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仕事と介護の両立コラム 「隠れ介護者」を発掘する方法|孤立させる前に報告できる環境を

2023.05.04

「隠れ介護者」とは在籍している会社や自分の所属するコミュニティに、家族や大事な人が要介護状態にあることを告げてない介護者(ケアラー)のことです。
企業側からしたら「会社に家族介護のことを報告していないケアラー」を指します。

しかし、隠れ介護者は一人で悩み、苦しんでいる人が多数派だと思います。なぜそのような状況になるのか、本コラムで詳しく見ていきましょう。

育児は言いやすいけど、介護は言いにくいのでは

仕事と介護の両立施策担当者と話をすると、こんな声を耳にします。

●育児は言いやすいけど、介護は言いにくいのではないかしら?
●育児は終わりが見えるけど、介護は終わりが見えにくいから言いにくいのでは?
●「介護していますか?」って聞いていいのでしょうか?

少なくとも、そのような考え方をしている介護施策担当者には家族の介護をしていることを言わないと思います。介護をしながら働いている従業員には、この担当者に「家族介護のことを言っても仕方ないだろうな」って感じ取れるからです。

なぜ、感じ取れるのでしょうか。
実際に、介護施策担当者も介護をしていることを報告して欲しい理由がわかってないからだと思います。
家族の介護に関わっていることを報告されても、何を対応したらいいのかわからないから困っているのが本音。それが言動や行動に表れているのだと考えています。

隠れ介護をしない方がいい理由

隠れ介護をせず、企業として介護をしていることを報告して欲しい理由は何なのでしょうか。大きく分けて次の3つが主な理由だと考えています。

1)情報提供ができる
2)職場協力ができる
3)人材戦略に配慮できる

1)情報提供ができる

家族介護が始まったことを報告してもらった時に、介護施策担当者から改めて3つの情報提供をすべきなのです。内容は次の通りです。

●地域包括支援センターには行かれましたか?
●会社の支援制度(育児介護休業法や福利厚生)をご存知ですか?
●仕事に集中できる環境を作ってください

この3つです。

介護をするにあたって必要な情報です。介護者にこの3つの情報を提供することで、隠れ介護者の仕事と介護の両立が実現できる可能性が高くなります。

隠れ介護者に対してだけではなく、介護者がいる職場に対しても同様の情報提供ができます。隠れ介護をしてしまうとこれらの情報が得られないままになってしまい、ますます報告できなくなってしまうのです。

2)職場協力ができる

「私用で残業ができません」よりも「家族の介護のため残業ができません」の方が上司や同僚の理解は得られやすいです。「来週、有給休暇1日だけください」よりも「来週、介護の役所手続きがあるので1日だけ介護休暇ください」の方が、休みは取りやすいです。

「家族の介護」が理由で協力してほしいという目的が明確であるため、職場としても協力しやすくなるでしょう。漠然と休みが欲しいと伝えるのではなく、その具体的な理由として介護を挙げるだけで理解を得られやすくなります。

3)人材戦略に配慮できる

隠れ介護を避けると、職場や企業の人材戦略に配慮できるメリットがあります。

転居を伴う異動、つまり転勤などを命じる際に、内示が出てから「実は、家族の介護があるので転居はちょっと・・・」と言われたらどうでしょう?会社としては介護に直面している従業員へは転居を伴う異動について配慮するように努力義務が課せられている手前、内示を取り消しにせざるを得ないこともあります。

このようなことから、介護に直面した従業員は、上司または人事部等に家族の介護に関わっていることを伝えておいた方が結果として働きやすくなるのです。

総括すると、隠れ介護をしない方がいい理由は「働きやすくなる」から、そして「働かせやすくなる」からです。

こういった説明をせずに「介護に直面していることを報告して下さい」だけでは、丁寧さに欠けます。丁寧な周知徹底をしなければ隠れ介護者を発掘することはできません。そのためにも、介護施策担当者には「隠れ介護者」に対する深い理解を求めます。

