仕事と介護の両立コラム

これからのケアハラを考える

2018.01.15


ケアハラに対する法改正後の内容を解説し、施策への新たな視点の置き方の必要性を説明いたします。

不利益取り扱いとハラスメント

近年、高齢化と共に、働きながら家族などの介護を担う働く介護者が増加し、企業においても自社の従業員に働く介護者がいること、または今後増えることを想定した職場としての制度整備や対応策への取り組みが多くの企業で日々模索されているところです。
また政府としては、そのような働く介護者への法整備の一環として、平成29年1月から、「改正男女雇用機会均等法及び改正育児・介護休業法」が新たに施行されました。
この改正法では、事業主として各ハラスメントに対し防止措置が新たに義務付けられていることと、さらに上司や同僚などから就業環境を害する行為について、法改正前の従来から禁止されていた事業主から労働者に対する「不利益な取り扱い」と、「ハラスメント(嫌がらせやいじめ)」をきちんと区別し明記されていることが特徴です。
よって、企業側が従業員に対し不利益な取り扱いを行わないことはむしろ基本的なことであり、さらに各ハラスメントを防止するための措置を講じることが大きな目的とされています。

働く介護者にとっての不利益とケアハラ

では、上記「不利益な取り扱い」と「ケアハラ」は、どのように区別されるのでしょうか。
元来、いずれにせよ、従業員に対しあってはならないものですし、そのような対応をされた従業員はそれによってひどく精神的に傷付けられたり、場合によっては権利を侵害されることはもちろんです。
法整備でも述べたように、これまでも職場における従業員の不利益な取り扱いの禁止については重要視され対策が取られてきたはずですし、また従業員自身も、雇用において正当な対応を求めてきた歴史があるかと思われます。
よって、例えば、働く介護者の場合でいえば、私生活の中で家族に要介護者がおり、その介護を従業員が主として担っていることで職場内で不当な評価を受けたり、または採用の際に、従業員の能力とは別に雇用に繋がらない理由として働きながらの介護があげられるなどが、不利益な取り扱いとして考えられます。
また、ケアハラについては、例えば男性(息子)が親の介護を担っていることについて、「介護はそもそも男性のやるべきことではない。」など差別的な言葉が向けられたり、「在宅介護から施設入所への移行について、第三者から理不尽に悪い評価をされる」など、もっと介護全般における、一見介護に対する偏見やあくまで発言者の個人的主観ともとれるような言動を向けられ、働く介護者に限らず多くの介護者にとって、精神的にもダメージが強いことかと考えられます。

介護環境の整備を考えるのは

このように、不利益な取り扱いとケアハラは、介護者に向けられる理不尽さや権利侵害にも繋がる社会問題と言えます。
いずれにしても、介護者にとって何も良いことはありません。また企業側においても、社会的にもメリットとなることは考えにくいです。
しかしながら、この法律を追行するにあたり、企業側だけに課題があるのでしょうか。
もちろん、企業・事業主として施策に忠実であることは必要でしょう。しかし、働く介護者においても、自身の介護生活をより良く快適に整えていくこと、介護する環境を整えていくことに視点をおく必要もあると考えられます。
むしろ、働き続けるために、介護環境の整備を行う、行っていきたいと発信し、情報や理解を求めていくことは、働く介護者にとってもっとも大事なことだともいえるのではないでしょうか。
言うなれば、今、この法律を運営していく上で、企業はだれが介護をしながら働いているのかを把握する必要があるし、従業員が仕事と介護の両立のために情報や支援を求めたり、職場や上司に対し「介護が始まった」という意思表示を行うことに当たり前に対応していかなくてはいけないのです。
そうは言っても、まだまだ仕事と介護の両立支援は国全体で発展途上の課題でありますので、従業員が求めることすべてにどの企業も完璧に対応するには至っていないかもしれません。しかし、少なからず、その努力を怠ってはいけないのです。従業員もそのような変化に視点を向けていく必要はあるでしょう。

双方に必要なこと

ケアハラに限らず職場における不利益な取り扱いやハラスメントは、従業員個人の権利を侵害したり、従業員各人の職業人としての能力を十分に発揮することを阻害する可能性があります。また、企業においても、職場内の秩序を乱したり、業務への支障に繋がる恐れがあるかもしれません。そして、その結果、企業として社会的評価に悪影響を与えかねないことはやはり大きな問題です。しかしながら、今、法改正を終えて、働く介護者も増えさらに仕事との両立支援が課題となる中で、この法律や施策において求められていること、考えていかなければいけないことは、企業・事業主と従業員双方でそれぞれがお互いに対し何を考え、伝え、求めたり提供したりしていくべきなのかを一緒に取り組み、双方がお互いのために成長していくことかも知れません。
これまでの「事業主からの不利益な取り扱い」にばかり着目するのではなく、「ケアハラが起こらない、起こさない」ためにお互いの立場で双方が取り組んでいくよう変化が求められているのではないでしょうか。

参照

ケアラーズコンシェル
働く介護者おひとり様介護ミーティング 議事録

働く介護者おひとりさまミーティング議事録


厚生労働省
雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137178.html

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