仕事と介護の両立コラム しなやかな労働市場とは?企業や人事部は何をすればいいのか?
「しなやかな労働市場」という言葉をご存じでしょうか?令和4年7月1日に発表された『2022年度雇用政策研究会「議論の整理」』に登場した、政府が提唱する、新しい労働市場の形です。
しなやかな労働市場とは?
しなやかな労働市場とは、以下のように定義されています。
「コロナ禍のような不測の事態やグローバル化の更なる進展、急速な技術進歩やデジタル化による産業構造の変化に柔軟に対応でき、かつ回復力を持つ、持続可能な労働市場」
引用:厚生労働省『2022年度雇用政策研究会「議論の整理」』
厚生労働省雇用政策研究会では同資料のキーワードとして「しなやかな労働市場」という言葉を使っています。
同資料においてしなやかな労働市場については『短期的な経済情勢の変化や長期的な産業構造の変化に対して柔軟(フレキシブル)に対応でき、かつ回復力(レジリエンス)を持つ、持続可能(サステイナブル)な労働市場』とも言っています。
要するにコロナ禍の経験を踏まえて、そして変化する労働市場を念頭に置いて、今後目指すべき労働市場の在り方を「しなやかな労働市場」と表現することになったようです。
しなやかな労働市場の構築に必要な仕組み
同資料では、しなやかな労働市場の構築に必要な仕組みとして、次のように記載しています。
〇労働者のワーク・エンゲージメントを高め、労働生産性と企業業績の向上につなげる経済の仕組み
〇多様なチャネルを活用した労働者のキャリア形成と企業の人材育成を促進する仕組み
〇ウェル・ビーイングへの取組が人材確保と労働供給の増加につながる仕組み
〇労働市場の基盤強化と多様性に即したセーフティネットの構築を通じ最適な資源配分を実現する仕組み
引用:厚生労働省『2022年度雇用政策研究会「議論の整理」』
細かな説明は省きますが、デジタル化や人的資本の蓄積と人材育成強化、働き方の柔軟性を求める内容です。雇用問題やコロナの経験を踏まえた、働き方改革などの変化する雇用政策を推進することが明記されています。
これは、仕事と介護の両立にも関係する重要な内容だと考えています。掲げられた仕組みの言葉を深堀しつつ、なぜそう思ったのかを解説します。
ワーク・エンゲージメントとは?
ワーク・エンゲージメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態として、次の3つが必要であると定義されています。
〇仕事から活力を得ていきいきとしている(活力)
〇仕事に誇りとやりがいを感じている(熱意)
〇仕事に熱心に取り組んでいる(没頭)
引用:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」
仕事と介護の両立をしている従業員のワーク・エンゲージメント向上は、当然ながら介護離職防止にも繋がります。
一方で、ワーク・エンゲージメントの向上は同時に介護へのうしろめたさや心苦しさとどのように折り合いをつけていくべきか、の支援も同時に必要であると考えます。
つまり、ワーク・エンゲージメント向上には家庭の事情も少なからずヒアリングできる機会の創出や、話をする・聞くというスキル向上も必要となるでしょう。さらに課題がある従業員への手立てが同時にされることが理想です。
ウェルビーイングとは?
ウェルビーイングとは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念です。
『2022年度雇用政策研究会 「議論の整理」では「就業面からのウェル・ビーイングの向上」について、次のように定義されています。
働き方を労働者が主体的に選択できる環境整備の推進・雇用条件の改善等を通じて、労働者が自ら望む生き方に沿った豊かで健康的な職業人生を送れるようになることにより、自らの権利や自己実現が保障され、働きがいを持ち、身体的、精神的、社会的に良好な状態になること
引用:厚生労働省『2022年度雇用政策研究会「議論の整理」』
ウェルビーイング経営が注目されている背景は、企業と労働者で異なりますが最終目標は同じです。
企業側は人材確保に資するものであり、従業員の側では、魅力的な職場の創造に資するためのものです。つまり、労使ともに良い結果をもたらすことが期待されているためだと考えます。
仕事と介護の両立においては多様な働き方や柔軟な職場対応が求められる一方で、その活用を間違えるとウェルビーイングとは真逆の方向に向かいます。
極端なことを言えば、きわめて不健康で危険な心身状態にいながら生活を送る、という事態になりかねない諸刃の剣なのです。
労働者が主体的に選択できる環境の整備と同時に、それが本人の望む生き方に沿っているのか否か、アドバイスが出来る環境も同時に整えるべきではないかと思います。
働き続けたいと願う労働者のために
介護を理由に離職した労働者は、介護離職したくてするわけではありません。仕事と介護の両立が出来れば理想です。
しかし、それが極めて難しく、辛く、厳しいという現実もあります。
・介護のことが分からない
・要介護者の想いもある
・自分の想いを優先していいのか
・職場に迷惑が掛かる
・給与控除があるから休めない……
上にあげたのはほんの一例にすぎませんが、とにかく仕事と介護の両立はあらゆる困難と共にあると言っても過言ではありません。
日本国としては労働人口減少の中、限られた人材で経済を支えていかなければならない状況にあります。一方の働きたいと願う労働者に対しては、彼らの課題をいち早く発見・解決し、モチベーション高く経済活動に勤しんでもらうことを望んでいます。
しかし、残念なことに、仕事と介護の両立支援はまだまだ取り組みが加速されていないと感じるシーンが多いのが現状です。
いまこそ経営者は働く介護者の声に耳を傾け、彼らが何を望み何に不安を抱えて何を困難としているのかを知らなければなりません。
そして、今取り組んでいる企業の思惑と労働者の想いに隔たりがあるのでれば、どこに折り合いを付けられるところがあるのかなど、お互いがお互いを理解する努力が必要なのではないかと考えています。
弊社では、従業員の本音を引き出す「仕事と介護の両立実態調査」のサービスをはじめました。また働く介護者の悩みを伺い、その困難の原因が職場に有る場合は、本人の許可のもと所属企業や部署へフィードバックし、職場改善に努めてもらう仕組みのある介護相談サービスも行っております。
しなやかな労働市場の構築には、他社との連携は必須です。弊社のサービスは貴社の経営戦略の一助になること間違いなしです。ワーク・エンゲージメントの向上やウェルビーイング経営の推進にもなるでしょう。ご興味のある企業様はぜひお問合せください。
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