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仕事と介護の両立コラム 起こるべくして起きている介護離職

2020.06.08

介護離職は個々人において原因やきっかけは異なります。
今日は、企業の介護離職防止対策の取り組みの方向性、という側面から説いてゆきます
経営者の社会的責任において介護離職防止対策に取り組んで欲しい、という話です。

企業が介護離職防止に取り組まなくてはいけない理由

①労働力の確保
②犯罪防止
③社会保険料納付義務
です。
経営者においては社会的責任として介護離職防止対策に取り組んでいただきたいのです。

介護を正面からとらえて施策を考えてしまうと、行きつくところ『介護離職問題は「個人の問題でしょ」』となってしまいます。そして、それは間違っていません。
では、企業が、経営者が社会的責任として、介護離職防止対策をしなくてはいけない理由を考えます。

労働力確保

介護離職防止とは、介護を事由に今努めている会社を辞める事です。離職、つまり、辞めてほしくない理由は、労働力がなくなると困るからです。それに加えて「介護」を事由にしたとき、その対象者になりうる可能性が高い年齢層が40代から60代です。その年齢層は会社を牽引するトップランナー達であり、管理職層であることが多いです。部署を取りまとめ成果を出すためのマネジメント機能がなくなる、または薄くなることで、業績への影響が少なからずあると考えられます。
しかし、一方で、少子化対策として機械化や自動化等で、人だけに頼らない業務オペレーションも進められています。となると、企業の労働力は本当に不足しているのだろうか、という疑問が湧き出ます。そうなると、介護離職防止対策の必要性が根底から覆されます。

令和元年版高齢社会白書(全体版)によると、高齢化率は28.1%です。65歳以上の人口が約3割だということです。日本の総人口は毎年毎年減っていきます。いくら定年を引き上げたところで、このままでは、日本の労働力は底をつき、国力は低下の一途をたどることが目に見えています。若い方が安心して働ける環境を整え、子育てのしやすい社会を作らなければ日本に未来はありません。
そのために、いま何ができるかと考えた時、子育て世代が安心して働けるように、子育てが終わった世代が会社を牽引し、それを引き継ぐ循環を作っていく必要があるのではないでしょうか。となると、やはり40代や50代の方々に辞めてもらっては困るわけです。
介護離職防止対策は、一企業の労働力の確保、企業成長企業発展だけの話ではないのです。
だから、日本経済を支えている自負のある、経営者にもっと真摯に介護離職問題に向き合ってほしいのです。

犯罪防止

「介護」と「犯罪」という言葉を結びつけると「虐待」とか「介護殺人」という言葉が思い浮かぶかもしれないですね。厚労省による平成 30 年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」によると、養護者(高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等)による虐待判断件数過去最高17,249件(29年度より171件増)でした。要介護者が増えているので、それに比例して虐待件数が増えているようですが、逆に言えば、虐待防止対策が取られていないこともわかります。虐待の発生要因と言われているのが、介護疲れやストレスがトップです。
では、なぜ、介護疲れに至るのか、を同調査をもとに推測すると、介護サービスに結びついていない高齢者の方が命の危険が高い虐待が多い、という結果があります。なぜ、介護サービスに結びついていないのでしょうか・・・。知識不足が原因であることも一因であると考えます。介護がはじまったらどうしたらいいのかわからず、まずは家族で抱える、そんな風潮が根強いのではないでしょうか。介護離職防止対策として正しい知識の教示をするだけでも、高齢者虐待が防げる可能性はあるのです。
さて、ここまで書きましたが、やはり「当事者」ではないと、経営者も介護離職防止対策が犯罪防止に繋がるには理解が遠いのかもしれません。しかし、家族介護に関わっている従業員が高齢者虐待の瀬戸際で生き抜いていることは知っておいて欲しいですし、何かきっかけで手を挙げてしまったら、従業員が犯罪者になってしまう可能性がある、ということを頭の片隅に置いといてください。
実は、介護離職防止対策が防ぐ犯罪はこれだけではありません。介護経験者なら多くの方が経験あると思いますが、家族介護者は要介護者の夜中の排泄介助や昼夜逆転、徘徊行動等でおちおち寝ていられず、睡眠不足や健康被害が出る事があります。その結果、無理して働くことで執務中に寝てしまうことがあるのです。その結果、例えば、営業車で事故を起こしてしまったり、工場のラインで事故を起こしてしまったり、パソコン操作を誤って、個人情報を流出してしまったり、という事件事故に発展することがあるのです。家族介護の正しい知識がないと会社に被害が及ぶことがあるのです。
介護離職防止対策の一環で、介護の正しい知識の教示ができていれば、介護がはじまったら上司に報告することが徹底されていれば、防げる事件事故は有ります。会社も従業員も守る事ができるのです。

