メッセージ
「介護離職しない、させない」
「家族の介護」そのときは突然やってきました!
「家族の介護」は突然やってくる。 ということはなんとなくイメージつくと思います。そして、“そのとき”の準備なんてしている人は少ないのではないでしょうか。
しかし、本当に“そのとき”は「突然」やってきました! もちろん“そのとき”の準備なんて全く考えてもいませんでした。
当時常に思っていたこと・・・「ほかの人はどうしてるの?」
私は介護を始めて今年で11年目です。 いまだからこそ落ち着いた生活をしておりますが、介護生活スタート当時を思い出すといまでもそのときの苦しさが思い出されます。
日に日に目の前の生活が変わり、その変化について行けない自分がいました。 介護者の自覚がないにも関わらず、関わる人からは介護者として見られる毎日。 周りにいる会社の人、お医者様、ご近所の皆さま、親戚、全ての人が敵に見えたこともあります。
健康保険が何なのかも知らない。介護保険と健康保険の違いも知らない。 とにかくわからないことさえもわからず、誰に相談したらいいかさえもわからない辛い日々。 仕事から帰ってきて、家のことをして、この先どうしたらいいのか、わからないことをネットで調べる毎日・・。正直、ホントに辛かったです。孤独でした。
「ほかの人はどうしているのだろう」 「私の欲しい情報はどこにあるんだろう」 「こんなに苦労しているのは私だけなのかな?」 「私がおかしいのかな??」 と常に疑問に思うにも、欲しい情報やほかの人を探すすべさえも知らず、心がすさみ、私自身の心も体も病んでいったように思います。
介護退職しました。
近年「介護離職」が社会問題になっています。 そして、年間10万人が介護離職している現実があります。
そんな私は介護退職をしました。 離職とはちょっと違います。転職をしたのです。もちろん収入は激減。全盛期の収入から考えれば7割以上も減りました。
私の場合、厳密に言えば介護が直接の退職原因ではありません。しかし介護が始まり私の生活環境は大きく変わりました。
どちらかといえば自由奔放に生きてきた私。そんな私の価値観では到底太刀打ちできない目の前の現実。当時はただただその現実から逃げたくて、何が正しくて何が間違っているのかさえの判断もできなくなっていました。
そして「そういえば、私は今のお仕事に憤りを感じてたな・・。いっそのこと今辞めて、まずは要介護者の病状をよくしよう。もっと自由に勤務できる会社を探そう。」なんて思って転職を繰り返しました。
私だけじゃなかった!
そんなとき、ある書籍に出会いました。 ひとりで介護をしている人向けの書籍でした。
そこにこんなことが書いてありました。 「仕事は絶対やめないで」
愕然としました。だって、辞めちゃったのですから。
今思えば、まさにそのとおりです。 なぜって「介護はお金がかかるのです!」
そして、その書籍で「NPO法人介護者支援センター・アラジン」という団体を知りました。介護者の支援に多角的に取り組んでいるNPO団体で、介護者による介護者の集いも開催している団体でした。
私は元来群れるタイプではありません。 女子高育ちですが、トイレは一人で行くタイプの人間です。 ましてや、当時の私は「介護者は負け組み」的な考えが心を支配しており「負け組みの集まりに行くのか・・・」という思いもありました。
しかし、「こんなに苦労しているのは私だけなのかな?私の考え方がおかしいのかな?私が無知なだけなのかな?ほかの人はどうしているのかな?」という思いが強く2011年5月にNPO法人介護者支援センター・アラジン主催の「娘サロン」に参加ました。
初めて現実の介護者を目の当たりにし心底安心しました。 「私だけじゃないんだ・・・」と。 そして、ここには生きた情報がある。ここには私の欲しい情報がある。 ここでは、要介護者を通した私ではなく、私を私としてみてくれる仲間がいる。 そして、介護退職した仲間もいました。
介護者が離職をすると社会との接点が希薄になります。 そうなると、社会との接点が要介護者を通した社会に変化していきます。 要介護者には介護サービスによるヘルパーさんやデイサービス、医療による医者や看護師、行政による民生委員などたくさんの支援者がいます。 しかし、彼らは介護者の支援者ではありません。むしろ、彼らは介護者さえも要介護者の支援者とみなします。
つまり、会社を辞めたり、自分の趣味やサークル活動を控えると社会との接点がなくなり、私を私個人としてみてくれる関係が失われていくのです。
私の経験が誰かのためになる
私の介護生活への価値観が変わりました。 「私の経験が誰かのためになるのなら」
自分で経験してきたことは、自分のなかでの価値観や生活にかわるので、 自分には既に必要ないものと変化します。
しかし、その経験を発信することで、誰かのためになるのかもしれない。 そんな風に思うことで、要介護者との関わりが変わりました。 そして、そんなことを話していると、同じ様に感じている仲間がいることを知りました。
初動のパニックを知っている私たちだからこそ、できることがあります。 同じ介護はありません。でも、ここでの情報が介護者の人生において何かのきっかけにはなれると信じています。 介護者の選択肢をひとつ増やすことができると信じています。
情報は錯綜しています。いろんな情報があります。いろんな考えの人がいます。 どの情報を取るかは介護者の選択です。 介護者には選択肢があります。 初動時に落ち着くことができれば、介護者にはたくさんの選択肢があるということに気づくはずです。 そして、その上で「会社を辞める辞めない」「転職する」「辞めない為にはどうしたらいいか」を一緒に考えましょう。 同時に、企業の皆々様には大切な「人財」を介護離職させないためにはどういった取組みをしたらいいのか、真剣に考え実行していただきたいと切に願っております。
介護者にとって、要介護者の状態も不安ですが、自分の人生や経済的な不安など、多岐にわたる不安が襲ってきます。 就業は経済的な不安も軽減しますが、孤立しがちな介護者の社会的接点にもなります。介護者としてではなく、私を私として関わってくれる社会があるということは生きている実感を得られます。
すべては私の経験からです。ですから、全ての介護者の代弁者にはなれないかもしれません。でも、できることからはじめていこうと誓い、ここに「ワーク&ケアバランス研究所」を立ち上げました。 もちろん一人ではできません。NPO法人介護者支援センター・アラジンの協力、ビジネスパートナーの皆さまの協力、そして同じ介護者の皆さまの協力のもと、 「No More 介護離職」にチャレンジしていきます。
「働く」と「介護」を考え、介護者が自分の人生を自分らしく生きられる社会を一緒に創っていきましょう。
2014年6月吉日 ワーク&ケアバランス研究所 運営管理責任者 和氣美枝