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仕事と介護の両立コラム 介護休暇が「時間単位」で取得できるようになります

2020.02.08

令和3年1月1日施行予定の「介護休暇の時間単位取得」について。
制度の改正内容と事業主としての留意点を解説いたします。

働く介護者のための「介護休暇制度」

仕事と介護の両立に取り組む働く介護者にとって、「介護休暇」やその取得は最も身近な仕事と介護の両立支援のための制度かも知れません。
自社の従業員の仕事と介護の両立を考える企業側においても、仕事と介護の両立のための体制整備を行う上で、かかせない制度の一つかと思われます。
現在、介護休暇は、年5日(対象となる要介護者が2人以上だと年10日)を限度として取得が可能です。
1日、または半日単位での取得ができることになっています。
制度が活用される目的としては、働く介護者が、介護保険の手続きや対象となる要介護者の通院の付き添いなど、日常的な介護のニーズに対応するために「スポット的に」活用するものと位置づけられています。

介護休暇に関する制度改正

この介護休暇が、来年(令和3年)1月1日に制度改正されることになりました。
これまでは、先で述べたように、取得する場合は1日単位、または半日単位での取得となっていましたが、改正後は、「時間単位での取得」が可能となります。
ここで言う「時間」とは、1時間の整数倍の時間をいい、従業員からの申し出に応じて、従業員の希望する時間数で取得できるようにすることとなっています。
また、これまでは1日の所定労働時間が4時間以下の従業員は取得できないとなっていましたが、改正後は、「すべての従業員が取得できる」となっています。
制度改正の趣旨としては、対象となる要介護者を介護している働く介護者が、突発的な対応や介護の専門職との相談などを行う場合に、「所要時間に応じてより柔軟に取得できる」ようにするための環境整備が必要であるとの見解からです。
近年、働きながらの介護や、それに伴う介護サービスの活用の仕方なども変化していく中、仕事と介護の両立に取り組む働く介護者の介護の実状に合わせた制度の見直しと言えるでしょう。

事業主として留意するべきこと

このように、介護休暇は、仕事と介護の両立支援のための、さらなる充実した制度となるよう改正が行われるわけですが、事業主としては留意するべき点もいくつかあります。
その一つは、法令で求められているのは、いわゆる「中抜け」なしの時間単位休暇であることです。
「中抜け」とは、就業時間の途中から時間単位の休暇を取得し、就業時間の途中に再び仕事に戻ることを指します。
ですから、今回の制度改正後の介護休暇は、法令においては、始業の時刻から連続、または終業の時刻まで連続する時間単位での介護休暇の取得のことを指しています。
しかし、それはあくまで法令上のことでもあります。
従業員の仕事と介護の両立支援を考え取り組む企業として、柔軟に対応するために、「中抜け」による時間単位での介護休暇の取得を認めるなど、制度の弾力的な利用が可能となるよう配慮することも合わせてご検討して頂きたいところです。
また、このように、すでに法を上回る制度として、「中抜けあり」の休暇取得を導入している企業が、制度改正を機に、これから「中抜けなし」の休暇取得に切り替えることは、従業員にとってはかえって不利益な労働条件の変更になりますので、十分に注意が必要でしょう。

従業員のための制度改正であることが重要

上記のように、介護休暇に関する制度改正は、対象となる従業員やその1回の取得時間、取得の方法まで、大きく変化しています。
これまでの介護休暇制度に関する情報のみでは、不十分です。
また曖昧な情報のみでも、せっかくの制度改正も、さらなる従業員の仕事と介護の両立支援にはならず、かえって不利益を生む結果になり兼ねません。
現在、すでに各企業において、自社の従業員の仕事と介護の両立支援に関する自社独自の体制整備を行っている企業も増えてきています。
しかし、そのような場合も、厚生労働省は、今回の制度改正はあくまで法令上のものであり、すでに法令を上回る支援策が企業において取り組まれている場合は、その点も含め、さらなる柔軟な体制整備を求めています。
従業員の仕事と介護の両立支援のために、より良い支援策を企業独自で取り組んでいたことが、今回の制度改正に合わせる形を取ることで、かえって従業員にとっては不利益にならないように、柔軟に制度改正を取り入れてほしいということです。
さらに内容によっては、労働契約法の規定を参照し、企業側と従業員側とでよく話し合い、労使間の合意が必要になることにも留意しましょう。
いずれにしても、仕事と介護の両立に取り組む働く介護者の、さらなる一助になるよう体制整備を進めていくことが重要です。

毛利紗代(もうりさよ)写真

毛利紗代(もうりさよ)

1976年生まれ
50代で若年性認知症を発症した父親を介護するシングルケアラー
気づけば介護者歴十数年。その間に自身も介護離職を経験する。その後、再就職・転職をしつつ、現在、仕事と介護の両立を実行中。
自分と同じシングルケアラーとの出会いに救われた経験をもとに、介護者支援活動にも取り組む。

参照

厚生労働省 育児・介護休業法について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
『事業主の皆様へ
子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!』
厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室) リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000582033.pdf

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