介護離職しない、させない

2018.05.31

2018年5月21日(月)経団連ホールにてシンポジウム「仕事と介護の両立支援の一層の充実に向けて」を実施いたしました。参加者全員に経団連のまとめた報告書の冊子『仕事と介護の両立支援の一層の充実に向けて~企業における「トモケア」のススメ~』が配られました。

4月17日から経団連のホームページで『仕事と介護の両立支援の一層の充実に向けて~企業における「トモケア」のススメ~』の報告書は公開されています。介護離職防止および仕事と介護の両立支援に向けて、経済界がやっと本気になった、といえるでしょう。

そこで、「ここからがスタート」という意味も含めて、今一度「介護離職防止」とは何か「介護離職を防ぐ方法」の基本を押さえておきましょう。

介護離職とは

介護離職とは介護が始まる前まで勤めていた会社を、介護を理由または介護がキッカケで辞めることを言います。総務省統計局の「平成24年就業構造基本調査」(平成25年)によると、介護や看護のために前職を離職した15歳以上の人口が2011年10月から2012年9月の1年間に10万人を超えました。この事実を受けて、当時の第2次安倍内閣において2016年6月に「ニッポン一億総活躍プラン」の中の新三本の矢として「介護離職ゼロ」を閣議決定しました。つまり介護離職の防止が国策となったのです。

介護離職は“問題”なのか

介護離職を国が「問題だ!」とする理由は諸説ありますが、一つには国の財政難に影響が出ることです。社会人が介護をきっかけに勤めている会社を辞める、ということはその方の所得がなくなるわけで、納税が出来なくなります。つまり国の大きな財源である「所得税」が減るのです。

ただでさえ、高齢社会で社会保障費の増大による財政難はもっと大きな問題となっていくなかで、収入源である所得税が減るということは国家運営上、現在は危機的状況にあると言っても過言ではないのです。そこで国策として「介護離職ゼロ」を掲げたと言われています。では「介護離職」は問題なのでしょうか。私は一概にそうとは言い切れないと思っています。「意思のある介護離職」については、否定されるべきものではないと思います。通常の「離職」と同じです。

ひと昔前までは、「会社は勤め上げるのが当たり前」「定年まで奉公するのが当たり前」みたいな空気がありましたが、いまは「離職」も「転職」も個人の自由意思です。ただ、現在の日本において「意思のある介護離職」は極端に少ない気もしています。つまり「介護離職するしかなかった」ということです。

これは何としてでも阻止したい。阻止すべきである、というのが「介護離職ゼロ」です。

介護離職のリアル

正直言えば介護離職はおススメはいたしません。そうは言っても、私は介護離職しておりますので説得力に欠けるかもしれませんね。ただ、サラリーマンをやっていた時より給与は激減しておりますし(一時は7分の1まで激減しました)、職業的に安定もありません。

もちろん、やりたいことを仕事にしているので、不満はないですけど、不安はいつもあります。定年はありませんので、体力のつづく限り働くしかないですね。
私の話しはさておき、介護離職すると精神的・肉体的・経済的に負担が増える、というデータもあります。介護離職の恐怖は勤めていた会社を辞めたあとじわじわやってきます。

会社を辞めた瞬間は、やはりどこかホッとします。気になって仕方がなかった要介護者をいつでも介護できるし、見守りが出来るので、見える安心があります。ただ、介護だけの生活が少しつづくだけで、会社に勤めていた時とは違ったストレスがやってきます。

もちろん、収入が入ってこない不安というのは日に日に大きくなります。「会社を辞めても介護は終わらない」という事実を目の当たりにすることでしょう。そして、焦って就職活動を始めたところで、今度はなかなか就職が決まらないというストレスがやってきます。面接にさえたどり着かない状況に、自分を否定されたような感覚になり、引きこもっていく、ということも考えられるのです。
いまの会社では介護をしながら働くことに不都合があるのであれば、介護離職ではなくせめて介護転職をお願いします。

