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仕事と介護の両立コラム 介護者支援の事例紹介

2020.08.10


今日は介護者支援の事例を紹介します。
いま、この時期に介護者支援として何ができるのかを考えるきっかけにしていただければ幸いです。

新型コロナウィルス感染拡大による施設面談の制限

新型コロナウィルス感染拡大防止のために、多くの施設介護の事業所では3月中旬ぐらいから面会禁止または制限を設けての実施となりました。
着替えや日用品の受け渡しは施設の玄関外にて行われ、愛する家族には会えない日が続きました。家族の中には、面会の時にマッサージをしたり、機能の確認をしたりと、施設介護だけではまかなえないところをフォローしていた方もいます。そういったことが一切できなくなり、会えない寂しさと、低下していくかもしれない機能への不安、この状況の出口が見えない不安が族介護者を襲っています。当時に、要介護者にも笑顔がなくなり、気力がなくなり、外に出られないストレスはたまり、機能低下のスピードを速めてしまっているようです。

様々な面会の形

新型コロナウィルスによる感染拡大防止に伴う、施設介護での面会禁止は、タブレット等を使ったオンライン面会という新しい面会方式を生み出しました。家族が施設のロビーにて施設のタブレット越しに要介護者と面談をする方式や、家族は自宅のPCやスマートフォンから専用のURLにアクセスして、施設スタッフが要介護者の部屋からタブレット等で要介護者との面会を補助してくれるやり方などがあります。
また、アクリル板越しの面会やビニールカーテン越しの面会、バルコニー越しの面会等、施設もできる限りのさまざまな工夫をしてくれています。
会いたい気持ちはわかりますが、無理強いはしてはいけません。介護事業者は利用者の安全を守ることが最優先です。もちろん面会による効果が計り知れないものであることは介護事業者の方であればだれもが理解しています。その上で、対応の順番として後回しになっていることもあるかもしれませんが、やはり、家族としては面会を無理強いしてはいけません。

面会制限

緊急事態宣言が解けて、そうは言っても検査態勢が整っている訳でもないし、新薬が出来たわけでもない状況では、介護事業者はもろ手をあげて「面会解禁」とはできません。制限付きの面会を始めている事業者もあるようです。
2週間に1回の面会、また面会の所要時間も60分とか40分とか、制限があります。会う事さえできなかった家族としては、両者ともに「会える」だけでも嬉しいといったところでしょう。
ただし、家族介護者としては、自分の家族のためにも、面会を解除してくれた施設のためにも、普段から自分の行動には十分すぎるほどの配慮が必要です。これはこれで非常にストレスフルな事でしょう。しかしながら、普段の生活で感染予防をしていなければ、たった2週間に1度の30分の面会でも、施設全体をクラスター化することになりかねません。少しでも体調の変化をかんじたのであれば、面会を延期する勇気も必要です。

手紙や交換日記というコミュニケーション

面会ができないので、手紙を書いて施設に届けて、施設スタッフさんに読んでいただいている家族も少なくないですね。もちろん、要介護者である入居者ご自身で読める場合は、施設スタッフさんに手紙を渡していただくようにお願いしています。入居者が字も書ける状態であれば「交換日記」をしている家族もいます。
とにかく、この新型コロナウィルスに関しては、ケアのあり方や家族としての介護の在り方など、さまざまな価値観を変えたり付加したりし続けています。
そんななか、施設スタッフから「声を録音してきてほしい」と言われた家族がいます。認知症のある母を施設に預けています。

あるケアラーのビデオレター


「ICレコーダーに声を吹き込む」という作業はある意味簡単です。なので、すぐに手持ちのICレコーダーに声を吹き込み、施設に届けたようです。施設スタッフさんからは「お嬢さんの声に反応していますよ」と笑顔の写真と一緒に報告があったようです。
しかしながら、吹き込んだ声は2分程度のものです。ただ、再生しても、あっという間に終わってしまうので、施設スタッフさんに何度も何度も再生ボタンを押してもらう事になります。
という心苦しさをケアコンカフェで吐き出していただいたので「ビデオレター」を作ってみよう!ということになりました。

ビデオカメラが一般家庭に普及し始めたのは昭和60年代と言われています。昭和60年生まれは令和2年で35歳です。「小売物価統計調査」という調査に「ビデオカメラ」が項目になったのが平成3年です。平成3年生まれの場合は令和2年の時点で29歳です。このことから、現在の50代や40代の介護者世代が小学生や中学生だった頃、ご家庭にホームビデオがあった家庭は少なかったように思います。
例にもれずこのケアラーのご家庭にも幼少期にビデオカメラは無く、娘が小さい時の映像は有りません。なお、認知症のあるお母様が、幼少期の娘の映像に反応するかどうかはわかりません。ないなら、今作ればいい、ということでビデオレターを作ることにしました。

ビデオレターの作り方

まずは60分程度のビデオレターを作ることにしました。ポータブルDVDがお母様のお部屋に持ち込んあるようなので、再生ボタンだけ施設スタッフさんに押していただき、映像を見ている間の1時間ぐらいはお手間をとらせないで済むだろう、という素人的な考えからです。
つぎに、話の内容です。ご家族のエピソードを10個ぐらい考えてもらいました。結果6個でしたが、十分です。そのエピソードについて、私がインタビューする、という形式で、60分程度のビデオレターを作ることにしました。そして、撮影ですが、こんな時期なので、ケアラー同志が電車を乗り継ぎ、カラオケボックスなどの密室で飛沫感染のあるインタビューなどはできません。ZOOMの撮影機能を使って簡単に撮影しました。
出来上がったデータをケアラーにメールして、ケアラーがDVDに焼き付けて施設にもっていきました。

さて、ビデオレターのお母様の反応は・・・・

届けたビデオレターは、私たち素人の思惑とは違って、DVDの再生ボタンを押して、お母様を放置ではなく、施設のパソコンを使ってリビングで施設スタッフさんがケアとして一緒に見てくださったようです。この時点で「60分は逆に迷惑だったかも・・」という思いが私とケアラーの間に芽生えました、が、やってしまったことは仕方がないです。施設スタッフさんの寄り添いに心から感謝します。
そして、結果としては、お母様は声には反応したけど、映像にはさほど反応はなかったようです。ただ、それ以上の反応があったのが施設スタッフさんからでした。

結果的に、そのビデオレターは施設スタッフさんとの情報共有にとても役立ったようです。その施設では、入居者エピソードを家族から教えてもらう機会を設けるようですが、日々の業務や、それこそ今は「コロナ」の関係で、なかなかそのような機会を設けることはできません。面会の次いでに少しづつ聞き出し、入居者記録でスタッフ全員で共有する、という段取りが通例のようですが、それもいまはほとんどできません。そのような状況でこのビデオレターは「ケア」しながら「ヒアリング」もできる、と大好評だったようです。

こんな時代でもできることをやればきっと何かの役にたつ

映像は反面、残酷でもあります。キラキラ輝く笑顔、新緑のまぶしい公園など「あの頃」を鮮明に残します。介護が始まってからの映像は、その時の感情を思い出させます。楽しかった笑顔も思い出しますが、つらかった「あの頃」を思い出すことにもなりますので、一長一短ですね。
対面の介護者支援が主な手法だったけど、オンラインという手法が増え、またそれを録画録音することで新しい価値が生まれることを実感しました。
対面だから完璧ということもないし、オンラインでは支援が不十分、ということもないと思います。
今ある、それぞれの特徴を活かして、新しい価値を作っていくことが、きっと私の介護者支援の使命なんだと思っています。

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