仕事と介護の両立コラム 社内ケアラーコミュニティ設立のススメ
総務省が発表した令和4年就業構造基本調査によると、15歳以上の有業者に対する50歳から64歳までの割合は約30%です。50歳以上とすれば43%です。世の中で働いている人の半数近くが50歳以上という計算です。
一方で、15歳以上の有業者総数に対する50歳から64歳までの働く介護者の割合は10%。あなたの会社の50代以上の社員の10人にひとりは介護をしながら働いている可能性がある、ということがわかります。
この数字を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、人事担当の方は介護者のための仕組みを整えておくことをお勧めします。
それこそが「社内ケアラーコミュニティ」です。
働く介護者の実数把握
では、実際に貴社で働く労働者のうち、介護者はどのぐらいいるのでしょうか。
社員構成に対して就業構造基本調査の働く介護者割合からおおよその検討を付けることはできますが、
仕事と介護の両立支援においては、実態把握は必須と考えてください。
弊社では実態調査と実態把握は別物としてお伝えしております。
実態調査とは「調査」であるため、目的とそれに合わせた手段を講じて行うことです。
具体的には、仕事と介護の両立に対するニーズ調査や、介護施策の効果測定、および今後の介護施策の立案のために行います。
一方、実態把握とは、絶賛働きながら介護している従業員は誰なのか、を調べてしかるべき部署で共有することです。
年に1回のキャリア面談や身上調査、上長面談や評価面談などの機会を利用して、最低でも年に1回は情報更新をしてください。
実態把握は人事戦略にとっても重要な情報なので、未実施の企業様におかれましては、今年から実施することをお勧めします。
介護に直面している従業員が正直に報告してくれるかどうかは二の次の話です。
当然、正直に報告して欲しい理由は報告しやすい状況を作ることは大事です。
まずは企業が介護者に対して相談の門戸を開いている事実を知らせることから始めましょう。
では、実態把握をした結果、働く介護者は貴社にどのぐらいいるのでしょうか。
働く介護者の不安・負担
ケアラー全般に言えることですが、ケアラーの一番の悩みは「心身の健康」です。特に精神的な負担や不安を口にする方は多くいます。
●いつまで続くかわからない家族介護と自分の将来への不安
●いつまで続くかわからない家族介護のお金への不安
●このまま仕事が続けられるのか、という不安
具体的な困難だけではなく、言語化できない思いだったり、やるせなさだったり、原因が不明瞭な憎しみ苦しみ、モヤモヤを抱えている方は少なくありません。
そういったことを吐き出す先がないことが、さらに精神的負担を助長させているように思います。
そのため、仕事と介護の両立支援の一つとして、介護相談窓口やメンタル相談窓口を社内外に設ける企業も増えてきたように感じます。
いちケアラーとしては、とてもありがたいことであるし、嬉しい制度です。
しかし、相談窓口の利用率は低いという声を聴きます。
利用率が低いと、経営的な観点から、その支援対策の必要性を疑問視してしまうのも当然です。
働く介護者は年中悩んでいるわけではないので、頻繁に相談があるわけではありません。
しかし、相談窓口が必要ないわけではないこともご理解頂きたいところです。
介護相談窓口の利用率が低い理由
社内介護者がまだそんなには多くない、介護相談窓口の利用率が低い、でも仕事と介護の両立研修を実施すると参加者は意外に多い…。
そんな企業様には「社内ケアラーコミュニティ」がお勧めです。
ケアラーネットワークの構築とは違います。社内ケアラーコミュニティはいわゆる「社内介護者の会」と捉えてください。
ケアラーコミュニティは人を集めて、場を作るだけなので、手軽に始めることができます。
社内ケアラーコミュニティは介護に直面している従業員、介護に不安を抱えている従業員、そして企業(人事部)の3者にとって、それぞれメリットがあります。
★介護に直面している従業員のメリット
「相談」の場ではないので、気軽にいまの状況を話せる
話すことで、モヤモヤが明確になることがある
他の人の事例が参考になる、情報収集になる
困った時に教えてもらえるネットワークができる
社内で仕事と介護の両立を頑張ってる仲間がいることで勇気をもらえる など
★介護に不安を抱えている従業員のメリット
「いざ」という時のための情報収集ができる
「いざ、その時」に頼れる先輩たちがいる
仕事と介護の両立を目の当たりにすることで勇気が持てる など
★企業(人事部)にとってのメリット
介護に直面している従業員がイキイキ働けるようになる
介護離職防止になる
仕事と介護の両立支援の対策がとりやすくなる
各職場の仕事と介護の両立支援の状況がわかる など
そしてもうひとつ、ケアラーコミュニティの運営において肝になることが、会の運営です。
●開催頻度(毎月開催、年に1回開催など)
●開催手法(オンライン、集合式、ハイブリッド)
●開催時間(ランチ会、就業時間後、朝会)
●司会役や内容、相談対応、情報提供など
運営が上手くできないと、せっかく開催したのに人が集まらない、内容がマンネリ化して参加者が減る、結果、開催を見送り、自然消滅する、という流れはよくあることです。
ケアラーコミュニティは始めるのは比較的安易にできるのですが、続けることが難しいというデメリットがあることは否めません。
そこで弊社では、この度「社内ケアラーコミュニティ運営サポート」というサービスを展開することにいたしました。
今までも多くの企業からケアラーコミュニティのファシリテーターとしてお声掛けいただくことがあったのですが、しっかりとした形でお客様に提供させていただくことになった次第です。
弊社には、ケアラーコミュニティを運営してきた10年の歴史がございます。
2013年11月に介護者の会の運営からスタートした会社であり、弊社の介護者の会「働く介護者おひとり様介護ミーティング」は今年の11月で10周年を迎えます。
継続が難しいとされるケアラーコミュニティを10年運営してきた実績が信頼の証です。
また、弊社はケアラー支援団体でもあります。
ケアラーコミュニティの場で困りごとがあれば、解決に勤しむことができますし、個別相談として対応することもできます。
年間契約の介護相談窓口とは違い、人事部が対応しきれない介護相談など、都度の対応も可能です。
これも弊社がケアラー支援事業者であるが故の強みです。
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