仕事と介護の両立コラム 仕事と介護の両立とテレワークの活用
今、注目されているテレワーク。
仕事と介護の両立を考える働く介護者がテレワークを活用する場合のメリットや注意点を、企業・従業員双方の立場から考えます。
注目されている新しい働き方
従業員が会社に出勤せずに自宅または共有オフィスなど、会社以外の場所で仕事をすることを「テレワーク」と呼び、今、新たな働き方として話題になっています。
2019年4月、働き方改革関連法案の改正法が施行されました。
政府は、週1日以上、終日在宅をする労働者、いわゆる「在宅型テレワーカー」の数を、2020年には全労働者数の10%にすると宣言しています。
実際には、未だ政府の予想する数までは上記在宅型テレワーカーは増えてはいないようですが、働きながらの育児・介護を考える従業員にとって、育児や仕事と介護の両立にも役立つと期待が高まっている働き方です。
企業においては、少子高齢化で労働人口が減少する中で、貴重な人材の確保、業務の効率化にむけた企業戦略であるとも言えるかもしれません。
仕事と介護の両立のためのテレワークの活用
先で述べたように、テレワークは仕事と介護の両立を考える働く介護者にとっても、活用が期待できる働き方です。
例えば、家族に受診の付き添いが必要な要介護者がいた場合を例にあげます。
午前中に受診(付き添い)が終わり、その後は日頃と同じように要介護者をデイサービス等の通所サービスに送り出します。そして、働く介護者は、そこから出勤するのではなく、自宅にて在宅勤務を行います。
受診の付き添いに要した時間はありますが、会社へ出勤しないため、通勤にかかる時間が省略できます。
また、要介護者自身は日頃と同じように、受診後はデイサービスにて安全に過ごしているわけですから、要介護者のことを気にすることなく仕事に集中できます。
もちろん、受診等の特別な理由がなくても、働く介護者の体力の温存や日頃のストレスの軽減のために、要介護者が介護保険サービスを利用している間に、在宅勤務をする方法も考えられるでしょう。
このように、働く介護者が一日の中で仕事と介護の両立に要する時間の使い方を、自身でマネジメントすることが可能です。
テレワークを福利厚生と考えない
事例のように、仕事と介護の両立を考える働く介護者にとって、テレワークの活用は有効な働き方の一つです。
しかし、ここで一つ確認しておきたいことがあります。
それは、テレワークは働く場所や時間を工夫したあくまで「勤務の形」であるということです。
仕事と介護の両立を考える働く介護者がテレワークを行う上で大切なことは、「働く環境」つまり「介護がそばにない状態」または、「介護がそばにあったとしても仕事に集中できる状態」であることです。
上記事例にあるように、働く介護者が在宅勤務をしている間は、要介護者は「介護保険サービスを利用している」など、要介護者のことは気にせず仕事に集中できる状態を作り、働く介護者はあくまで労働者として、自身の仕事に集中しなくてはいけません。
「テレワークの活用」=「(自宅で)介護しながら仕事ができる」ではないということを、労働者である働く介護者自身が自覚しておくことはとても大切です。
働く時間や場所を自身でマネジメントできると言っても、テレワークはあくまでも「勤務の形」であり、その時間は自身も「労働者」であることを忘れないようにしましょう。
企業としてテレワークの活用をどう管理するか
また、テレワークの活用は柔軟な働き方の提案である一方、ときに事件や事故の誘発原因になることも考えられます。
例えば、業務内容や職種によっては、セキュリティ性の高い場所でしか仕事ができない部署や従業員もいます。また、介護においては、要介護者と密接な時間と空間は時に虐待へ発展することも考えられます。
企業側は、テレワークを活用する従業員と出勤し会社で仕事をする従業員を、同じ軸で公平に評価することが求められます。
テレワークはインターネット越しの業務になることも多く、安定したネット環境の確保も課題です。
上司や同僚などと職場内で顔を合わせることが減るため、チームで一緒に仕事をする者同士のコミュニケーション不足が起こるかも知れません。
テレワークの活用は、企業においては貴重な人材の確保、業務の効率化にむけた企業戦略であり、従業員においては自身のより良い働き方を考える。どちらも、活用の結果プラスにならなければなりません。
そのためには、事前に十分なテレワークの管理運用に関する準備が必要です。
自社の事業内容として、テレワークに置き換えられない部署や業務内容を見極める、公平な立場で従業員を評価する自社の評価制度の見直しをする、ネット環境の整備や従業員のテレワークと会社への出勤のバランスを考える、在宅日と出社日のバランスを考える、企業・従業員双方で、日頃から意図的にコミュニケーションをとり、信頼関係の構築をはかるなど。
このように、各企業内で、自社の事業に即したテレワークの管理運用規定を丁寧に作成した上で、新たな働き方として取り入れることが重要となるでしょう。
毛利紗代(もうりさよ)
1976年生まれ
50代で若年性認知症を発症した父親を介護するシングルケアラー
気づけば介護者歴十数年。その間に自身も介護離職を経験する。その後、再就職・転職をしつつ、現在、仕事と介護の両立を実行中。
自分と同じシングルケアラーとの出会いに救われた経験をもとに、介護者支援活動にも取り組む。
参照
総務省
「企業におけるテレワーク利用」
広がるテレワーク利用
テレワークによる働きやすい職場の実現
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd144310.html
テレワーク相談センター
https://www.tw-sodan.jp/
「時間外労働等改善助成金」のご案内(テレワークコース
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000500514.pdf
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