仕事と介護の両立コラム 在宅勤務と在宅介護
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が延長され、それに伴い、経済界は出勤者の7割削減に努めています。人流の抑制、行動範囲の縮小をすることで感染拡大を防ごうという考えです。その手法としてテレワーク等が急速に普及しました。
テレワークとは何か
テレワークとは「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語で、自宅で仕事をする在宅勤務はテレワークの手法の一つです。
テレワークは在宅勤務の他に、モバイルワーク、ワーケーション、サテライトオフィスなんかがあります。
また、国レベルの課題としては、2006年1月19日に策定された「IT新改革戦略」の元「生涯を通じた豊かな生活 」の実現のために「2010 年までに適正な就業環境の下でのテレワーカーが就業者人口の2割を実現」という計画目標がありました。
総務省:令和元年通信利用動向調査
総務省:令和元年通信利用動向調査」の概要を読むと、実に興味深い報告がありました。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/200529_1.pdf
テレワークの導入状況は約3割で、導入形式は「モバイルワーク」が断トツに多いです。
導入目的は「業務の効率性(生産性)の向上」「勤務者のワークライフバランスの向上」であり、導入していない企業は「テレワークに適した仕事がないから」が7割強の回答でした。
また、個人においてテレワークの活用状況を調べると、在宅勤務が最も多く、ついでモバイルワークという結果です。
国土交通省 都市局都市政策課 都市環境政策室平成29年度テレワーク人口実態調査-調査結果の概要-にも実に興味深い報告があります
https://www.mlit.go.jp/crd/daisei/telework/docs/29telework_jinko_jittai_gaiyo.pdf
テレワークの実施効果の調査によると、プラス効果としては、「自由に使える時間が増えた」 「通勤時間・移動時間が減った」「業務効率が上がった」という回答が多く、一方でマイナス効果としては「仕事時間(残業時間)が増えた」という回答が多かったです。
在宅介護を考える
在宅介護とは、要介護者が自宅または自宅に変わる住まい(サ高住や住宅型有料老人ホーム等)で、介護のプロ等の支援の元、生活を送ることを言います。
要介護者とその他の家族のお住まいの物理的な距離は介護へのかかわり方に大きな影響を及ぼします。
同居や同一敷地内、同一町内等の距離であれば、要介護者の生活に直接的に関わることは容易ですし、電車や飛行機などの交通手段を使わないと物理的に会うことが難しい距離にあれば、要介護者の生活に直接関わることは容易ではないです。
家族介護のケアの内容
埼玉県ケアラー支援計画のためのケアラー実態調査結果(地域包括支援センター)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/187028/0101tyousa.pdfによると、
家事、通院の援助、事務手続き、金銭管理などの回答が多く、
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」(平成24年度厚生労働省委託調査)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/dl/h24_itakuchousa05.pdfによると
入退院の手続き、手助・介護の役割分担やサービス利用等にかかわる調整・手続き、通院同伴が多いことがわかります。
在宅勤務と在宅介護の大きな誤解
在宅介護=家に居る×在宅勤務=家に居る
これを「家にいるから、介護しやすくていいね!」と考えないでください。これは大きな間違いです。何が間違いなのか「いいね!」が間違いです。
介護中の方の困りごとで最も多いのが「精神的負担」です。
その内容はケアしている相手との関係だったり、ご自身の将来不安だったり、自分の時間が拘束される・自由な時間がない事だったり、介護がいつまで続くかわからないというもの立ったりします。
これらの困りごとの原因が同じ空間の中にいる環境で1日中生活をしていたら「介護しやすくていいね!」という状況ではないと思いませんか?
ストレスフルな状態で密室にいるがゆえに、事件事故を誘発してしまう可能性だってゼロではないのです。
テレワークのうちの在宅勤務と在宅介護の関係
これまでの話で在宅勤務が「会社とは離れた場所で働くことのうち、自宅で働くこと」であり、そのマイナス効果として仕事時間が増えた(残業が増えた)という傾向がある事がわかりました。
また、家族介護者の介護への関わりにおいて、物理的に近いと家事をやっていることもありますが、スポット的な通院同伴や事務手続きなどをメインとしている傾向があることがわかります。
在宅介護=家に居る×在宅勤務=家に居る
これが負の相乗効果を出すと、ただでさえ残業になりやすい、だらだらと仕事をしてしまいがちな環境です。
その上、目の前または近所に要介護者がいることで就業時間にも拘わらず、ついつい関ってしまい、就業時間内に仕事が終わらず、要介護者が就寝した夜中に仕事をすることになり、健康被害が出る、という事が容易に想像できます。
つまり、在宅介護と在宅勤務を同時に遂行する場合、健康不安ならびに、犯罪の危険性を労使ともに十分に理解しておかないといけないのです。
新型コロナウィルス感染拡大予防のためのテレワーク等の推奨
テレワークが在宅介護と相性が悪いか、といったら決してそうではありません。
通勤時間がない分または少ない分、体力は温存できるし、通勤時間に使っていた時間を介護に費やしたり、労働時間に費やすことで、短時間勤務等の措置を取らずに済みます。
つまり給与控除がない状態で仕事と介護の両立が実現できます。
大事なことは要介護者の事を極力意識しないで働ける環境を作ることです
テレワークという概念から言えば、例えばサテライトオフィスがあれば、そこを利用するのは有効だと思います。
同居であれば、部屋を分ける事が出来るのであればそれに越したことはありません。
もちろん、要介護者がデイサービスなどを利用してご自宅を不在にしていただくことが可能であれば、なおよいでしょう。
命を守る行動を!
新型コロナウィルス感染拡大予防のための人流抑制で在宅勤務をされている方も少なくないと思います。
場当たり的な措置のため、仕事に集中出来る環境整備が整っていない方も多いでしょう。
この場合はどうか事件事故だけには十分に気を付けてください。
仕事の成果よりも命です。
いまこの状態はニューノーマルではありません。あくまでも対処療法です。この状況がずっと続くわけではありません。
上司に管理部に、同僚に「仕事に集中出来る環境がない」ことを伝えましょう。
週1回でも出社で物理的に距離がとれるのであれば、上司に交渉しましょう。
在宅勤務せざるを得ない状況をケアマネジャーに相談しましょう。「事件事故になることが怖い」と伝えてください。
自費サービスを利用してでも、仕事に集中出来る環境がつくれるならその方がいいと思います。
あれもだめ、これもダメの場合はもぉ仕方がありません。仕事の成果は二の次です!
ケアラーズコンシェルの個別相談やケアコンカフェをご利用ください。
https://carers-concier.net/
命を守る行動をお願いします。
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