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仕事と介護の両立コラム 育児介護休業法に関する基礎的な知識を再確認しましょう

2019.09.20

仕事と介護の両立をすすめる上で、企業・従業員の双方が、育児介護休業法について正しく理解しておくことの重要性を解説いたします。

■仕事と介護の両立を後押しする法律

我が国では、ここ数年、多方面において労働者の働き方改革についての検討・取り組みが進められています。
働き方改革が進められる中で、第一次ベビーブームのいわゆる団塊の世代が75歳以上となる超高齢化社会を目前に控え、従業員の「仕事と介護の両立」においても、各企業、各職場での取り組みが注目されています。
超高齢化社会は必ず訪れます。そして、その介護をおそらく担う団塊ジュニア世代が、超高齢化社会が訪れる頃、ちょうど50歳代前半の年齢であることが想定されるからです。
労働者層で言えば、企業においても、また社会全体を考えても、往々にして生産性が高い労働者となる年齢層です。
このことからも、働き方改革の中でも特に、各企業において、従業員の仕事と介護の両立支援はもはや必須と言えるでしょう。
そのような中、仕事と介護の両立への取り組みがよりスムーズに展開され、各職場で活用されるよう、平成29年10月に「改正育児介護休業法」が施行されました。

■利用規定は育児介護休業法で定められている

育児介護休業法は、従業員の仕事と育児や介護の両立のより良い実現のために、また企業側にとっては従業員の介護離職を防止し、仕事と育児や介護の両立を支援することで貴重な自社の労働者の確保を行うなど、企業、従業員双方の間で活用されるための法律です。
そのために働きながらの育児・介護に関するいくつかの諸制度、制限や措置、労働者に対する雇用主側の禁止事項などが明記されています。
たとえば、育児介護休業法における「介護休業制度」とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護環境の整備のために就業を休む場合に利用できる休業をさします。
この「常時介護を必要とする状態にある対象家族」についても、要介護状態に関する判断基準と家族の範囲(労働者からみた家族の中の関係性)がきちんと定められています。
このように、仕事と介護の両立の実現のために、各種制度、その利用規定が育児介護休業法によって定められており、企業・従業員の双方でこれら法令を正しく理解し活用していくことは重要です。

■なぜ、法令の正しい理解が必要なのか

育児介護休業法の活用を考える際に、混同しやすい法令に「介護保険法」があります。
仕事と介護の両立を考える働く介護者にとって、介護保険法における各種制度やサービスの活用は必須と言えるでしょう。一方、仕事と介護の両立支援のために活用される育児介護休業法も同様に、働く介護者にとってその利用は必須です。重要なことは、この2つの法律はまったく別のものだということです。このふたつの法律の違いは、正しく理解しましょう。
例えば、育児介護休業法における対象となる家族の範囲から考えても、父母・祖父母等に限らず、子や孫もその範囲とされています。
介護保険法の対象となる方は65歳以上、または40歳以上の第二号被保険者の方です。このことからも、育児介護休業法を介護保険法と連動して捉えてしまうと、制度を利用する従業員からみて40歳以上の子と孫になるので一般的には考えにくい状況かと言えます。
また、もし企業が法定内の規定以外に、自社の従業員に対する仕事と介護の両立支援のためを考え独自の規定を企業内において設定されたとしても、育児介護休業法の本来の法令を正しく理解できていなかったら、独自に設定された自社の規定が活かされない状況も出てくるかも知れません。
それは、自社の従業員のために体制整備に取り組んでいる企業にとって、また制度を活用し仕事と介護の両立をはかろうとする従業員においても、とても残念なことです。

■育児介護休業法の正しい知識をつけましょう

各法律や、その法律の下にある各種諸制度の活用において、今一度、それぞれの内容を十分に理解し、正しく解釈し、より良い体制整備に繋いでいかれることをお勧めします。
また、育児介護休業法における各種制度は、就業規則に明記されることや労使協定で規定を定めることが出来るなど、事業主と労働者のための法律です。
事業主と労働者のための法律であるということは、その説明責任は主として事業主にあります。介護保険のケアマネジャーや相談窓口である地域包括支援センターなどで、相談者(働く家族介護者)に対し説明されるべきものではありません。
各企業における人事部や総務部など就業規則を取り扱う部署の担当者は、介護休業等の概要および使い方事例などの説明が出来るようになってください。
さらに、制度の正しい理解や解釈は、自社の従業員の仕事と介護の両立支援に取り組む企業やその担当部署だけに課せられていることではなく、ご自身に必要な制度を充分に活用していくために、従業員(家族介護者)一人ひとりにおいても必要なことではないでしょうか。
企業・従業員の双方で、仕事と介護の両立のより良い実現のために、育児介護休業法の正しい知識をつけましょう。

毛利紗代(もうりさよ)写真

毛利紗代(もうりさよ)

1976年生まれ
50代で若年性認知症を発症した父親を介護するシングルケアラー
気づけば介護者歴十数年。その間に自身も介護離職を経験する。その後、再就職・転職をしつつ、現在、仕事と介護の両立を実行中。
自分と同じシングルケアラーとの出会いに救われた経験をもとに、介護者支援活動にも取り組む。

■参照
厚生労働省 育児・介護休業法について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
厚生労働省「育児・介護休業制度ガイドブック」
www.lcgjapan.com/pdf/20160108.pdf

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