介護離職の3つの兆候

介護離職にいたる原因に3つの傾向があります。
①介護の初動で心が折れる
②介護を自分でやらなきゃ、で心が折れる
③介護を誰にも言えずに心が折れる
この心が折れる前に、支援につなげられると多くの介護離職が防げるのではないかと考えています。

介護の初動で心が折れる

「介護は初動」と言えるほど介護のはじめは本当に大事だし、本当につらいです。

対象者に対する「なんでこんな風になっちゃったの」という、やるせない想いや「何からどうしたらいいの?」という、身動きもできない歯がゆさ、いろいろな思いが交錯してパニックになります。

特に行政手続きや医療手続きなど、準備不足による二度手間三度手間は度重なると、気力と体力を奪っていきます。そんなあたふたしている間も仕事は通常通りあるのです。

集中力はかけるし、平日に介護のことで体がとられるし、で仕事が十分にできなくなることもあります。そのように心身ともに弱っているところに、例えば親戚から「親の面倒は子供が見るものだ」とか、例えば職場で「親のそばにいてあげたほうがいいのでは?」などの言葉をかけられたら「とりあえず会社を辞めて落ち着いてから先のことを考えよう」などと思ってしまい、介護離職にいたる、ということになりかねませんのでご注意ください。

介護を自分でやらなきゃで心が折れる

「介護は家族がやるものだ」「親の面倒ぐらい自分で何とか出来るはず」などという思い込みや決めつけは生命の危機にもつながる可能性があります。

特に、「最初に自分でやるって言ったし」ということに固執すると、身動きが出来なくなるのでご注意ください。

考えは変わるものです。考えが変わることは無責任なことではありません。また、介護をプロに任せる選択肢をそもそも持っていなかったり、プロに任せる方法を知らずに、自分で抱える、という方もまだまだいらっしゃいます。
なぜ、「介護職」という職業があるのでしょうか。彼らは家族介護のサポート職ではありません。要介護者をクライアントとした介護のプロです。介護は素人にはできません。だからプロがいるのです。

そのことを改めて考えるべきではないでしょうか。家族が介護従事者のように対象者の介護に関わることを否定するつもりはありません。ただ、その場合は、必ず介護の技術を学ぶべきでしょう。手技はもちろんのこと、接し方など、心理的なテクニックも習得することを強く薦めます。
働きながら介護をするのであれば、介護、つまり、対象者の生活支援のどの部分にどのように関わりたいのか、そういったことをしっかりと自分に向き合って考えるといいです。「自分はどうしたいのか」です。対象者がどうのこうの、とか、お金がどうのこうのとか、ではなく、まずは「自分はどうしたいのか」「自分はどのような生活をしたいのか」「自分はどのように介護に関わりたいのか」の答えを持つべきでしょう。

それが明日変わってもいいと思っています。そうではなく、「いまどうしたいのか、自分に向き合う」これが介護者には大事なことなのです。
外野からの圧力で介護を抱えることもあるでしょう。よく考えてください。あなたの人生です。自分の人生です。

あなたは十分な大人です。

自分の人生を誰かのせいにするのですか。そうは言っても、ひとりではどうしようもないのであれば、私たちのような介護者支援団体や地域包括支援センターなどに相談にいってください。

一人で考えていても時間の無駄です。何かいい方法が必ずあります。大事なことは諦めないことです。
私は介護者の先輩によく言われていた言葉があります。「あなたが(お母さんの介護を)やるから、誰もやらないのよ。あなたがやらなきゃ、誰かがやるから大丈夫よ。」と。

介護を誰にも言えずに心が折れる

これも辛いですね。特に、職場で介護の話ができないのは辛いです。

私たち働く介護者の日常で多くの時間を過ごすのが職場です。そして私たち働く介護者の日常には介護があります。日常で日常の話ができない状況はストレスが溜まると予想に難くないのではないでしょうか。
仕事と介護の両立にはやはり、職場の協力、会社の理解が必須です。その最たる姿が「話を聞いてくれる職場」です。

