TOP > 仕事と介護の両立コラム > 仕事と介護の両立における働く介護者の疑問や想いを周囲に伝えることの有効性

仕事と介護の両立コラム 仕事と介護の両立における働く介護者の疑問や想いを周囲に伝えることの有効性

2019.07.22

現代の家庭や家族に対する価値観の多様化に伴い、介護者が自身の介護に対する想いや希望を周囲に公表することは、家族介護を、また仕事と介護の両立をより良く続けていくために重要であるということを解説いたします。

■介護が初動の時期の家族介護

家族介護は、多くの場合、家族等の病気や障害をきっかけにある日突然またはじわじわとはじまります。高齢者の介護に限らず、子ども等の看護の場合もおそらくそうでしょう。
そして、介護者となった家族は、これまでの生活に加え介護(看護)、のことなど、たくさんのことを抱えた状況になります。
働いている場合は、仕事と介護の両立についての悩みも始まるかも知れません。
場合によっては介護(看護)を理由に仕事を辞めようとする、いわゆる介護離職を選択したり、検討したりすることが頭をよぎるかも知れません。
多くの家族介護者が、この介護の始まりの時期に何をどうしたらよいのか、何をどこに相談すればよいのか、介護者によっては正に「自分がわからないことが、わからない。」状態に陥りやすくなることが多く見受けられます。
わからないこともわからないまま、選択肢も持たないまま、仕事と介護の両立をあきらめたり、介護離職に追い込まれる可能性が出てきやすくなりがちです。

■選択肢を持たない状況での介護離職

このような介護の始まりの「わからないことが、わからない。」状態の中で、仕事と介護の両立をあきらめたり、介護離職を検討したり、まして選択してしまったりすることはとても残念なことです。
介護者にとって、特に介護の始まりの段階で、「選択肢を持たない」状態はとても不平等なことだからです。
人は誰しも、人生の岐路に立った場合、何かを比べたり、選んだりして自分自身の人生を進んでいくことがなされるべきです。
特に現代は、その機会が男女平等にあることを目指しているはずです。もちろん、仕事よりも、介護者自身の私生活よりも、今は病気や障害を患った家族中心の生活を考えたい方は、それもまたその人の想いであり選択でしょう。
しかしながら、「仕事を辞めて、介護をすることしか考えられなかった。」「仕事と介護の両立なんて出来ると思わなかった。」「介護がはじまっても、仕事と介護を両立したいと言っていいと思わなかった。」。そんな介護がはじまった途端に人生の選択肢がなくなることはあってはならないことです。自分だけで介護を担うことを余儀なくされたり、仕事と介護の両立どころか、仕事と介護の両立の方法を模索することにはまったく触れることなく、介護離職に陥ったりすることはあってはなりません。
そして、介護者が、上記のような自身の仕事と介護の両立に関する状況や想いを発信することすら、実際にはどうすればよいかわからない場合が多いのも介護のはじめの時期にありがちな状況です。
私たちは、今、そしてこれから、働く家族介護者の仕事と介護の両立、介護離職防止など介護者支援に取り組むとき、まずはその点から考えていくことが必要でしょう。

■「仕事と介護の両立」のために、周囲に家族介護者の主張を伝える

これまでの我が国の介護は、主にその家庭の主婦層が担い、女性の家事労働の中の一部のような考え方をされてきた歴史があります。その文化的背景も相まって、仕事と介護の両立、という発想はイメージしがたいものでした。しかし、現代は違います。介護をしながら働く方はたくさんいます。男性も介護を担う時代になりました。なぜなら、現代は、男女ともに、性別関係なく労働者としての立場を社会の中で確立し、夫婦ともに家庭内でも同等の役割があり、また息子・娘、長男・長女など家族内での子どもの立場に関わらず、親やその他家族の介護に対する考え方も変化してきたからです。
さらに、いろいろな場面で人の価値観が多様化しています。結婚観、家庭の在り方、男女の役割に対する個人的な考え方に至るまで、その価値観が多様化している我が国において、家族介護の場面においてもそれは同じことです。一人ひとり、各家庭において、その家族介護のあり方もまた多様化しているはずです。
それは何も身勝手なことではなく、介護者のワガママでもなく、介護者の当然の権利であり社会全体における変化と言えるでしょう。
自分自身が家族の介護をどのように担いたいか、仕事と介護の両立をどのように考えるか、介護生活の中で何に一番比重を置くか、介護者はもっと主張をすべきですし、主張しても良いのです。
言うなれば、それこそが価値観が多様化した現代の家族介護であり、家族介護、仕事と介護の両立をスムーズに行っていく秘訣でもあるでしょう。
さらには、その主張を一緒に介護状況を担っていく介護の専門職の人たちや会社の方、家族や親せきなど周囲の人たちにはっきりと伝えることは言うまでもありません。
先に述べたように、介護がはじまったばかりの時期に、介護者が何もわからず選択肢を持ち合わせていない状況は往々にしてあり得ます。従ってまずは何もわからずとも、自分自身がこれからはじまる介護や仕事と介護の両立をどうしていきたいのかという主張、ただそれはストレートに遠慮せず発信されるべきです。
そうすることが、自分の家族介護を、仕事と介護の両立を自分自身でコーディネートしていく第一歩になるはずだからです。

■とりまく関係者で介護者の想いを共有し仕事と介護の両立を図る

超高齢社会を目前に控え貴重な労働者層を社会全体で確保しなくてはならない我が国において、超高齢社会への対策、労働者層の確保、そのどちらも解決するためには、仕事と介護の両立支援、介護離職防止に対する取り組みはもはや必須です。
国だけの課題ではなく、各企業、各業界においてまったく他人事ではありません。家族形態や結婚観が多様化する現代において、従業員、雇用主である企業側両者にとっての課題であると言っても過言ではないでしょう。
そこに働くひとがいる限り、仕事と介護の両立、またその支援対策は必然なのです。では、そうであるならばなおさら、仕事と介護の両立、介護離職防止を考える際に、まずは家族介護者自身の介護に対する想いや希望をきちんと公表することはとても大切なことです。

自社の従業員が介護に対する自分自身の想いや希望を伝えられずにいたら、伝えることに躊躇していたら、ぜひ声に出すよう背中を押してあげてください。
より良い介護生活を続けていくためには、仕事と介護の両立を行っていくためには、とても重要なポイントです。

毛利紗代(もうりさよ)写真

毛利紗代(もうりさよ)

1976年生まれ
50代で若年性認知症を発症した父親を介護するシングルケアラー
気づけば介護者歴十数年。その間に自身も介護離職を経験する。その後、再就職・転職をしつつ、現在、仕事と介護の両立を実行中。
自分と同じシングルケアラーとの出会いに救われた経験をもとに、介護者支援活動にも取り組む。

■参照
厚生労働省
市町村・地域包括支援センターによる
家族介護者支援マニュアル~介護者本人の人生の支援~
www.mhlw.go.jp/content/12300000/000307003.pdf

記事一覧

サービス一覧

お気軽にお問い合わせください

03-6869-4240

メールで問い合わせる

ページの先頭へ