介護離職ゼロ

2018.08.20


今年(2018年)7月13日総務省から「平成29年就業構造基本調査」が公表されました。
5年前の「介護離職者10万人」から増えるのか減るのか、いろいろな憶測が私の周りでは飛び交っていました。

介護離職ゼロ

2015年9月24日に自民党本部で当時の安倍総裁がアベノミクス第2弾として打ち出した新三本の矢。その一つが「安心につながる社会保障:介護離職ゼロ」でした。
その後2016年6月2日に、一億総活躍プランの中の1つの大きな課題として「安心につながる社会保障:介護離職ゼロ」は国を挙げて取り組むことが決定しました。

なぜ、「介護離職ゼロ」という政策を打ち出したか。その誘因の一つとなったのが、平成24年就業構造基本調査の結果「介護離職者10万人」です。

平成29年就業構造基本調査

一億総活躍プランの政策が続く中、今年(2018年)7月13日
総務省から「平成29年就業構造基本調査」が公表されました。
結果は9万9100名。
「介護離職者数は横ばい」「介護離職ゼロ、効果なし」などという言葉がネットに書かれていました。5年前の介護離職者10万にとの比較だけに終わらない、もう少し深堀した記事はないのか探したけど、見つからず。であれば、自分で書こうと思った次第です。

私が注目したのは2つ

1つは介護をしながら働く人の変化
もう一つは介護離職者の5年間の推移
そして、この介護離職者5年間の推移に、介護離職防止のヒントがあることに気づきました。

介護をしながら働く人の5年前との比較


平成24年就業構造基本調査と今回の平成29年就業構造基本調査を比較して、介護をしながら働く人の推移を考察します。
全有業者は5年間で179万人増えています。それに伴って働きながら介護をしている人は55万人増えています。全有業者に対して、介護をしながら働く人の割合でいえば、4.5%だったのが、5年後には5.2%に増えています。
年齢別でみていくと40歳から49歳で働きながら介護をしている人の割合のみが下がっており、そのほかの年齢層にあたってはすべて増えています。ただこれは割合が下がっているだけで、実質の人数でいえば40歳から49歳の働きながら介護をしている人は増えています。

何が言いたいかと言えば、
「介護をしながら働く人はいます。」「介護をしながら働くことは可能です。」ということ。

介護離職者5年間の推移

下図を見れば一目瞭然。

2015年10月から2016年9月の介護離職者が81,200人。
前年度から18,900人も減っているという結果から考察できることが、介護離職防止の大きなヒントではないでしょうか。

私たちの身の回りでは「介護離職ゼロ」が国策になってから、介護離職防止対策や仕事と介護の両立支援が始まったという企業もあれば、いまだに何も始まっていない、という会社もあります。これこそが、まさにその効果ですね。

2015年10月から2016年9月に何があったのでしょうか

「介護離職ゼロ」という国策がもたらした効果

私は2014年から「NoMore介護離職」と旗を揚げ、訴えています。
当時、「介護離職」なんて言葉を知っている人はほとんどいませんでした。

ところが、2015年9月24日に国のトップが「介護離職」って言葉を口にしたとたんに、テレビや新聞、インターネットなどの媒体で毎日のように「介護離職」という文字が目に付くようになりました。
そして、マスコミは私に安倍政権の「介護離職ゼロ」の対策に対しての意見をくれと殺到しました。
そんな中、私はどの取材でも同じことを言いました。
「評価します」と。

なぜなら「介護離職」という言葉が流布したからです。
しかも一夜にして一気に。

それまでどんなに私が叫んでも、届かなかった「介護離職」という言葉が
一夜にして一気に日本全国に広がりました。

政府の言っている「介護離職」という言葉の意味は、
介護が始まるまで勤めていた会社を介護を理由に辞めることと言い
介護職員の離職問題のことではありません。

しかしながら、いまだに「介護離職ゼロ」は介護職員の離職問題のことだと思っている方もいらっしゃいます。

言葉の意味の相違について、私はとやかく言っていません。
だって、介護職員の離職問題も大きな社会問題ですから。

つまり、「介護離職」という実態や、そのためにつくった政策を評価しているのではなく
介護離職という言葉を流布したことを、私は評価しています。

介護問題の根底に「わからないことがわからない」という状態があります。
概念もないから、調べる由もない、という状況もしかりです。

「介護離職ゼロ」「介護離職しないでね」「介護離職すると大変だよ」と、どんちゃんどんちゃん騒げば
人々の目や耳に届き、
その都度、届いた人々に様々な感情を抱かせます。
「介護離職って何?」
「そんなこといったって、介護をしながら働くのは無理でしょ!」とか
「介護離職しないためには、じゃ、どうすればいいの?」とか

