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仕事と介護の両立コラム 介護離職はいつ起きる?|対話や会話で介護離職を防止する

2025.03.04


介護離職とは家族の介護を理由にいままで勤めていた会社を退職し、家族の介護に専念することを言います。
企業側が「ずっと働いてくれるだろう」と考えていた人であっても、介護を理由に離職を選択する人も少なくないのが現実です。

しかし、介護離職を防止する手立てがないわけではありません。
今回は介護離職が起こるタイミングと、防止する方法を紹介します。100%効果があるわけではないものの、突然の介護離職に備えて、実践してほしいと思っています。

介護は突然やってくる

家族の介護は突然始まります。

病気やケガで文字どおり「突然」始まることもあれば、加齢により身体機能等の衰弱で、気づいたときには他人様のお力添えがあったほうが生活がしやすい状態になっていた、と言う「突然」もあります。

生まれたから介護が必要な状態の方もおり、それもある意味では「突然」でもあるでしょう。

そして、そんな「突然」はじまる家族の介護は、就業している家族に仕事と介護の両立を迫るのです。
就学中の若年層の家族にとっては、学業と介護の両立という生活が「突然」始まることもあります。なおこの若年層の家族介護者をヤングケアラーとも言います。

介護は、予測してどうにかなる問題ではありません。突然やってくるものであるため、本当にどうしようもないのです。

「家族でなんとかしてください」と言われる、介護の初動

そんな風に「突然はじまる介護」。家族の一大事です!何とかしなくてはいけません。
何とかしなくてはいけないことはわかっていますが、何をどうしたらいいのかが分からないという人もいるでしょう。

「介護はプロに任せましょう」と言いますが、プロに何をどこまで任せていいものなのか、手続きは?お金は?明日から来てくれるの?とわからないことだらけです。

お子様の障がい介護の多くは、初動期は病院や福祉が家族である親に寄り添ってくれることが多くあります。
しかし、対象者が大人になると病院も役所も「家族でなんとかしてください」と言わんばかりです。
「認知症の初期状態ですね。どうするかは、ご家族で話し合ってください」「麻痺がありますが、どうするかはご家族で話し合ってください」という感じです。

「どうするか」って何??ってことなのです。
突然家族の介護が始まってドタバタしているのに、「家族でどうにかしてください」と言われたら、介護者はいよいよ選択に迷ってしまうでしょう。

介護者の不幸は選択肢がみえなくなること

私は初めての登壇から10年以上、「介護者の不幸は選択肢が見えなくなることです」と同じことを言い続けています。
当時は、「選択肢がないこと」と発信していましたが、お伝えしたいことの本質は変わっていません。

介護者は、わからないことがわからないのです。選択肢を探すこともできなければ、複数の選択肢があったとしても、選択の基準もわかりません。
つまり、身動きが取れないのです。

そんな時に「家族でなんとかしてください」「どうするか話し合ってください」と言われてもどうしようもないと思いませんか?しかし、これが現実なのです。

病院も困ってしまう「基準」

去年、久々に「わからないことが、わからない」局面に出会いました。母がコロナ感染したのです。
病院を受診するべきかどうかもわからず、病院に電話したら「検査するかしないかもわからないし、お薬がでるかどうかもわかりませんが、どうしますか?」と言われたのです。

「どうするも、こうするも、基準が分からないので、基準をしえていただけますか?」と質問したら、病院の事務員さんは困っていました。
きっと、そんな風に返されたことが無かったのでしょう。

結局、病院に行くか行かないか、の選択肢しか見いだせず、最大公約数的に病院に行く選択をしました。

私は経験値があるので「基準が分かりません」と病院に質問することができましたが、突然「介護」をという現実を突きつけられた時、「行動の判断基準」「選択の判断基準」などと言う思考にいたる人は・・・いるのでしょうか。
「わからないことが、わからない」と言う状態は状況を抱え込まずにはいられなくなるのです。

介護離職は介護開始直後に起きる

厚生労働省委託調査:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握 のための調査研究事業報告書労働者アンケート調査結果」によると、「手助・介護」を始めてから「手助・介護」のために仕事を辞めた時までの期間で、1カ月未満で辞めている人が12.1%います。
つまり、介護が始まってすぐにやめているのです。

介護が始まると、仕事と介護の両立という生活が始まります。
しかし、その仕事と介護の両立という生活をせずに、退職している方が約1割いることに注目すべきなのです。

この事実から介護に直面した時に「選択肢」が「就業継続する」OR「辞める」しか見えていないのではないかと、考えることができます。

就業継続するとどういう生活が始まるのか、辞める場合は明日からどういう生活がはじまるのか……。
わからないことが、わからないまま「家族でなんとかしなくては」と勢いで辞めてしまっているのではないでしょうか。

コミュニケーションは選択肢を導き出す

「当事者意識を持ちましょう、介護リテラシーを向上させましょう」などと、ふわっとしたことを言う専門家がいます。
無駄とは言いませんが、人が変わる・社会が変わるのを待っていられない人がいるのです。

介護離職防止対策の対象者は「介護に直面している人」だけではありません。先の調査で分かるように、介護が始まってすぐに辞める人がいることを考えたら、就業している間は常に介護離職のリスクがあるということが分かると思います。

もっといえば、介護離職防止は「離職防止」対策なのです。

離職を防止するには何が必要なのか「コミュニケーション」「面談」です。社会が変わるまではコミュニケーションの中から選択肢を探してほしいし、コミュニケーションの中で選択肢の提示をしてほしいとおもっています。

普段からコミュニケーションできる環境を

もっと職場で家族やプライベートな会話を楽しみませんか?自分以外の人の人生や生活を見聞きすることは、己の知見を豊かにすることに相違ありません。

普段から家族のことを言えるコミュニケーションをとってください。家族や大事な人の一大事のときに「一大事だ!」と言えれば、どうにかなるものです。

先人は「三人寄よれば文殊の知恵」とはまさにそのとおりです。居心地の良い職場であれば介護離職はおのずと減ります。介護離職防止のためのみならず、離職防止、定着の観点からもコミュニケーションが取れるような雇用環境整備に注力してみてください。

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