業は育児休業とその取得の目的が異なるため、取得意向の確認は無くてもいいけど、育児休業と違って、誰がどのタイミングで、どんな時に活用していいのかは知られていないように感じます。結果として「制度を使えると、知らなかった」ということになりかねません。
介護離職防止等の対策で、厚労省を筆頭に制度設計・制度整備を掲げることが「正」とされがちですが、制度設計・制度整備をするのであれば、介護休業を93日から1年に延長するのではなく、介護休業等の制度の周知を育児休業のように制度化することを強くおススメします。
くりかえしますが、労働者が事業主に申請することによって事業主がそれを拒むことのできない法律なので、法律を知る由もなければ、申し出る余地はない、という事です。
育児介護休業法における各種制度は、事業主に説明義務はありませんが、説明しなければ「やっぱり、会社は協力してくれない」と言われかねません。会社の姿勢を示すことは重要なのではないでしょうか。

コンプライアンスとしての育児介護休業法

コンプライアンスとは法令遵守のことですが、法令のみならず社会的モラルや企業倫理等、広い意味でそのルールを守ることに使われています。
過度な時間外労働や職場のいじめ、セクハラやパワハラなど、法令または社会的な規範を大きく逸脱すれば、それは瞬く間に広がり企業の信用は失墜します。
それゆえ、コンプライアンス研修などに取り組んでいる企業も少なくないようです。
そのコンプライアンス研修になぜ、育児介護休業法の各種制度説明がないのか、ということを強く訴えたいわけです。
育児介護休業法でも「不利益取扱いの禁止」があり、
事業主は、育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、所定労働時間の短縮措置等、時間外労働の制限及び深夜業の制限について、その申出をしたこと又は取得等を理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません。
と明文化されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355377.pdf

コンプライアンス対策には
・ルールの整備
・研修の整備
・管理監督の整備
と言われています。
ルールの整備とは、就業規則や行動規範などを策定し、研修の整備でそれを周知徹底し、管理監督の整備として、管理監督する部署または人を養成し、現場を管理、指導することなどがあります。
就業規則や労使協定には育児介護休業法関連の事は必ず明記されますし、労使協定にそれがない場合は、法の適用される雇用者の範囲が著しく広くなるだけで、会社にとって都合がいいかといえば、そうではないと感じます。
コンプライアンスとしての側面から、育児介護休業法をとらえて、その説明をしてもいいのではないでしょうか。

従業員にとっては、仕事と介護の両立研修だろうが、コンプライアンス研修だろうが、管理職研修だろうが、新入社員研修だろうが、新商品サービス説明会でも、なんでもいいのです。育児介護休業法の各種制度説明の機会に触れる事が大事なのです。

正しく説明できますか

ここからは介護休業等に限った話をいたします。
育児介護休業法の介護休業等の各種制度説明を正しくできますか?
「介護休業は通算で93日利用できて、3回にわたって申請することが出来る」ということではありません。
育児休業と違って、介護休業等はどのタイミングで使っていいのか、誰がどのような時に使っていいのかが極めて分かりにくいです。
ですから、介護休業等の各種制度の説明で一番重要なのは5W1Hとその順番です。

・WHY 理由 (労働の免除のための制度) 趣旨や概要から説明します。
・WHO 対象家族 (扶養や同居は関係ない)対象家族を説明します。
・WHENE 立場・事態 (対象家族の状態)どのような状態の時に使えるのか説明します。
具体的に、どのような時にどの制度を使うといいのかを事例をもって説明します。
・HOW  どうする?どうしたい? 
・WTHAT どの制度を
・WHEN  どの程度の日数使うのか
そして、最後に、当社の社内支援制度はイントラネットのどこどこに書いてあって、申請方法は手順です、という説明をします。

こういった、説明ができる人材を作っておくことがコンプライアンス対策にもなります。
育児介護休業法は特定の方のみの制度ではなく、正しく理解していなければ、コンプライアンス違反になりかねない、という認識をもって、早急な周知への取り組みを期待します。

説明に不安のある方は人事部向けの無料研修にご参加下さい

https://wcb-labo.com/lp_lecturer/

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