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仕事と介護の両立コラム

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新総合事業で介護サービスはどう変わる?

2016.12.06

地域包括ケア新総合事業がはじまることで、現行の介護保険サービスがどのように変わるのかご説明し、事業の開始にあたり、現在抱えている制度の課題を解説いたします。

軽度者の方への介護予防

現在、全国各地で、介護保険制度の保険者である多くの市町村では、来年度2017年4月施行を目標に、新たな「介護予防・日常生活支援総合事業(新総合事業)」を始める準備に追われています。
体制の整備ができた市町村から順次移行しているため、現在までに実施しているのは約520市町村(全体の約33%)です。多くの市町村が来年度からの施行を目指しています。
新総合事業は、我が国が抱える2025年問題、いわゆる団塊の世代の方々が75歳以上の後期高齢者となる少子高齢化が最も深刻化するであろう時期を前に、介護保険の要介護認定者の中でも比較的軽度の「要支援認定者」に対して、多様な生活支援のニーズを地域全体で支え、要介護状態となることを予防する目的があります。
いわば新総合事業は、各市町村が実施する介護予防事業であり、そもそも要介護認定そのものを受けなくても、日常生活における何らかの支援を必要とする65歳以上のすべての方を対象としたものでもあります。

軽度者に対するサービスの移行

では、支援の中でも、上記の日常生活における何らかの支援とはどういったものでしょうか。
現在、軽度の要介護認定である「要支援認定者」の方に提供されているサービス内容は、その大半を「訪問介護(ヘルパー)」と「通所介護(デイサービス)」が占めています。
特に、訪問介護では、調理や掃除などの生活援助が中心である傾向が強いです。新総合事業では、この要支援認定者に対する訪問介護と通所介護のサービスを、「訪問型サービス」「通所型サービス」「生活支援サービス」に移行しようとしています。そして、前述のとおり、要支援認定を受けていなくても、「要支援状態」になる恐れのある方も利用できるのも新たな制度の特徴です。また、新総合事業では、従来の介護サービス事業者のほかに、民間事業者やNPO、地域のボランティアらも活用して、その地域のニーズに応じた多様なサービス内容や料金を柔軟に決めることができます。
ただ、そもそもの国の狙いは、膨らむ介護保険制度に関する費用を抑制するところにあります。そのため、新しいサービス料金の設定は、どの保険者においても概ねこれまでの報酬よりも低く、利用者側は利用しやすくなる半面、従来の介護サービス事業者にとっては採算が取れず、サービス(事業)を縮小したり、そもそもサービスを撤退せざるを得なかったりするところが出ている実態もあります。

新たな担い手

また、従来の介護サービス事業者がさらなる報酬の引き下げで事業の継続が危ぶまれる中、それに代わる地域のボランティアらを実質的に育てることができるかどうかも疑問視されているところです。
実際に育成できた市町村では、住民主体のさまざまな活動や助け合い、交流などで、地域(住民)全体の行政や制度に頼らない、地域の自立度の向上や互助力の強化などの成果も報告されています。ただ、現在の日本において、全国的に特に過疎化や高齢化が進んでいるような地方の地域では、地域住民によるボランティアなどという新たなサービスの担い手を育成していけるかどうかは、非常に難しい現実があります。自治会活動など、そもそもの地域コミュニティ自体が崩壊しつつある地域が少なくないからです。
従来の介護サービス事業者も事業継続が厳しく、地域そのものも昔の地域社会から変化していく中で、新総合事業ではサービスの地域格差がより広がるのではないかという懸念も出ている現状があります。

新たなサービスの課題

また、特に訪問介護に関しては、要支援認定者の方へのサービス内容が、主に調理や掃除などの生活援助が中心となっていることから、以前より、「ヘルパーや介護士が、家政婦代わりに使われている」などの批判も絶えませんでした。入浴介助や排泄介助などのいわゆる身体介護のように、特に介護的な支援でもないという捉え方をされ、介護の専門職でなくてもできるという意見からでした。
新総合事業においても、ボランティアなどへのサービス移行に際し、調理や掃除などの生活援助をその観点で捉えている傾向があります。しかしながら、一方では、「他人の家に入り仕事をするのは、相応なノウハウが必要」とか「認知症の方に対する支援は、専門職でないと難しいのではないか」といった意見も根強くあります。確かに、ヘルパーの生活援助は家政婦の家事労働とは異なります。生活援助(家事)をとおして、その方の自宅内における生活や日常を介護の視点で支援するものです。あくまで生活援助(家事)をとおした「在宅介護」の一環であり、ヘルパーという職業もまた介護の専門職の一つであることは間違いないでしょう。
今回の新総合事業においては地域住民などによるボランティアの介入に際し、この生活援助を「専門職でなくてもできる」と国や保険者が言い切ってしまう形となったことは、「介護」そのものを考えるにあたり新たな波紋を呼びかねない結果となっていることも否めません。いずれにせよ、新総合事業の課題は多く、また必要なサービスを地域の中でどう確保するかということに、各市町村の力量が問われてくるところです。

参照

厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000074126.html

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