Tel:03-6277-5456

仕事と介護の両立コラム

男性従業員が介護者となるとき

2017.10.25


家族介護における息子介護者に関する実態を説明し、男性従業員への支援の重要性を解説いたします。

日本におけるこれまでの家族介護

これまで戦後の経済成長期において、男性が社会に出て仕事をし収入を得て家計を支え、女性が家庭内で家事や育児を担ういわゆる「性別分業」が確立されてきた時代がありました。
そのような中、介護、特に家族介護についても、自然と女性の家庭内における家事労働の中に位置づけられ、女性の中でも、特にその家に嫁いだ息子の妻が担うかたちが増えていきました。
もちろん、戦前より、我が国における家庭内で高齢の親を介護する家族介護のかたちはありましたが、特に家族介護が増えた背景には、性別分業が確立されていったこと以外に、戦後の衛生水準や栄養水準の向上による平均寿命の延びも影響していると言われています。
しかし、近年、超高齢化社会を迎えようとしている我が国において、高齢者介護、特に子どもが親の介護を担う家族介護をめぐる実情も大きく変化しています。

変化する家族介護の担い手

近年、家族介護の担い手として変化がみられる点は、男性、特に息子が介護者であるという状況が増えつつあることです。
さらに、逆に減少しているのは、息子の嫁が介護者である状況です。厚生労働省の2016年の「国民生活基礎調査」によると、同居者を介護する家族介護者の4割以上は配偶者ですが、次いで多いのは娘(19,9%)と息子(17,3%)ということがわかりました。
また、2001年の同調査では最多の31,0%だった息子の配偶者(嫁)は、以後、比率が減り続け2016年の調査では16,3%でついに息子が介護者である割合を下回りました。
近年、個々人のライフスタイルや結婚観の変化などから独身の男性も増えつつあり、メディアなどでも男女問わずこの話題は取り上げられることが増えています。
しかしながら、家族介護者の担い手において言えば、現在の日本における男性が生涯独身である割合はおおよそ2割程度ですので、決して、男性の未婚率が息子介護者の増加に直結しているとは言い難いものがあるのです。

息子が介護を担う背景

では、なぜ、今、家族介護の担い手に「息子」が増えているのでしょうか。
それには、近年の「少子化」の影響が大きく関わっていると言われています。
2025年に第一次ベビーブーム世代のいわゆる団塊の世代の方々が75歳以上を迎えることが予想されていますが、その主な介護の担い手となるであろう子ども世代は、第二次ベビーブーム世代と言われる方々です。団塊の世代の方々の子どもなのでそれ以降の年代と比べると多いとはいえ、数で言えば確実に親世代よりも少ないことはすでに明らかです。
さらにそれに加え、女性の働き方の変化など社会進出が目覚ましく、先に述べた戦後の経済成長期のような「性別分業」にも変化が見られています。
女性にも男性と同じような社会的役割が増え、社会的にもまた家庭においても、男女問わない各人それぞれの立場が確立されつつあるからです。
よって、家庭内における介護の担い手として息子の嫁がいなければ、娘がいなければ、息子が親の介護を担うかたちも自然と各家庭内の選択肢として出てくることが考えられます。

企業における男性介護者への支援

このように、家庭内において息子がその親の介護を担う状況は年々増加傾向にあります。
昨今、既婚・未婚に関係なく決して珍しくない状況です。また、傾向として、多くの男性は、自分一人で介護を担うことが親に対する息子としての責任感の強さだと思い込んでいることが多く、家族介護を一人で抱え込みがちのように見受けられます。
元来の男性的な思考から、女性よりも外部に支援を求めることが苦手なのかも知れません。
実際に、厚生労働省の要介護高齢者に対する虐待加害者のうち、娘が17,1%なのに対し、息子は40,3%と息子による虐待が突出して多いこともわかっています。
息子介護者が精神的にもギリギリの状態まで、自分一人で介護を抱えている状況が伺えます。
今後、企業内においても、50代前後の社員が働きながらの介護を担ったり、仕事と介護の両立に悩むことも増えることが予測される時代です。おそらく、この流れでいくと、女性社員が娘や嫁の立場で家族介護を担う一方、往々にして男性社員が息子介護者として家族介護の担い手となる従業員も増える可能性は否めません。
また残念ながら、日本の社会保障制度の多くは、その情報すら、当事者自らが求めなければ結びつかない、得られないことが未だ多いのが現状です。
企業内における仕事と介護の両立支援やワークライフバランスへの取り組みを考える部署に置かれましては、ぜひこのような家族介護者の担い手である息子介護者に関する傾向にも関心を寄せて頂き、当事者となった従業員への必要な情報提供や家族介護者をめぐる時代背景等も併せて周知され、仕事と介護の両立支援や介護離職防止に取り組んで頂けたらと思います。

参照

厚生労働省
2016国民生活基礎調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html
東京都健康長寿医療センター研究所
研究所ニュース No.280
経済と人口がつくる家族介護の姿
http://www.tmghig.jp/J_TMIG/J_index.html
勁草書房 「介護する息子たち」
http://www.keisoshobo.co.jp/book/b279195.html

TOPへ戻る