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仕事と介護の両立コラム 介護の緊急事態に備えることの重要性

2020.03.16

働く介護者と仕事と介護の両立を支援する企業が、介護の緊急事態に備えて何をしておくべきか、そのポイントを解説いたします。

新型コロナウイルスと介護

連日、新型コロナウイルスの拡大やその防止に関する情報があふれています。
中にはお亡くなりになった方もおられ、心よりお悔やみ申し上げます。
対策は急がれているものの、この新型コロナウイルスは、日々、私たちの身近な日常にも影響を及ぼしてきており、人々の不安は増すばかりです。
季節柄、例年、空気が乾燥しているこの時期は、インフルエンザ等が流行しやすいとは言われていますが、流行している疾患がこれまであまり知られていない病名であれば、なお不安を感じさせることに繋がっているのかも知れません。
「知らない」「経験したことがない」ものごとは、人々をより不安な気持ちにさせがちです。
仕事と介護の両立に取り組む働く介護者においても、自身の抱える「介護」に日常とは違う状況が起これば、もちろんそれらの対応に追われますし、場合によっては整えてきていたはずの仕事と介護の両立プランを急遽、しかも早急に大きく変更しなければならない事態にもなり兼ねません。
そして、その理由は要介護者自身の心身の状態に起因する場合もあれば、今回の新型コロナウイルスのように、とりまく周囲や環境が起因となる場合もあるかも知れません。
近年、予期せぬ事態はさまざまな要因や場面で起こり、「介護」に関する影響も十分あり得ることが予想されます。

想定できる要介護者の変化に対して

要介護者の多くは、それぞれに病気や障害を患っていることがほとんどです。
そのため、介護生活の中で、要介護者の急な発熱など、要介護者自身の体調の変化が起こることはめずらしくありません。
仕事と介護の両立に取り組む働く介護者として、そのような場合を可能な限り事前に想定しておくことはとても大切です。
例えば、かかりつけ医である主治医との連携は、日頃からきちんととっておく。
さらに、休日・夜間帯の受診先をどうしておくか相談し、数件の受診先をあらかじめ決めておく。
サービス利用中であれば、働く介護者への連絡はどうするか。連絡するタイミングや、緊急時に対応できる他の親族がいるかなども決めておければ安心です。
誰が、どのタイミングで、どのようなことまで対応するかを事前に検討し、ケアマネジャーやサービス事業所等の支援者とも情報共有しておくなども有効でしょう。
働く介護者においては、上記のように緊急な連絡が入る場合を想定し、自身の仕事の調整の仕方も日頃から考え、実践しておくことが大切です。
なにより、これらにスムーズに対応するためにも、日頃から上司や職場に自身が抱えている介護のことを伝えておき、自身が担当している業務内容を職場内で常に明確にしておくことは、基本的なことです。
また、自社の従業員の仕事と介護の両立支援を考える企業においても、家族介護者の緊急事態について改めて正しく理解しておきましょう。
急な体調の変化など要介護者自身を起因とすることもあれば、台風などの天候や今回の新型コロナウイルスが起因し、予定していたサービスが急遽利用できなくなる場合もあります。働く介護者である従業員から、それらを理由に、急遽当日の休み申請があることも考えられます。
従業員の仕事と介護の両立を支援するということは、上記のような状況が起こり得るということをまずは知っておく、理解しておくということでもあるでしょう。

今、さらに必要なのは不測の事態への準備

先述したとおり、要介護者である家族の体調等は変わらずとも、介護サービスに何らかの利用制限が起こることもあり得るのが介護です。
昨今の新型コロナウイスルの流行のように、人と人が接触することに対し規制がかかり、訪問介護などの利用が限られることもあれば、雪や台風など天気が原因で送迎ができず、予定していたデイサービスが休業してしまうこともあるかもしれません。
デイサービスは、日中、要介護者を預かり食事や入浴、見守りなどの介護を提供するサービスで、仕事と介護の両立に取り組む働く介護者にとって、なくてはならない在宅サービスの一つと言えるでしょう。
例えば、もし一時的に普段利用しているデイサービスが休業を余儀なくされてしまったらどうしますか?
他に代替的に利用できるデイサービス事業所があるのか、または一時的に訪問介護を利用するのか、など、緊急対応を考えるでしょう。介護サービスの利用は全て「契約」です。つまり、代替手段があっても、すぐには利用できないし、契約まで一定の時間はかかります。もしくは、代替手段となるサービスが調整できるまで、仕事を休み自宅での介護を余儀なくされることもあり得るかも知れません。
今回の新型コロナウィルスの件を機に、いまからできる事として、いつもと同じ事業所のサービスを利用したくても、利用できない状況を想定した代替手段を、担当のケアマネジャーやサービス事業所とも話し合い検討しておくことは、実際に不測の事態が起きた場合に、少しでも落ち着いた対応に繋がりやすいかも知れません。
さらに、介護者から働きかけておくことで、周囲の支援者も、緊急時の対応についてより意識が高まることに繋がるかも知れません。

家族や自身の生活を守るために

準備をして整えてきた仕事と介護の両立プランが、日々の日常の中で、予定したとおり穏やかにすすめられたら、それはまさに取り組みへの日頃の成果です。
しかしながら、今、社会ではこれまでの常識や情報からは予測できない状況が起こっています。さらにその状況が、誰のせいでもないので、より介護者として悩ましいのではないかと思われます。
見えない敵に対して、戦々恐々としているだけではなく、いまできることに取り組むことで、備えにつながることもあるかもしれません。例えば、おむつなど、普段から必要な介護用品は、可能な限り少し多めに用意しておいてもいいと思います。また現在、在宅ワークをしていない人も、「在宅ワークができない職種だ!」とか「会社が在宅ワークを認めない」と決めつけるだけではなく、普段の仕事の中で在宅でも可能な業務は何か、と考えておくことも一つの備えになるかもしれません。
また、普段はひとりで介護していても、他の親族とも連携して介護する場合があるかも知れないこともこれを機に話し合っておきましょう。
どのような場面でも、働く介護者が介護やそれらの状況を一人で抱え込むのではなく可能な限り「共有」しておくことは、この時代に仕事と介護の両立に取り組む上でとても大切なことです。
そして、仕事と介護の両立を支援する周囲のひとたちは、このような緊急事態のときこそ、なお介護者の家族に対する想いに寄り添いましょう。

今、医療機関や介護施設では、外部との接触をできるだけ避けるために、入院患者や介護施設の入居者に対し家族であっても面会制限を行っているところがほとんどです。
病院や施設に任せてあるからとはいえ、要介護者本人に会えない家族介護者の寂しさ、憤り、悲しさ、悔しさなどの複雑な想いははかり知れません。
介護者支援において、また仕事と介護の両立支援において、家族介護者のやるせない想いに耳を傾けることも、いまからできる事の一つだと思います。

毛利紗代(もうりさよ)写真

毛利紗代(もうりさよ)

1976年生まれ
50代で若年性認知症を発症した父親を介護するシングルケアラー
気づけば介護者歴十数年。その間に自身も介護離職を経験する。その後、再就職・転職をしつつ、現在、仕事と介護の両立を実行中。
自分と同じシングルケアラーとの出会いに救われた経験をもとに、介護者支援活動にも取り組む。

参照

厚生労働省 
介護事業所等における新型コロナウイルス感染症への対応等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00089.html

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