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仕事と介護の両立コラム

介護離職防止の可能性

2017.06.16


企業における介護離職防止への取り組みが、社会的にも様々な効果をもたらす取り組みになり得る可能性を解説いたします。

家族介護者の苦悩

2000年に介護保険法が施行され、特に在宅介護サービスの供給が増えました。
政府は、この介護保険法が施行されたことで在宅介護を推進する動きをより強めたわけですが、いくら在宅介護サービスの供給が増加したからとはいえ、主たる介護者はあくまで家族(子や嫁、兄弟姉妹)であり、家族あっての在宅介護であること、少なくとも国としてはそのように介護の主体はあくまで家族であるという考え方が伺えるのは、施行当時から現在に至ってもほとんど変化はありません。
そして、病気や障害などを患った親や兄弟姉妹などの介護をする家族介護者にとって、その介護状態を抱えることは、日々肉体的にも精神的にも時に大変なものです。
働きながら家族の介護を担っている働く介護者にとっては、仕事と介護の両立にも苦慮されますし、離職などをして現在社会に出て仕事をしていないいわゆる介護専念者にとっても、その離職の原因が介護のためであるなら特に、経済的問題などを抱え込むことも少なくありません。
そして、自身の介護状況や悩みをなかなか他者に打ち明けられないような孤独感を抱くなど、社会的に孤立し精神的に苦慮される方も珍しくないのが現状です。

介護にまつわる事件

「介護殺人」という言葉をご存知でしょうか。
衝撃的な言葉ですが、これは親や兄弟姉妹を介護していた家族介護者が、何らかの理由でその要介護者の命に自ら手をかけてしまう、介護苦による殺人事件のことがこう呼ばれています。近年、テレビやマスコミの報道などでも、時々見聞きすることもあるかと思います。
警視庁による統計では、家族の介護や看病の疲れが原因とみられる殺人事件(未遂も含む)は、年平均で46件発生しており、8日に1件のペースで介護をめぐる哀しい事件が実際に起こっていることになります。
また、それらの事件が起きたその介護にまつわる背景も様々です。高齢者同士のいわゆる老々介護の場合もありますし、高齢の親を子の配偶者が介護している場合もあります。中には、高齢の親を独身の子が介護している場合もあるようです。
親子だから、兄弟姉妹だからと、どこにでもあるごく普通の家庭の中において当然のように始まった介護生活で、どのようなことがきっかけに介護殺人などという哀しい事態に陥っていくのでしょうか。

孤立していく介護者

前述したように、いくら法整備が進み、在宅介護サービスの供給が増えたからとはいえ、現在の日本社会において、介護の負担がそれを担う家族にかかってくることは否めません。そして、現在の我が国における介護は、法整備化された介護サービスを、決められた負担割合で利用料を支払い利用するシステムです。さらに一部の負担割合で利用できるかどうかは、保険料の徴収状況によります。
言わば、介護にまつわる経済的負担ができなければ、十分な介護サービスを利用することも難しくなるわけです。
病状が進行するなど在宅介護が厳しい状況になっても、経済的事情から施設サービスを断念せざるを得ない状況もあり得ますし、もとより在宅サービスですら十分に利用できない状況もあるかも知れません。
高齢者夫婦の老々介護においても、また高齢の親を子の世代が看る介護においても、年々厳しくなる年金受給状況や子育て世代などの各家庭の経済的事情、離職したのちの介護生活で自身の生活も経済的に困窮した状況など、経済的な理由で介護における選択肢が少ないがために、在宅介護を続けるにも困難な状況を抱え、介護者は苦慮することも少なくありません。
さらに、そのような状況を抱え、特に一人で家族の介護を抱える介護者においては、地域からも他の家族からも孤立してしまうことも少なくない現状があります。このように経済的にも不安定になりがちな中、場合によっては何十年も先の見えない介護によってストレスを抱え、要介護者にも自身にも将来への不安を感じ、残念な事件へ発展することも年々増えているのです。

企業における介護離職防止の可能性
上記のように、家族介護者は経済的にまた精神的に、追い込まれた状態に陥りやすいことが伺えます。
その人が家族介護者となる経緯や、在宅で介護をすることにおける決意については個々人で状況にもそれに至る想いや考えにも個人差があることでしょう。ただ、事件にまで発展してしまうような家族介護者の多くが、経済的に困窮していたり、介護に関するストレスや不安を長年抱えていたり、地域でも家族の中でも、また社会的にも孤立しているケースが多いことは特徴として挙げられます。
様々な個人の背景はあるにせよ、結果国の方針に従って在宅介護を続けてきたものの、正常な判断が出来なくなるほどに精神的に病んでしまう。
それぐらい介護苦は辛く厳しいものです。超高齢化社会を目前に控えた我が国において、家族介護者を支えるということは、早急に考え取り組まれるべきものであり、それは社会全体として、そして地域の中でも、それぞれに模索されるべきことではないでしょうか。
また企業においても、自社の従業員の介護離職防止への取り組みは、介護苦で悩む家族介護者の一助として大きな役割にあることでしょう。
介護離職防止は、様々な意味で必要だと言えるのではないでしょうか。

参照

新潮社
「介護殺人 追いつめられた家族の告白/毎日新聞大阪社会部取材班」
http://www.shinchosha.co.jp/book/350511/
介護サポーターズ
過去の新聞記事から読み解く「介護殺人」の実態

過去の新聞記事から読み解く「介護殺人」の実態

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