そういう疑問や不満が介護離職に歯止めをかけていたのです。

その結果として、メディアをはじめに、企業や行政や個々人がざわつき始めました。何かしなくちゃって思い始めました。何かを始めた人や団体も少なくありません。

そして、
2015年10月から2016年9月の介護離職者が81,200人。前年度から18,900人減。
と数字として表れてたと私は考察しています。

辞めなくてもいい人が辞めなくて済んだのです。
介護は家族がやるものだと思い込んでいた
とか
介護サービスを使えばなんとかなりそう
とか
考え及んでくれたのではないかと考察しています。

「介護離職者99,100人、横這い、効果出ず」ではないということです。
効果は出始めていたのです。

では、介護離職者減がなぜ1年間だけなのか・・・

2015年12月25日 大手広告代理店で過労自殺が起きました。
刑事事件に発展したこの事件は政府を動かします。
2016年9月に政府の働き方改革の動きが活発になりはじめました。
そして、マスコミはこぞって「働き方改革」の記事を書いたのです。
介護離職ゼロという言葉はこのころからメディア露出の機会を失い始めました。

「介護離職ゼロ」の啓発を終わらせないために

今年の4月に経団連が「トモケア」という仕事と介護の両立支援の方針を出しました。

その対策に「経営トップによるメッセージ」とあります。

2017年5月から6月にかけて経団連が経団連の雇用政策委員会と労働法規委員会の委員企業(計 232 社)に行ったアンケート調査では「経営トップからのメッセージ発信」という項目に対し、仕事と介護の両立に関して、経営トップからメッセージを発信している割合はおよそ3割でした。
これを多いと受け止めるか、少ないと受け止めるか、私個人としては少なすぎると感じました。なぜなら、このアンケートは雇用や労働環境に興味関心の高い企業に対してであり、つまり経済界全体として考えれば3割どころの話ではなくなる、とういことが想像に難くなかったからです。

だからこそ「トモケア」の取組みには「経営トップからのメッセージの発信」を入れてもらいました。

そして、この「経営トップからのメッセージの発信」がいかに重要かつ効果的な対策であるかが今回の「平成29年就業構造基本調査」の結果からみてもわかるのではないでしょうか。

国のトップが「介護離職ゼロ」と言って心に届いた人々がいます。
企業のトップが「介護離職ゼロ」と言えば、より、働く人の心に届きやすくなります。
そして、気づいていなかった人に「え?働きながら介護ってできるの?」という疑問を抱いてもらうきっかけができます。


介護の怖いところは
「わからないことが、わからない」ことなのです。

私たち介護者の不幸は「選択肢が見えなくなること」です。
家族に介護が必要な状態になったって、私たち介護者の人生の選択肢はあります。
ただ、「わからないことがわからない」「わからないことにも気づけない」という状況です。
その状態から、人生の選択肢を見出すのは至難の業なのです。

「介護離職ゼロ」という言葉は、届いた人々の中で何かの気づきを起こすことができます。
「わからないことが、わからない」に対して、何かの気づきを起こすことができるかもしれない。
発信した人の思惑通りの気づきじゃないことのほうが多いでしょう。
それでも、発信する意味はあると信じています。

気づきをもった人を次にいざなう対策があればいい、それだけの事だと思うから。

何より、いまは
寝た子を起こすことが大事

それが「介護離職ゼロ」という政府と連動したメディアの動きがほぼなくなった今
だれがやるのかと言えば、
次は経営者がやるしかないでしょ。

お金はかかりません。
講師を呼んで講演会をしろと言っているのではありません。
貴社の社長が経営陣が「介護離職ゼロ」と言い続ければいいだけです。

最後に


「介護離職ゼロ」と国策になって約2年。
賛否はあるけど、国が動いていないことはありません。
同じものでも、立場を変えれば見方や感じ方が変わるだけで
動いていない、ということはありません。

ただ、国の政策が今日の明日に民の生活を変えることができないだけです。

だから、いまこの瞬間、介護をしている私たちの生活が劇的に変わっていないだけです。

じゃぁ、いまこの瞬間、困っているひとはどうしたらいいのか
「家族介護者に対するセーフティネットはない、という事実を受け止め、会社は辞めない。」ことから始めます。
そして、「困ってます!」と発信して下さい。

きっと一緒に考えてくれる人がそばにいるはずです。
そして、あきらめないことです。
だって、介護をしながら働く人は存在するわけですから・・。

そのあきらめない姿勢が「介護離職ゼロ」の形として誰かの目に留まり、また誰かの介護離職を止めることができると信じてください。
それも事実です。

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