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仕事と介護の両立コラム キャリア支援の一環としての仕事と介護の両立支援と位置づけ

2025.12.31


企業において、「キャリア支援」と聞くと、どうしても「シニア社員向け研修」「ライフプラン研修」「キャリアの棚卸」といった場面をイメージしがちです。
もちろんそれらも重要ですが、私はキャリア支援とは「自分の人生をどのように生きるかを考える力を育てること」だと思っています。

「仕事と介護の両立」は長いキャリア=人生の内の一幕です。
その一幕の人生を暗黒ではなく、人生の彩としてとらえるための考え方を解説します。

仕事と介護の両立支援はキャリアを続けること

2016年の「介護離職ゼロ」から10年がたち、近年では「仕事と介護の両立支援はキャリア継続の支援である」という考え方も浸透し始めています。介護に専念するのではなく、仕事に集中しながら必要に応じて介護に関わり、キャリアの継続を図る、ということです。

しかし現場を見ると、仕事と介護の両立支援といえば、まだまだ制度説明や情報提供にとどまっているケースが多いのが実情。キャリア支援として、キャリア形成やキャリアデザインの一環として仕事と介護の両立支援を提供している企業は少ないのが現実です。

つまり、研修をはじめとする、支援の手段において「キャリア支援」と位置付けていなければ、従業員には「仕事と介護の両立支援がキャリア支援である」ことはわかりにくいように思います。

「〜しなければならない」に押し流される社員たち

介護が始まると、多くの介護者は次のような思考になる傾向があります。

・病院に連れて行かなければならない
・様子を見に行かなければならない
・家族で意見をまとめなければならない
・介護サービスを使わなければならない

日常が「〜しなければならない」に塗りつぶされて行くのです。

また「あなたはどうしたい?」と尋ねても
「親が介護状態だから~をしたい」
「子どもが介護状態だから~しかできない」
「配偶者が介護状態だから~してあげたい」

と、介護対象者を中心とした思考になりがちです。言い換えれば、「私は●●がしたい」「自分のキャリアをどう継続したいのか」という「自分」を軸とした物言いを控えるようになります。

控えるだけならいいのですが、行動に関しても同様です。自分のことは二の次三の次となり、自分のことを考える時間が取れなくなり、結果的に、目の前の仕事と介護の両立の生活に疲弊してしまいかねません。

気持ちと状況を言語化する

Will自分は何がしたいのか
Can自分は何ができるのか
Must会社や社会から自分は何を求められているのか

これはキャリア支援のフレームワークとして有名です。自分に矢印を向ける思考回路のトレーニングとしても使われます。

このトレーニングをしたことのある人とて、家族の介護に直面すると、「自分はどうしたいのか」をないがしろにしがちです。それは仕事と介護の両立は自分の人生にとっての一大事であることはわかっていても、それとの本質的な向き合い方を教わっていないからです。

仕事と介護の両立支援で発せられる言葉の多くは「介護はプロに任せましょう」「自分の人生を大事にしましょう」「介護をひとりで抱えないようにしましょう」です。
そして

・介護保険制度の知識
・介護サービスの利用方法
・育児・介護休業法の活用方法
・介護経験者の仕事と介護の両立事例の共有

等の情報提供がされます。

もちろん、これらは重要です。ですが、あくまで「道具(ツール)」でしかありません。
仕事と介護の両立のためのツールであることがうまく伝わっていないと、「仕事と介護の両立とはこれらのツールを使うこと」と理解されてしまうのです。

それゆえ「これでは足りない」「これは我が家には適していない」「違うツールはないか」とツール探しの闇に飲み込まれる方がいらっしゃるのです。

仕事と介護の両立支援の情報提供がされていても、与えられた目標のために動いていては場当たり的な対応になってしまうのです。本人が「自分で選び取っている感覚」を失ってしまえば、負担感や疲労感は減らないことを理解していただく必要があるでしょう。

・「介護をプロに任せる」ことをあなたはどう考えるのか
・「自分の人生を大事にする」ということをあなたはどう理解したのか
・「介護をひとりで抱えないようにしましょう」について、あなたはどう感じたのか

与えられた言葉に対して、自分なりに解釈し、行動に落とし込まない限り、仕事と介護の両立という生活はあなたにとっていつまでも苦行でしかありません。

仕事と介護の両立支援とは本来、社員一人ひとりが自分の人生やキャリアに向き合い、「どう生きていきたいのか」を考えるプロセスを支援することではないでしょうか。

「あなたはどう生きたいのか」
「何を大切にしたいのか」

この言語化を支援して欲しいのです。
そのうえで、

・何がつらいのか
・何が不安なのか
・何を守りたいのか
・何が限界なのか

気持ちの言語化ができれば、課題整理も課題解決も意思をもって取り組むことができます。

自分に向き合う訓練を

今までのような、介護制度の説明会や遠距離介護の工夫、お金の話や施設選びのコツという情報提供も大事です。しかし、それよりも「自分の人生とキャリアに向き合う機会」を、キャリア研修として提供してほしいと思います。自分に矢印を向ける訓練をして欲しい、自分の気持ちを言語化する訓練をして欲しいのです。

・自分はどう生きたいのか
・何をすることがうれしいのか
・何をすることが悲しいのか
・好きなこと、得意なことは何か
・何を守り、何を手放すのか
・何を成し遂げないのか

こうした対話の機会を持つことで、社員は主体的にキャリアを選び取る感覚を取り戻せるでしょう。それこそが、介護離職防止やエンゲージメント向上につながる本当の仕事と介護の両立支援なのです。

仕事と介護の両立は「前向きなテーマ」です。仕事と介護の両立支援は、決して「困った人への救済措置」ではありません。社員一人ひとりが主体的に自分の人生をデザインするためのキャリア支援です。

企業がこの視点を持てば、ダイバーシティ経営の推進や介護離職防止、生産性向上、エンゲージメント強化、働きやすい職場づくり——すべてが一本の線でつながっていきます。

ケアラーズ・コンシェルのススメ

弊社が運営しているケアラーズ・コンシェルでは、「自分に向き合う時間を作れない人」「自分に向き合う方法を知らない人」が、ログインするだけで、内省することができる仕組みを設けました。

「小学校の時に好きだった給食は何?」
「高校生の時から大事に使っているものはある?」など

これらの質問をされたら、一瞬振り返りませんか?自分の過去を。
自分で自分に問いかける練習をすることで、自分を語る練習をすることで「あなたはどうしたい?」と聞かれたときに、自分の心の声を言語化しやすくなります。

これはスキルです。トレーニングで上達します。ぜひ、ご活用ください。

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