人事担当者としての介護者へのアドバイス方法

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2016.05.16

無題
介護が突如始まった従業員に多くありがちな実際の状況を解説し、人事担当者としての働く介護者へのアドバイスのポイントをご紹介します。

従業員の介護に対する意識

介護者、特に働きながらの介護者にとって、その介護状況が突如始まった際に、慌てず冷静に対応できる人はおそらく少ないと思われます。
日本能力協会による全国のビジネスパーソン1000人に対し行われた「仕事と介護についての意識調査」によると、介護経験のない人のうち約6割が、「家族の介護が必要になったとき、どうするかわからない」と回答しています。
日本の社会全体として、高齢者人口の増加や団塊の世代の方々が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題についてメディアなどでも頻繁に取り上げられていますが、現実的に自分自身や自身の家庭において降りかかる問題としてはなかなか捉えられにくいところが現状のようです。
介護者の会などで寄せられる意見の中にも、「何をどうしたらいいのか。」「何がわからないのかさえ、わからない。」という、介護が始まった当初についての意見が度々聞かれます。
多くの人にとって「介護」は身近なことのようでもあり、しかし実際にはなかなか実感のわかない未知なるものであることがめずらしくありません。

介護保険制度についての知識

そのような現状の中、企業の人事部において自社のワークライフバランスの一環である従業員の仕事と介護の両立について考えたとき、いざ介護が始まり働く介護者となった従業員から介護に関する質問や相談があった場合、どのような心構えで迎える必要があるでしょうか。
上記のように、突如介護者となった従業員は、おそらく自分で持ち合わせている介護に関する知識や情報も少ないことが想定されます。
そこで、まずは働く介護者となった従業員が、最初の段階で何から検討や解決を図らなければならないのかということを、一緒に考え示し、導いていくことはとても重要です。
そして、現代の日本の社会において介護を考える場合、「介護保険法」についての情報や介護保険サービスをいかに使いこなしていくかということは大きなポイントとなります。
総合相談窓口となる地域包括支援センターや市町村の窓口、介護認定やサービスを利用するための仕組みや流れなど、関連する情報は控えておかれることをお勧めします。
また、介護保険についての情報をまとめた冊子も各保険者から配布されています。介護保険における保険者はその方のお住まいの地域によりますが、多くの市町村のホームページにも各介護保険情報は公表されていますので、概ね質問や相談が想定される市町村のホームページなどを確認されておかれることも有効です。
さらに、利用されるサービスの中でも頻度の高い、訪問介護(ヘルパー)やデイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所)など、利用するにあたり仕組みや情報を確認されておくことも、最初の段階での相談に限らず、今後従業員が介護サービスを利用しながら仕事を続ける中で、企業側がその状況への理解を深めることにも役立ちます。

介護に関する諸制度やインフォーマルサービスとの併用の重要性

また、現代の日本において、国の財源不足や介護現場の労働力不足、さらには介護保険法の改正でサービス給付自体が見直され、介護保険サービスを使いこなすだけでは在宅で介護をしていくために必要なサービスにはおおよそ十分ではない現状があります。
このような場合、インフォーマルサービス(介護保険外サービス)との併用が有効です。
有料である場合は保険給付がない分割高なこともありますが、中には各保険者や地域が独自に安価で設定し実施していたり、ボランティアである場合もあります。
さらに、介護タクシー(福祉車両での移送サービス)やおむつ代の支給など、各保険者で様々なサービスや制度が展開されていますので、実際に介護保険サービスの利用について方向性が定まれば、次の段階としてこのインフォーマルサービスの活用もぜひ情報提供されることをお勧めします。
今政府が掲げる「介護離職ゼロ」を目指し、雇用保険関連法の成立など介護や介護者をめぐる諸制度の整備も急がれています。
このような制度改正などにおいても、一般的にはその当事者でなければなかなか理解や認識が日常的にはされていないのが現状です。従業員から介護に関する質問や相談があった際には、この諸制度についての最新の情報も企業側から提供され、働きながらの介護がより充実し、介護者としての選択肢がより増えることを願います。

「介護が始まった=離職」ではない

これまで、従業員からの介護に関する質問や相談に対するアドバイスについてご紹介してきました。
ただ、ここで一つ重要なことは、そもそも介護が始まり働く介護者となったからといって、それが必ずしもすぐに「離職」に繋がる訳ではないという認識を日頃から従業員に対し職場内でも周知しておくことです。
もちろん介護と一言に言っても、その状況は様々で、場合によっては働き方の見直しや変更、介護休暇や介護休業の取得を検討することもあるかも知れません。ただ、介護状況に陥ったからそれがいわゆる介護離職をすぐにでも検討しなければならないことではないという認識を、職場内そして従業員双方で持っておき、介護状況に陥った際に、少しでも慌てることなく冷静に、然るべき判断や選択ができるように備えておくことは大切です。
しかしながら、それだけ心得ておいても、介護は突然始まることが多く、突如介護者となった従業員はそれでも慌ててパニックになりかねません。
そこで企業や人事担当者側が冷静に働きながらの介護の可能性を従業員に対し示し導くことができれば、企業は大切な労働力を失わず、また従業員も介護離職に追い込まれずに、仕事と介護の両立を上手に図ることができていくことでしょう。

参照情報

(日本能力協会グループ)
第6回「ビジネスパーソン1000人調査」【仕事と介護編】
http://www.jma.or.jp
(ワーク&ケアバランス研究所)
働く介護者おひとりさまミーティング議事録
http://wcb-labo.com/
(厚生労働省)
公表されている介護サービスについて
www.kaigokensaku.jp/publish/

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