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仕事と介護の両立コラム 日常生活支援総合事業の見直しと仕事と介護の両立への影響

2020.01.10

先日、社会保障審議会において、介護認定区分「要介護1、2」の要介護者に提供される生活援助サービス等について検討され、結果、今回の制度改正では見送りとなりました。
ここで「日常生活支援総合事業」について改めて振り返り、今、新たに議論されている「軽度者」への制度改正について解説します。
また、仕事と介護の両立へのその影響を考えます。

総合事業における要支援者へのサービス

現在、主に高齢者介護を行う上で利用できる制度に「介護保険制度」があります。
介護保険制度は5年に一度制度内容が見直され、その都度必要とされる制度改正が行われます。
「介護予防・日常生活支援総合事業」とは、平成26年の介護保険法改正によって創設された新しい事業です。一般的には「総合事業」と呼ばれています。
この総合事業の内容の一つに、介護保険の要介護認定区分7段階のうち、一番軽度の「要支援1」と二番目に軽度の「要支援2」の認定者、いわゆる介護予防の対象となる「要支援者」の方々に対する「訪問介護」と「通所介護(デイサービス)」の利用についてがあります。
要支援者への訪問介護や通所介護を、既存の介護保険サービス事業者に加えて、NPOや民間企業等の多様な主体が実施できるようになりました。日常生活支援(家事などの生活援助)や介護予防を、介護保険サービス事業者でなくても実施できるようになったということです。
同時にサービス提供者に支払われる報酬も見直され、従来の介護保険サービス事業者に支払われていた報酬に比べると、国としては介護給付費を抑えることができます。

総合事業開始後の現状

そもそも総合事業が開始され、要支援者への訪問介護や通所介護が介護保険サービス事業者でなくても実施できるようになった一番の目的は、介護を必要とする高齢者人口の増加に伴い、増え続ける国の介護給付費を少しでも抑制するためです。
介護保険サービス以外で対応することで、国の介護給付費を減らそうとすることが目的でした。
しかし、実際には、市町村の実施状況からも、NPOや民間企業など、住民主体の多様なサービスが実施されている市町村は6~7割にとどまっている現状があります。
本来サービスを提供していた介護保険サービス事業者が、総合事業開始後も引き続き、要支援者の方々に訪問介護、通所介護のサービス提供を行っています。
その理由は、多くの市町村において、NPOや民間企業では、総合事業の受け皿としての体制整備や実際の対応が追い付いていない現状があるからです。
いくら訪問介護(生活支援)や介護予防といっても、高齢者の生活を支えるあくまで「介護」であり「専門的なケア」であることに変わりありません。これまで介護の専門職が担っていた業務を、給付費抑制の観点から専門家でない支援者が対応するには、まだまだ課題があるのが現状のようです。
しかも、引き続き要支援者への訪問介護、通所介護を提供している介護保険サービス事業者においても、総合事業の委託事業の報酬では採算が合わず、事業の撤退などに繋がる状況も起こっています。

要介護1、2の要介護者に対する国の意向

このように、平成26年にスタートした総合事業ですが、当初、国が計画した要支援者への訪問介護、通所介護の介護保険サービス事業者以外の支援への移行は、予定どおりには進んでいないようです。
しかし、ここにきてさらに、国の方針では、いわゆる「軽度者」を要支援1、要支援2の要支援者に限らず、その次の認定区分である「要介護1」「要介護2」の要介護者まで対象範囲を広げようとする案が出てきています。
2019年6月に政府が発表した「骨子の方針2019」では、「新経済・財政再生計画の着実な推進」を掲げています。
この計画は、経済財政諮問会議がまとめたプランです。
「軽度者(要支援者に加え、要介護1、2の認定者)に対する生活援助サービスやその他の給付について、地域支援事業(NPOや民間企業の多様な主体が実施するサービス)への移行を含めた方策」を検討することを関係審議会に求めているのです。
この内容については、多くの反対の意見が出ています。
反対の意見を訴える方々は、地域で介護を必要とする高齢者を支える団体や介護や医療に携わる専門職や教育者など、幅広い分野の方々です。それぞれの立場から国の動きに対し問題提起をされ、署名活動なども活発です。
そして、その反対を訴える人々の中に、仕事と介護の両立を考える実際の家族介護者も含まれています。

働く介護者への影響

「要介護1」「要介護2」の認定者は、身体的な機能としてはある程度自立していても、認知症を患った方が多い認定区分でもあります。質の良い専門的なケアを受けることにより、進行性の疾患に対し、いかに現状維持が長く出来るかが図られる時期とも言えるでしょう。
もちろん、仕事と介護の両立、介護離職防止の観点からも、関わってくる内容でもあります。
訪問介護(生活支援)や通所介護の利用が制限されたり介護の質が低下すると、その分、家族介護を担う働く介護者への負担も増えるかも知れません。結果、仕事と介護の両立が予定どおりに実行できず、さらに介護離職を余儀なくされることも出て来るかも知れません。
社会保障審議会委員からも、社会保障改革の一つでもある「介護離職ゼロ」の観点を充分に踏まえた慎重な検討が必要であるとの意見も出ています。
先日、会議の結果、この内容は見送りになりました。
しかし、社会保障審議会のテーマには、「給付と負担」があります。
高齢者人口の増加と共に増え続ける介護給付費は、今後もますます介護保険制度において課題となるでしょう。よって、今回の見送りはあくまで見送りであり、決してこの内容が白紙になったわけではないことは概ね明らかです。
介護を必要とする要介護者にとって、また仕事と介護の両立を考える働く介護者にとって適切に判断されるために、引き続き声を上げていく必要があるようです。

毛利紗代(もうりさよ)写真

毛利紗代(もうりさよ)

1976年生まれ
50代で若年性認知症を発症した父親を介護するシングルケアラー
気づけば介護者歴十数年。その間に自身も介護離職を経験する。その後、再就職・転職をしつつ、現在、仕事と介護の両立を実行中。
自分と同じシングルケアラーとの出会いに救われた経験をもとに、介護者支援活動にも取り組む。

参照

厚生労働省老健局
制度の持続可能性の確保
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000560823.pdf

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