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仕事と介護の両立コラム 突発事態に備えよう|介護休暇の使い方と今からできる備え

2024.09.02


2025年4月1日より、企業には介護休業やその他の介護両立支援制度の周知義務が課せられます。その際には、介護休業や介護休暇、その他所定外労働の制限等の各概要説明並びに趣旨を、従業員に対して説明しなければなりません。今回は介護休暇の利用イメージの共有と備えについてご紹介します

介護休業制度等の趣旨

介護休業制度等においては、厚生労働省の第70回労働政策審議会雇用環境・均等分科会の資料3-1告示案要綱に以下のように明記されています。
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介護休業に関する制度は、要介護状態にある対象家族の介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するものと位置付けられている。
介護休暇に関する制度は、介護保険の手続や要介護状態にある対象家族の通院の付き添いなど、日常的な介護のニーズにスポット的に利用するために取得するものと位置付けられている。
介護のための所定労働時間の短縮等の措置その他の仕事と介護の両立のための柔軟な働き方に関する制度及び措置は、日常的な介護のニーズに定期的に対応するために利用するものと位置付けられている。
(引用:第70回労働政策審議会雇用環境・均等分科会)
介護休業とは、仕事に集中出来る介護体制を創るための、一定期間のまとまった休みの制度で、介護休業期間中の労務提供義務は消滅します。これに伴い、介護休業は利用開始希望日の2週間以上前に申し出ることが規程されています。つまり、介護体制を作る前には、作り始める2週間前から申し出てくださいという意味です。
一方、介護休暇は直接的な介護も含む介護やお世話、通院同伴や役所手続きにスポット的に使う休みの制度です。事故や急病などの突発事態も想定し、当日の電話等による口頭での申し出も可能としています。
また、以下の措置は、定期的に直接的な介護も含むお世話に係るために一定期間の働き方を変えるための制度です。
●所定外労働の制限
●時間外労働の制限
●深夜業の制限
●所定労働時間の短縮等の措置
ただし、所定労働時間の短縮等の措置においては、3年間の間に2回までの利用という条件が付いています。介護期間中のいつに使うかが肝になる制度です。
上記の内容を、企業は従業員に対して周知する義務が発生します。周知の義務化自体は2025年4月ですが、今からその準備をしておく必要があるでしょう。

突発事態における介護休暇のスポット利用になる例・ならない例

突発事態では、介護休暇のスポット利用になる例とならない例があります。
ポイントは、2週間以上の常時介護が必要か否かです。それぞれどのような例なのか、私自身の経験談をもとにお話します。

介護休暇のスポット使いの例

介護休暇のスポットでの使い方を見てみましょう。
私の母は要介護5で、ADL(日常生活動作)全てにおいて身体介護が必要な状態です。つまり、ひとりでは生活が出来ない状態です。
寝たきりではありませんが、起き上がるのに補助が必要で、杖も歩行器も宅内では使いませんが、歩行の補助をしないとひとりでは歩けません。
もちろん食事を作ることもできないし、買い物にも行けません。
排泄は紙パンツをはいています。トイレに誘導しても、パンツを下すことはできない、という状態です。

そんな母が今年の2月にコロナに感染しました。
その日は、母をショートステイに送り出してから、私は出社しました。電車の中で、ショートステイの事業者から電話が入りました。
すぐに電車を降りて、電話に出たところ「ご利用者様がコロナ陽性なので、いまからご自宅に送ります」とのことでした。
今すぐに自宅に戻ってきてもらっても、誰もいないので、私は急いで帰宅する旨を告げて、その日はそれ以降、仕事はお休みすることにしました。
その日から、6日間、母の生活支援は全て私が一人でやりました。
玄関の外までは支援が届いても、玄関の中には入ってもらえません。誰も手伝ってもらえないから私がやるしかないのです。

この場合、私が企業に勤めている人だったとしたら、通勤途中に上席に「母がコロナに罹患したので、いまから介護休暇を取得させてください。」ということを電話で申し出て、介護休暇をすることができます。
当然、上席には私がすでに介護をしている事実を報告してあることが前提です。
これが介護休暇のスポット使いの例です。