隠れ介護者の種類

隠れ介護者にはいくつかのパターンがあります。

1)そもそも論型
2)環境起因型
3)本人起因型

そもそも論型とは

・自分が介護に直面していることに気づいていないから、報告できないというパターン
・自分が介護に直面していることに気づいているが、企業に家族介護の報告をする概念がないパターン

環境起因型とは

・自分が介護に直面していることに気付いているけど、職場でいじめにあうかもしれない、評価が下がるかもしれない、プロジェクトから外されてしまうかもしれない、という思い込みで企業に家族介護の報告をしていないパターン
・介護に直面している人が報告をしているにも関わらず、報告された側が対応せずに結果として隠れ介護者と同じ状態になっているパターン
・介護に直面していることを報告されても困るだろうな、と介護に直面している従業員が気を使って報告しないパターン

本人起因型とは

・ただ単に「言いたくない」というパターン
・「報告」と「相談」をはき違えていて「相談することはない」というパターン
・心理的に「報告できない」というパターン

隠れ介護者を発掘する

隠れ介護者のパターンがわかれば、あとは対策をするだけです。

注意したいのは、隠れ介護者を発掘することが目的ではないことです。隠れ介護者を発掘することは、仕事と介護の両立支援における一つの手段であり、目的ではありません。
それゆえ「言いたくない」なら無理に言わせる必要はないことを覚えておく必要があるでしょう。

ただし、報告して欲しい理由は周知徹底すべきです。先に述べたように、その理由は「介護に直面した従業員が働きやすくなる」からに他なりません。
周知徹底とは「知らなかった」を無くすことです。選択肢は並べてあげましょう。不安を取り除いてあげてください。

あとは、本人が選択すればいいのです。

つまり隠れ介護者における「本人起因型」の「言いたくない」を除いて、その他の隠れ介護者は対応次第は発掘できるということです。

介護施策担当者として取るべき対応

企業としては

●ため息をついて仕事をしている従業員
●仕事に集中できていない従業員
●何かと職場でトラブルを起こしてしまう従業員やその職場

そういった、企業活動において、マイナス要因になりうる課題をいち早く発見し、解決していく必要があります。

そのため息の原因が仕事と介護の両立かもしれないし、失恋かもしれない。
ため息の原因を追究していったら、大事な家族が要介護状態にあることにショックを受けているのかもしれない。

介護に直面している従業員が報告に来たら「介護の対応はできないし・・・」ではありません。
会社としてすべき対応は「地域包括支援センターには相談に行かれましたか?」という一言が言えるかどうかだけです。

「仕事に集中できる環境を作ってもらえますか?そのための情報提供はできる限り協力します。必要であれば介護休暇や短時間勤務を活用してください。」と言えればいいのです。

仕事と介護の両立支援とは、労働の義務を遂行できるように環境整備に力を貸すことです。
環境整備とは介護に直面した従業員本人に関わる次の3つを指します。

●従業員自身の心身の環境整備
●ご家庭の環境整備
●職場の環境整備

会社がケアプランの相談に対応する必要はないのです。
介護は情報戦です。情報提供は「力を貸すこと」に値します。

仕事と介護の両立支援を「ご家庭のことだから、立ち入りにくい」という方もいらっしゃいますが、ご家庭のことに立ち入るのではありません。従業員の「キャリア支援」をしているだけです。

キャリア支援として、話を聞いてみていただければ、働く介護者も気兼ねなく話せると思います。

そもそも、介護者は「話を聞いてほしい」ニーズがあります。
従業員との面談の機会を積極的に作ることがおすすめです。
外部のカウンセラーを使って、面談の機会を作ることも一つの方法です。外部のカウンセラーだからこそ、気兼ねなく話せる、という場合もあります。

弊社は「外部総合相談窓口」というサービスがございます。
メンタルヘルス・ハラスメント・内部通報や介護相談に対応していますが、キャリア面談の立ち合いもお引き受けできます。詳細については、ぜひお問合せ下さい。

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