社会保険料納付義務

「社会保険料納付義務」という側面から考えると、自ずと会社は介護離職防止対策に取り組むべきことだとわかります。「社会保険料納付義務」おいては、私は声を大にして言いたいです。社会保険の知識の欠如が介護保険の一般常識化を遅らせ、さらにはそれが原因で介護離職に至っています。
介護保険は社会保険のラインナップの一つです。社会保険とは医療保険・年金保険・労働保険(雇用保険・労災保険)そして介護保険のことを言います。これは厚生労働省白書にも明記されている内容です。そして、事業主は労働者を雇ったら社会保険に加入する義務があります。社会保険に加入する、つまり、社会保険料を納付する義務があります。医療保険や年金保険、介護保険は事業主と労働者と折半です。雇用保険は料率がきまっていますし、労災保険は全額会社負担です。
「介護保険料は40歳以上から」ではありますが、それは雇用者であれ保険料の半分を給与から天引きされている訳で、残りは会社が負担しています。会社が負担しているということは、会社の売り上げから充当されているわけで、介護保険料は40歳以上の方の問題ではないのです。
会社は売上の使い道を説明する義務があるのではないでしょうか。売上が上がって、給与を増やせば、自ずと社会保険料も上がるわけです。となると、上がった売上をそのまま還元することはできないわけです。という、仕組みを、しっかりと従業員に説明していますか?という話です。
給与明細には社会保険料の明細が印字されているはずです。しかしながら、昨今は給与明細はペーパーレス化のため、給与明細を確認するには、会社の所定のシステムにアクセスしないといけないようです。若干の手間があるので、給与明細は見ずに、銀行通帳で手取り金額を確認しているだけのようです。これでは、ますます社会保険料の支払い意識は低くなっていきます。結果「介護」という文字に触れる機会も減ってきているように感じます。
新入社員研修で「給与明細の読み方」なんて研修があってもいいのではないでしょうか。源泉徴収という所得税の知識と、社会保険料の知識は社会人としての常識です。
社会保険料の納付義務者として、その説明責任を全うするだけで、介護保険の一般常識化が図れ、それが介護離職防止対策になるのです。

起こるべくして起きている介護離職

企業の社会的責任において、介護離職防止の意義を今一度考えていただきたいのです。
介護離職防止って、介護休業を1年に延長する、とか介護休暇を有給にするとか、そういう事ではないのです。少し長い目を持つと、介護離職を防止することによる社会の変容は大きいのです。介護離職防止対策って未来を作っていることなのです。
介護において「わからないことが、わからない」状態にあることを私は知っています。
だから、ちょっと回り道してしまっている人たちがいることもしっています。
回り道は、無駄ではありません。動かないより全然いい!ただ、今回の新型コロナウィルス感染拡大などから、介護離職者は増えると予想しています。これ以上増えたら、日本は崩壊します。なので、できる限り近道で介護離職防止対策に取り組んでいただきたいのです。そのためにも、今一度取り組む意義を考え、具体的な行動指針を作っていただきたいとねがっております。

最後に

介護離職防止対策には「ケアラーズコンシェル」です。
学習、質問、相談、情報収集、交流など、多機能な介護者支援ツールです。
介護中の方はもちろんの事、介護の準備に最適です。
サイトのTOPページに使い方説明がありますので、ぜひご覧ください。
https://carers-concier.net/

次回は、介護離職防止対策の具体的な取り組みをご紹介いたします。

文責 和氣美枝
#介護と言えば地域包括支援センター

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