仕事と介護の両立コラム

意思を確認しておくことの重要性

2017.12.15


介護において、日頃から要介護者の意思を確認しておくことの重要性や、介護者においても自身の意思を伝えておくことの必要性を解説いたします。

家族介護者が抱える意思決定の代行

病気や障害などを理由に、急遽、家族が介護を必要とする要介護者となった場合、そのお世話をする家族もまた急遽家族介護者となります。
そのように介護は往々にして、ある日突然はじまることがほとんどです
。突然、日々の日常の中で介護がはじまり、介護を受ける側も、介護する側も、その介護生活に追われることでしょう。
これまでと違い、何かしらの支援が必要となった要介護者は、そのご自身が必要とする支援を介護者に代行してもらうのですが、それは日々の日常生活に関することだけではありません。
例えば認知症など、何かしらの原因で要介護者に判断能力の低下があった場合、もしくは認知症などの疾患ではなくても、加齢による判断の難しさなどがあった場合、家族介護者は要介護者の意思決定支援も代行することになります。
時には、医療機関等で命に関わるような状況に対して、意思決定の代行を強いられることも珍しくありません。

意思を確認しておくこと

家族介護者にとって、本人の意思決定支援への代行も必要な介護の一つですし、家族介護者であるからこそ、周囲からもその意思決定支援への代行を「家族」という理由で無条件に求められやすい傾向にあります。
しかしながら、意思決定支援はたとえ家族介護者であったとしても、時にたいへんな精神的負担をともなうことも事実です。
例えば食事や飲み物を口から経口摂取出来なくなった状態でよく聞かれる医療的な処置に胃ろうがあります。
家族は医療機関側から胃ろうの処置を行うかどうかという判断を求められます。
しかし、この胃ろうを行うかどうかという判断は、単に経口摂取が出来ないという状態に対してだけではなく、その先で命の選択に繋がっているということが重要であり、その判断を求められる家族は、大きな精神的負担を強いられるようになることもしばしばです。
もし、このように命の選択に繋がるような「延命」に関することを、要介護者となる以前の元気な頃から家族の中でお互いに少しずつ意思確認できていたら。延命に関する判断を強いられるような場面になった場合、家族としては「予てより、本人の意思だから。」と、そう意思決定支援を行うにあたり心の拠り所が出来て、精神的負担が軽減されることが期待できるかも知れません。

介護者自身の意思

前述したように、介護は突然はじまることがほとんどです。
介護がはじまる以前から、家族の中でお互いに自身のこれからについて意思を伝えあっておくこと、確認しておくことは決して早すぎることはありません。
これまで日本の古い文化的な背景や価値観の中には、「死」や「延命」などについて積極的に意見を述べることがタブー視される傾向もあったかも知れません。
しかしながら、近年、「終活」など自身の最期の時を自分らしく迎える準備について、社会全体でかなり意識が向けられるようになってきました。
それは介護を考えるうえでもとても重要な変化で、上記のような要介護者の意思決定支援において、その支援を委ねられる家族介護者の精神的負担の軽減が図られる効果が期待されるからです。
さらに、この自身のこれからについて意思を伝えあっておくということは、例えば高齢の親など年齢的に要介護状態に近い家族に限らず、子ども世代の介護者自身においても言えることで、特に働きながら家族介護を担う働く介護者にとっては、最期の時に限らず自分自身に何かしらの変化があった場合に、周囲に対し仕事のこと、家庭のこと、介護のことなど、どう考えどうしていきたいか、どうして欲しいかということをきちんと意思表示し、伝える用意をしておくことは大切なことです。
介護の担い手である介護者であってもいつ何があるかわかりませんし、担っている役割が多いほど、自身に何かあった際にそれを他者に委ねなければならないからです。

特別な話ではなく家族内の習慣に

しかし、家族でお互いの最期や延命について意思を確認し合っておくと言っても、例え家族間であっても日頃からそのような話を積極的にしておくのはなかなかイメージしづらいかも知れません。
家族がすでに何かしらの病気や障害を患っている場合などはなおさら、話題にするにはそのきっかけが難しいかも知れません。
しかし、例えば年末年始、またはお盆の時期など家族が集まる機会が多いときに、家族一人ひとりの「介護の話」「医療の話」「これからの人生の話」などをあえて話題にし、お互いの気持ちを確認する機会をもつのはいかがでしょうか。
家族の各人が病気や障害、要介護状態の有無に関係なく、自分らしく人生を送るために、家族はなるべくその意思に忠実な支援ができるために、家族の中で少なくとも一年に一回はそのような話題で話をすることを習慣化することをお勧めします。
そして、定期的に話すことを習慣化することで、必ずしも伝えた意思は一度決めたものに限らず、変化するものであることも確認できることでしょう。家族間でお互いがどのような意思をもち希望があるのかということを、その変化も含めて知っておくことが、今後の然るべき意思決定支援を行う時期において、最善の代行支援に繋がるのではないでしょうか。

参照

親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート
村田くみ

理事・アドバイザーの書籍紹介

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