自宅療養中の仕事は基本的にはオンラインで何とかなりましたが、これを実現できたのは理解ある皆さまのおかげです。
改めて謝罪申し上げるとともに、臨機応変に対応いただき、感謝申し上げます。

突発事態でも介護休暇のスポット使いにならない例

突発事態でも介護休暇に相当しない例もあります。今度は私の父の事例です。
私の父は28年前にクモ膜下出血で他界しました。当時、私は不動産会社でマンション企画の仕事をしていました。多分3年目ぐらいだったと思います。その日は、事務所で図面チェックか何かをしていました。突然、デスクの電話が鳴りました。相手は父が勤めていた会社の人でした。「お父様が仕事中に倒れました。●●病院にすぐに来てください。」というような内容。だったと記憶しています。
電話を聞いていた課長や先輩が「病院の場所わかりますか?」「早く行きなさい」って言ってくださって、デスクの上はそのままで、着替えて会社を飛び出しました。病院に行ったときには間に合わず、その後、忌引きで1週間ほど会社を休みました。
出社した時の記憶はほとんどありませんが、仕事は片付いていたことは確かです。先輩たちが手分けして私の担当の仕事を処理しておいてくださいました。
このような事例もよくあることですが、時代背景を現在に合わせると、介護休暇の取得は出来ません。理由は、対象家族が2週間以上の期間にわたり常時介護が必要な状態ではないからです。従って、早退と忌引きという扱いになります。

従業員ができる突発事態への備え

突発事態が起きた時、当事者社員は否が応でも休みを取得せざるを得ません。
当事者社員だって、いつ復帰できるのか皆目見当もつかないまま、ひとまず目の前の事態収拾にお全力をつくします。
事態収拾のための勤務管理としての社内制度は整っていたとしても、結局は「業務が滞ること」が問題であり、当事者社員においての気がかりの原因はそこなのかもしれません。
業務を滞らせない為に、周辺社員への負担が一時的に大きくなります。
しかし、周辺社員も突発事態という理由であれば、概ねそのことは納得出来なくても理解はできます。やらざるを得ないのです。協力せざるを得ないのです。
ただし、業務が属人的であったり、専門的であったりする場合、周辺社員のだれでも対応できるわけではないこともあります。
当事者も会社も突発事態への備えは日ごろから考えておくべきでしょう。考えるだけではなく、実行すべきです。突発事態は、文字通り突然来るからです。

企業も突発事故に備える

企業側は、以下の観点で従業員の突発事故に備えるべきです。
●リスクが高い社員を把握しておく
●属人化を防ぐ業務体制を整える

リスクが高い社員を把握しておく

会社として最低限するべきことは、当事者理由ではない理由による突発事態のリスクが高い社員は誰なのかを把握しておくことです。
簡単にいえば、育児・介護に直面している従業員ということです。一つの部署に同じような状況の社員ばかりが集まっているのであれば、人事戦略を見直すことも必要なのではないでしょうか。

属人化を防ぐ業務体制を整える

次に、属人化にならない仕組み作りや業務の簡素化、タスクのシェア、多様な働き方へのチャレンジ等も取り組みましょう。
「前例がない」は理由になりません。今後は「前例がない」ことしか起きないのです。突発事態に対して「前例がない」と回答してしまっては、従業員が「融通が利かない会社」「理解のない会社」と判断して辞めてしまっても無理はありません。

突発事態に対する周知徹底を

組織は人で成り立っています。仕組みを変えたところで、社員の皆さまが「変える気がない」のであれば、それは何も変わりません。
突発事態は誰にでも起きうることです。自分自身が感染症に罹患したり、その他の病気やケガ・事故に遭ったりすることだってあります。
さらに、育児や介護に直面している当事者は、突発事態の時に、家庭環境の最適化に当事者やその他の家族が直接的に関わらなくても、状況によっては使える手立てがあるかもしれません。そういった情報収集やコミュニティ形成も備えとしてできることではないでしょうか。

備えることは変ることです。勇気を出して変わる行動をとってみましょう。

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