ランチ時などに、ただ日常の介護の話を聞いてくれるだけで十分なのです。何かアドバイスを求めているわけではありません。なんなら、聞き流してもらってもいいのです。

私たち介護者にとって介護は日常であり、会話に出てくることは無意識なのです。それを聞き流してくれるだけで十分です。無意識な介護の話を意識をしてしないようにする方がストレスになるのです。
平日の休みなどで、多少のご迷惑をおかけすることもあります。でも、それはインフルエンザや風邪などの病気においても同じであり、誰にでもあり得る話ではないでしょうか。

もちろん突発的な緊急事態はあります。突発的な緊急事態が頻発したら、それはもはや突発駅な緊急事態ではないので、介護体制の再構築をすればいいだけです。
そうはいっても、まだまだ介護への理解は浸透していないのが現実です。

職場で介護の話ができない人も多いです。では、介護離職防止の観点からすれば、職場で介護の話が出来なくても別の場所で介護の話が出来れば、まだストレスを軽減できる、といえます。そんな場合は会社の外に介護の話が出来る場所を探すことをおススメします。

介護者の会がその代表でしょう。またはSNSなどで日々の想いをつぶやいてもいいと思います。介護者仲間が出来ることもあります。
とはいえ、今後の日本社会を考えれば、職場で介護の話ができることは必須でしょう。つまり、あなたが勇気を出して、介護の話をすることで、何かが変わることもあります。無理のない範囲で、そんな努力をしてみるのもいいと思います。

介護離職を防止する

企業における介護離職防止は「情報提供」と「相談窓口」これに限ります!
情報提供の情報とは
①介護の心構え
②介護になったらどのように行動したらいいのか
③介護保険の基礎
④育児介護休業法における各種制度
⑤相談窓口
最低でもこの程度は提供したいものです。

情報提供をする「相談窓口」であり、個別対応をする「相談窓口」であり、したがって、極論をいえば、相談窓口さえあれば、何とかなります。

重要なことは、この相談窓口を周知させることです。介護者の不幸は選択肢が見えなくなることです。情報をくれる相談窓口を知っていて利用しないのと、知らなくて利用しないのでは大きな差です。

介護離職防止や仕事と介護の両立において、社内制度の利用率を気にする企業がいますが、大事なことは利用率よりもまずは周知率です。

介護離職防止には介護が始まる前からの情報提供の機会の提供が重要になるでしょう。
つまり「介護の初動セミナー」や「ハンドブックの作成」です。介護未経験者向けの介護離職防止を目的とした「介護の初動セミナー」は5年は続けてやりましょう。そして最低でも「地域包括支援センター」および社内支援制度を全員が知っているという状況を作ります。

また、介護離職防止のためのハンドブックは簡易なものでもいいので、できれば毎年配布したいです。ハンドブックよりもリーフレットといったイメージでしょうか。介護に興味がないと捨ててしまうこともあるのですが「いざ介護?!」という時にハンドブックやリーフレットなど持ち運べるものは便利です。

情報提供の周知率アップにはこういったアイテムを活用するのも一つの方法でしょう。
介護離職させたくないけど、何をどこからどのように手を付けたらいいのかわからない、そんな企業も少なくありません。業態や従業員の状況に合わせて一緒に考えてくれるコンサルティングを入れるのも一つの手法でしょう。いまだからできること、考えてみてください。

介護離職をしない

介護者の会「働く介護者おひとり様介護ミーティング」和気あいあいと開催中!

介護離職をするもしないも、あなたの意思です。周りが出来るのは「介護離職しない方がいいよ」と言うことと「介護離職しないための知恵や方法を探す」ことだけです。

決めるのはあなた次第だということです。
介護離職をしないために、あなたがすべき最低限のことは、会社でも地域でも病院でも家族でもどこでもいいので「介護離職したくないんです!どうしたらいいですか」と言うことです。

言い続けることです。その勇気と気力さえあれば、なんとかなります。協力してくれる人は必ずいます。あきらめないことです。
どうしても協力してくれる人がみつからない、とか、あきらめそう・・と心が折れそうになるのであれば、ワーク&ケアバランス研究所の介護者の会「働く介護者おひとり様介護ミーティング」にご連絡ください。あなたに寄り添って一緒にあなたの人生を考えます。

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