仕事と介護の両立コラム 仕事と介護の両立が終わってもなお続く介護離職のリスク
2014年6月29日、渋谷区の東京ウィメンズプラザで行われた「アラジンフォーラム2014」で初めて登壇しました。
自分の経験値と少しのケア仲間の経験値だけで語っている恐ろしさはあれど、当時から私は「介護と仕事の両立で一番大変なのは初動」と言っています。
(当時の映像は↓よりご覧いただけます)
https://youtu.be/rOgTRFZXtgI?feature=shared
これは今も変わりません。
介護は初動
2014年に仕事と介護の両立支援の事業を始めたころから、「介護は情報戦」「介護は初動」と言い続けていました。
私の肌感ですが「地域包括支援センター」の認知度は上がってきているとは言え、まだ知らない方のほうが多いです。
介護休業は介護するための期間と思っている方も、まだまだ多くいらっしゃいます。
「介護保険」が社会保険のひとつであることなどは、露とも思わず、介護費用に対する助成を求める傾向も10年前と変わりません。
研修や講演会に行くと「もっと早く聞きたかった」と言う声が今でも届きます。
しかし、状況は少しずつ変わってきていることも事実です。
この度の育児・介護休業法の改正では、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の周知強化を目的とした個別周知や意向確認、早期の情報提供を事業主に義務化しました。
育児・介護休業法の改正なので、介護保険の説明等においては努力義務ですが、10年前に比べたら世の中の変化を感じます。
雇用の長期化に伴う介護離職の可能性
高年齢者雇用安定法による雇用の長期化が2025年4月から本格スタートします。具体的には以下のとおりです。
①65歳までの定年引き上げ
②定年制の廃止
③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
雇用の長期化に伴う介護離職防止として「親の介護に直面する人が増えるだろう」と想定されることから、
そのための対策として本腰を入れざるを得ないのが「介護は初動」です。
しかし、雇用の長期化に伴い、一人の従業員に対し「複数回の介護に直面する可能性」を加味する時代がやってきます。
介護が離職のきっかけになる理由
介護離職の理由に「介護は離職のきっかけになった」と言う方も少なくありません。「介護は離職のきっかけ」を深堀すると、次のような理由が考えられます。
●会社や職場、仕事に何らかのストレスがあったため退職のタイミングとして介護を理由としたパターン
●「介護」と言う事象をきっかけに、自分の人生を顧みてキャリアチェンジしたパターン
後者においては介護者の自覚として「介護離職」と思っていない場合もあります。
「介護はプロに任せればいい」という勘違い
仕事と介護の両立において「介護はプロに任せればいい」という考え方や制度だけでなんとかなることではありません。
プロには補えないこともあれば、いつ何があるかわからないストレスもあります。
携帯電話の着信に「ケアマネジャー」や「●●施設」「●●病院」と表示されると、ドキッとするのは、家族の介護を経験した者であれば理解してもらえることではないでしょうか。
プロに任せていても解決できないことがあるのです。
プロに任せれば介護離職ががくなるわけではないのです。
思ったよりもかかる気力・体力・お金
働きながらの介護には思いのほか、気力・体力・お金・時間という「コスト」負担がかかります。
私も自分の過去を振りかえれば「あれは30代だったからできた」と思うことは多々あるのが事実です。
また介護対象者がひとりだけだったから乗り越えられたことも、複数名の同時介護や五月雨式介護に直面したら気力や体力に負担が多くなることも容易に想像できます。
介護対象者は高齢者だけではなく、全世代です。介護者の側から見れば、親だけではなく、きょうだいや子ども、配偶者の介護もあります。
雇用の長期化は雇用が長期化すれば、その分、介護の直面する機会は増えていくのです。
1回目の介護に直面した時に乗り越えられたことも
年を重ねた時の2回目の仕事と介護の両立という生活は、想いのほか体力を奪っていくこともあります。
介護が終わってもなお続く介護離職のリスク
介護離職とは介護を理由に今まで勤めていた会社を退職し、家族の介護に専念することです。
介護離職は介護が始まってすぐに起きる場合もあれば、3年後に介護離職する人もいます。
介護が終わったからといって、天涯孤独ではない限り介護離職のリスクがなくなるわけではないでしょう。また、介護離職とは言わないかもしれませんが、仕事と介護の両立に燃え尽きて辞める方もいるかもしれません。
皆さんの介護離職防止並びに仕事と介護の両立、両立支援の概念を一度みなおしてみてください。
介護はプロに任せる
介護リテラシーを向上させる
介護はひとりで抱えない
大事なことではありますが「介護離職させない」ことが目的になっていませんか?
介護離職は企業における両立支援の失敗でもないし、完全になくすことはできません。
企業が目指すべきは従業員に選ばれる会社、個人が目指すべきは介護不幸ゼロではないでしょうか。
4月以降の介護離職防止対策並びに仕事と介護の両立支援策において、参考にしていただければ幸いです。
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