TOP > 仕事と介護の両立コラム > ヤングケアラー支援を考える

仕事と介護の両立コラム ヤングケアラー支援を考える

2021.03.30


2020年3月27日、全国初の埼玉県ケアラー支援条例制定され、そして2021年3月9日には全国地区町村初の介護者支援条例が北海道栗山町で制定されました。
いずれも「ケアラー支援」の条例ではありますが、その中で「ヤングケアラー支援」がざわついています。
埼玉県条例の動きと時同じく始まった毎日新聞特別報道部取材班の「ヤングケアラー 幼き介護」は新聞労連の第25回新聞労連ジャーナリズム大賞で優秀賞に選ばれました。そしてついに、厚生労働・文部科学両省は「ヤングケアラー」の支援を検討するプロジェクトチーム(PT)を稼働させるに至っています

ヤングケアラーとは

法律ではありませんが、「家族の介護や世話を担う18歳未満の子ども」という一般的な定義が作られています。
「家族の介護や世話」と言うのは、子どもを基準に考えた時、祖父母の介護、いわゆる高齢者介護もあれば、親御さんのご病気の介護もるし、障害のあるきょうだいの介護も含まれます。
それらの介護に彼らの大事な時間を使うことにより、彼らの発達に著しく影響が出ている、ということがやっと露呈されるに至りました。
勉強に割く時間もない、部活にも参加できない、友達と遊ぶなんてもってのほか、知識もないうえに、他との関りが減ることで、恋愛、結婚、進学、就職、自分の未来を描く機会も能力さえない、そんな現状があります。

和氣が感じたヤングケアラーと社会人ケアラーの違い

私は介護離職防止、仕事と介護の両立という側面から、社会人におけるケアラー支援が専門であり、ヤングケアラー支援については、専門外です。
したがって、ヤングケアラーについて軽々しく書き記すことは控えたいと思います。
ここ、最近のヤングケアラーキャンペーンで、各種メディアをのぞき見して感じたことは
『ヤングケアラーもいずれはヤングではなくなる』ということ
そして、
社会に出たのちにケアラーになった、私との違いは「対象者である要介護者との距離感」と「圧倒的な人生経験の差」です。

ヤングケアラー支援への違和感

厚労省子ども家庭局家庭福祉課虐待防止対策推進室が中心となって、ヤングケアラー」の支援を検討するプロジェクトチーム(PT)が発足されました。資料を拝見する限り、何か悶々とするものが残ります。
このプロジェクトの目的は何なのでしょう。
趣旨には
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000753052.pdf
***************
ヤングケアラーは、年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負うことで、本人の育ちや教育に影響があることから実態の把握及び支援の強化が求められている。
***************
とあります。
支援の強化はわかりますが、支援の目的は何ですか?
埼玉県ケアラー支援条例には以下のようにあります。
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0609/chiikihoukatukea/jourei.html
***************
全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現することを目的とする。
***************
ヤングケアラーにおいても同じだと思います。
ヤングケアラー個人が他の子どもたちと同じように教育を受け、部活ができ、友達と遊び、自分の将来の選択を自由に選べる社会を実現することだと思います。


しかし、このシンプルな目的を役所の計画や施策に落とし込むと
なぜか
おじいちゃんが・・・
おばあちゃんが・・・
弟が・・・
お兄ちゃんが・・・の論点になっていきます。

埼玉県のケアラー支援計画の中の
***************
基本目標1 ケアラーを支えるための広報啓発の推進
ケアラーに関する啓発活動
■県の主な取組・支援
認知症の人、その家族及び認知症介護に携わる介護者等に対して、知識の普及・啓発・研修を実施します。
***************
とあります。
ケアラー支援条例なのに「その家族」という文章にケアラー支援を概念から定着させる難しさが表れていると感じます。
そうなのです。いま日本にはケアラー支援の概念がないんです。

あるのは、
介護は福祉の問題
介護は家族の問題

そこで私が考えるヤングケアラーの課題は
①ヤングケアラーを発生させない社会の仕組みの構築
②ヤングケアラーを探し出す社会の仕組みの構築
③ヤングケアラーに一般の子どもと同じ、教育を受ける、部活をする、友達と遊び、将来を自由に選択できる環境や機会を提供する仕組みの構築

重要なことは「彼らに、選ばせる」という、一見彼らの意思を尊重しているように思える言葉を使わないことでしょう。
彼らには選ぶほどの知識も経験もない、ということまで配慮して欲しい、と強く願います。

そして何より危惧しているのは
ヤングケアラー達の「ヤング」が外れた時です。
いまのままでは、介護者支援の概念もない社会に
一般の知識も教養もないままポイですよ。
ヤングケアラー支援はケアラー支援の中の一つのカテゴリーであることを
どれだけの人がわかっているのか、はなはだ疑問です。

介護離職ゼロをもう一度考え直してください

そもそもヤングケアラーの発生原因は大人ですよ。
何が悪いって、大人が悪いんです。
ケガや病気になってしまった、介護対象者という意味ではありません。
そういったご家庭を見て見ぬふりをしてきた大人が絶対的に悪なのです!

ヤングケアラーたちは大人にSOSを出していますよ。
先生だったり、近所の方だったり。

でも、先生だったり、近所の方はみんな
介護は福祉の問題
介護は家族の問題
と思ってるし
そうやって言い放つから子供である彼らは「そういうもんか・・・」と思ってしまうのです。

あえて大人を擁護するのであれば
たしかに
介護は福祉の問題
介護は家族の問題
これは、偽りのない事実です。

でも、だからといってSOSに対して何もできない、ということはないはずなのです。

そう!
何が欠如しているかといえば
大人たちが「家族介護」を知らないから、何を助言してあげればいいのか、どんな行動してあげたらいいのかがわからないのです。

地域包括支援センターに相談したの?って言えますか?
地域包括支援センターにあなた自身が通報して差し上げることはできますか?
ご飯は食べてるの?
勉強時間は確保できてる?
って、ケアラー目線の声掛けはできますか?

ヤングケアラーのイベントで、ヤングケアラーの方が
就労支援のために、企業に電話営業をしているそうです。
すると、「うちの会社には介護をしている人がいないから」と言われるそうです。

心の中で謝りまくりました。
そんな社会を変えられなくて、本当に申し訳ない!と。
自分が情けなくもなりました。

私も営業の度に心が折れます。知ってます。そんな社会であることは身に染みてわかっています。
その心がボッキボキに折れて徒労感で一杯になる日々を、こんな子どもにまで感じさせているなんて・・・と思ったら、本当に申し訳なく思いました。

介護離職防止および、仕事と介護の両立の取り組みは、家族介護を考えるきっかけになります。
知っていて損はありません。
会社のために、自分のために、同僚のために、友だちのために、地域社会のためになります。

大人として、社会人として、未来をつくる子供たちのためにも、
当社で提供している「介護の初動・準備」の知識ぐらいは身に着けて欲しいと願います。

そして、介護をしていることが当たり前の社会になれば、
「うちの会社には介護をしている人はいないから」という返事ではなく
「いま、採用の予定はありません」という、一般的な対応になるはずなのです。

何かのイベントでヤングケアラーの方が言ってました。
「普通に接して欲しい」と。
私たち大人のケアラーもいいます。「普通に接してください」と。

ヤングケアラーのヤングが外れても、彼らが生きやすい社会とするために、
国策である介護離職ゼロの実現を今一度考えてみてください。

記事一覧

サービス一覧

お気軽にお問い合わせください

03-6869-4240

メールで問い合わせる

ページの先頭へ